鳥たちの目と耳、情報網の拡大
王国全体を網羅する「放送」の具体的な時間割と内容が決定された今、アリアにとって最も重要な課題は、その放送を彩る「情報」の質と鮮度だった。王国のニュース、各地の天気予報、そして心温まる物語や、生活に役立つ情報。これらを、正確かつタイムリーに収集する必要がある。
ある日の午後、貴族院の中庭で、アリアはライナー先生と共に、小鳥たちと戯れていた。アリアが歌を口ずさむと、中庭中の小鳥たちが、いつものように彼女の周りに集まってくる。ポルンも、アリアの肩に止まり、その様子を見守っていた。
「みんな、いつもありがとう。私、みんなにお願いがあるの」
アリアは、小鳥たちに優しく語りかけた。彼女の「声聞魔法」は、小鳥たちの心の声を聞き取り、自分の思いを彼らに伝えることを可能にしていた。
(チュンチュン?(どうしたの、アリア?))
(ピピ!(何か困っているの?))
小鳥たちは、アリアの言葉に、興味深そうに首を傾げた。
「あのね、私の歌を、もっと遠くの、たくさんの人たちに届けたいの。そのためには、みんなの協力が必要なの」
アリアは、王国全体に放送を届ける計画と、そのために必要な「情報」について、小鳥たちに説明した。
「例えば、王都の城下町で、何か新しいお店ができたとか、珍しい催し物があったとか……。あと、森の天気のこと。どこかで雨が降っているとか、風が強いとか……。そういう情報を、私に教えてくれる?」
アリアは、具体的な「ニュース」や「天気予報」の情報を、小鳥たちに分かりやすい言葉で伝えた。
小鳥たちは、アリアの言葉に、一斉にざわめいた。
(チュンチュン!(新しいお店?それは面白そうだね!))
(ピピ!(天気のことなら、僕たちに任せて!空を飛んでいれば、すぐに分かるよ!))
(カア!(城下町の様子なら、僕らカラスが得意だ!高いところから、全部見てきてやる!))
小鳥たちは、アリアの願いを快く引き受けてくれた。彼らは、アリアの「声聞魔法」によって、彼女が伝えたいこと、そして彼女が何のために情報を求めているのかを、深く理解していたのだ。
ライナー先生は、その光景を静かに見守っていた。
「素晴らしい……。アリア様の『声聞魔法』は、王国全土に広がる、生きた情報網を構築しようとしている。これは、既存の情報伝達手段を凌駕する、画期的なシステムだ」
ライナー先生は、アリアの才能が、単なる技術的な発明に留まらず、自然界の知恵と力を借りて、王国全体の情報インフラを構築しようとしていることに、改めて驚嘆した。
その日から、貴族院の中庭や、リンドバーグ家の庭には、アリアの声に応えるように、これまで以上に多くの小鳥たちが集まるようになった。彼らは、王都の城下町、王宮の庭園、そして遠く離れた森の奥深くへと飛び立ち、アリアが求める情報を集めてくる。
(チュンチュン!(今日、王都の大通りで、新しいパン屋さんができたよ!とても良い匂いがするから、きっと美味しいよ!))
(ピピ!(南の森では、夕方から雨が降りそうだ!大きな雲が見えるよ!))
アリアは、小鳥たちから得た情報を、黒板に書き込んでいった。そこには、王国の日常のささやかな出来事から、生活に直結する重要な情報まで、多種多様な情報が、色とりどりのチョークで彩られていく。
アリアの「放送」は、魔力波塔の建築が進む中で、そのコンテンツを充実させていった。王国の隅々にまで「声」を届ける日。その「希望の音色」は、小鳥たちの目と耳によって集められた、生きた情報と共に、王国全体へと響き渡る準備を着々と整えていたのである。




