5.side ルーカス団長①
ルーカス団長視点です♪
満月の夜、オリバーからフクロウの雛の報告を聞いて頭が痛くなった。フクロウの雛は、気に入らない相手からの給餌を受け付けないとは聞いていたがここまで人を選ぶとは。現状、俺とオリバーしか三匹同時に面倒を見ることができない。
「みんな手を焼いてますね」
「業務に支障が出るのは困る」
「僕が全員見てもいいで──」
じろりと視線を向けると、オリバーが口を閉じた。
「三匹の面倒を見れる奴が見つかれば解決するんだがな」
眉間の皺を揉んだ。野生フクロウも相棒契約を結ぶこともあるが、給餌して育てたフクロウと相棒契約を結ぶことが圧倒的に多い。三匹の雛が同時に見つかったことを喜んでいたが、まさか世話役の手配に苦心するのは予想外だった。
窓ガラスをたたく音がして、窓を開けるとフードルが肩に着地する。
「フードル、どうした?」
「ルーカス、森の奥に奇妙な気配がある。我と森に向かってほしい」
「ああ。もちろんだ」
フードルの言葉にすぐに支度を整え、オリバーに待機を頼むと森の奥に向かう。自分に身体強化を掛けて、森の奥へ急ぐ。
「森が騒ついている」
森に住むフクロウの怪我が増えているとフードルから報告を受けていた。フクロウ信仰の強いオウル国でフクロウの密猟は大罪である。密猟者がいるならば現行犯で取り押さえたい。
闇の空を飛ぶフードルの言葉に俺たちは速度を上げた。
「落雷──!」
少女に襲い掛かりそうになっていた狼魔獣に雷魔法を落とす。狼魔獣が逃げて行くのを確認してから、この国では見たことのない服の少女に近づいた。
「大丈夫か?」
顔色は悪いが、怪我のなさそうな様子にひとまず安堵する。この国で珍しい黒目の少女は、フードルを見ると大きく見開いた。
「えええ?! 大丈夫じゃないです! シマフクロウに会えるなんて、まったく大丈夫じゃないです──っ!」
フクロウ最大級のフードルを見て驚くどころか、感動したように叫びながら気絶した少女に呆気に取られる。
「……なんなんだ」
俺が思わず呟く。フードルが気を失った口もとの緩む少女を覗きこむ。
「ルーカス、この子をどうするのだ?」
「とりあえず宿舎に連れて帰る。目覚めたら、話しを聞くことになるだろうな。流れ人の可能性が高そうだ」
オリバーに少女を保護した旨の伝言をざっと紙に書いてフードルの足に括り付けて、待機しているオリバーに向かってもらう。それから、落ちてしまっている荷物を集めると少女を担いだ。少女が異世界からやってきた流れ人ならば、保護する必要がある。それから、こんな幼い少女に元の世界に戻れないことを伝えなくてならないと思うと鉛を飲み込んだような気分になった。
「──身体強化」
せめて今は、少女を起こさないように森をゆっくり走り抜けた。
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