王国を駆け巡る「声」の波、早まる未来
王宮での御前会議で、国王陛下がアリアの「魔力波塔」と「放送」を王国の公共インフラとして推進することを決定して以来、事態は驚くべき速さで動き始めた。これまで、新しい魔導具の開発や大規模な建築計画は、各省庁間の調整や予算の問題で、とかく停滞しがちだった。しかし、国王陛下の強い意思と、女王陛下、先代の王陛下の全面的な支持を得たこのプロジェクトは、全ての障壁を乗り越えて、瞬く間に具体化されていった。
魔導具省は、ライナー・グレンジャーを筆頭とした研究チームを組織し、アリアの「階層構造魔力回路」と響鳴石の共鳴理論に基づいた、大型魔力波塔と中継局の設計図の最終調整に取りかかった。ライナー先生の研究室のメンバーも、それぞれの専門知識を活かし、設計の最適化に貢献した。ロジャーは塔の強度と耐久性を、エディスは古文書から得た知見で魔力の流れの最適化を、フェリックスは魔力波長の精密な解析を、リリーは最適な素材の選定を担当した。アリアも、自身の「声聞魔法」の感覚的なフィードバックを提供し、設計の重要な部分に関与した。
情報省は、王国全体の地理情報を収集し、魔力波塔と中継局の最適な設置場所を選定した。辺境の村々から主要都市まで、王国全体を網羅する通信網の構築が、急ピッチで進められた。軍務省は、魔力波塔の防衛体制の強化と、災害時の情報伝達における活用の可能性について、具体的な計画を立案した。
そして、財務省は、この大規模プロジェクトに必要となる莫大な予算を、国王陛下の直接の指示により確保した。王国の未来への投資として、国民の理解も深められるよう、広報活動も開始された。
王都郊外には、最初の「魔力波塔」の建築が始まった。巨大な響鳴石を中央に据え、その周囲を階層構造の魔力回路が取り囲む、これまでにない壮大な建造物だ。建設現場には、一流の建築家、魔導技師、魔法使い、そして熟練の職人たちが集められ、日夜を問わず作業が進められた。
アリアは、貴族院での授業の合間を縫って、ライナー先生と共に建設現場を訪れた。自分の小さな発想が、こんなにも大きな建造物となり、王国の未来を築いているという事実に、アリアはただただ圧倒されていた。
「アリア様。貴女の『声』が、この王国全体の通信網の基盤となるのです。これは、まさに歴史を動かす瞬間です」
ライナー先生は、建設中の魔力波塔を見上げながら、感慨深げに語った。
アリアの「家内放送」という、ささやかな試みは、もはやリンドバーグ家という小さな枠を完全に飛び出し、王国の公共インフラとして、その形を成し始めていた。王都の貴族院では、レオとセレスティも、妹アリアの偉業に、深い感銘と誇りを抱いていた。
半年後、最初の魔力波塔が完成し、主要な中継局の設置も着々と進められた。王国全体の情報網が、驚くべき速さで構築されていく。




