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2.今後について話し合いました


 翌朝、これからのことを話すために応接室に招かれた。


 扉の向こうで待っていたのは、昨日のシマフクロウとミミズクことアフリカオオコノハズク。二羽に目が釘付けになって動きが止まっていたら、大きな咳払いで我に返った。


「俺は、フクロウ騎士団の団長を務めるルーカス。このフクロウは俺の相棒のフードルだ。こっちは副団長のオリバーとその相棒フクロウのミミー」

「えっと、私はひなたです」


 大柄で風格のある団長コンビと小さくて可愛い副団長コンビ。大きなシマフクロウはやっぱり素敵。はあ、でも、猫耳のように頭に羽角(うかく)の飾り羽がついてるミミズクも可愛すぎる。副団長の水色の髪の上にちょこんと乗ってるのとか反則すぎると思う。


「昨日は助けていただいて、本当に有難うございました。あの、運んでいただいてすみません。それに朝食や、着替えも……」

「礼は要らない。どうして森の中にいたか説明してもらおう」


 私の言葉を遮るルーカス団長の低い声。顔を上げると緑の瞳に射抜かれて、心臓がドキンと跳ね上がるし、探るような鋭いまなざしに頭の中が真っ白になっていく。なんでこんなに睨まれてるの?!

 助けを求めてオリバー副団長に視線を向けてしまう。


「はあ、団長。尋問じゃないのに、女の子を怯えさせてどうするんですか? ごめんね。団長はちょっと顔が怖いけど、悪い人じゃないからね」


 オリバー副団長の言葉で、詰めていた息をそっと吐きだす。ルーカス団長を窺うと眉間に皺を寄せている……ちょっとどころじゃないよ、怖すぎだと思う。言わないけど。


「ヒナタの格好は、このオウル王国や周辺国でも見たこともないんだ。それに普通の人は入らない森の奥で見つかったからね。ヒナタは、違う世界からやってきた『流れ人』だと思うけど、どうかな?」

「……たぶん、その流れ人だと思います。私は日本という国で事故にあった後、気づいたら森の中にいました」


 私はホワイト君のことを除いて、質問されながら今まで起きたことを二人に話した。

 オウル王国に流れ人が現れたのは、五十年以上前なこと。その時に、異世界より訪れた流れ人が、オウル王国で生活できるよう支援する法ができたことを教えてもらった。前の流れ人さん、本当にありがとう。

 ひと通り話が終わったところでルーカス団長が口を開いた。


「フクロウ騎士団で預かることになると思うが──ヒナタは何ができる?」

「え…………?」


 なにができると聞かれても、どう答えたらいいのか分からなくてオリバー副団長を窺う。


「団長、いきなり働けっていうのは酷ですよ。まずはオウル王国に慣れてもらいましょう」

「暇だと碌なことを考えない。働きながら慣れればいい」


 日本では営業事務をしていただけで、特殊な技術も変わった特技があるわけではないけれど。今の私は、ホワイト君にもふもふの加護をもらっているから。

 ううん、例えもふもふの加護がなくても、第二の人生を生きるなら大好きなフクロウに関わりたい──!


「あ、あの……私はフクロウが大好きなので、雑用でもなんでも、フクロウに関わることができるなら何でもやります! フクロウ騎士団で働かせてください。お願いします」


 がばりと頭を下げる。少しの沈黙のあと、


「我は賛成だな」

「わたしも賛成」


 初めて聞く声に顔を上げると、フードルとミミーが目の前にいた。ときめきすぎて胸が苦しい。


「フードルさん、昨日は助けてくれて本当にありがとう」

「『さん』など不要。我のことはフードルと呼べばいい。ヒナタ、我のブラッシングを毎日頼む」

「フードルのブラッシングさせてもらえるの? ありがとう……っ」


 手の甲でフードルの羽を撫でる。初めて触るシマフクロウのもふもふ具合に感動してしまう。さらに反対の手にもふもふな感触がして視線を動かしてみたら。


 ミミーが撫でてというように頭を下げている。子猫みたいな甲高い鳴き声とぺこりと頭を下げ、ちらりと見つめてくる仕草に胸がキュンと飛び上がった。


「か、かわ、かわかわいい……っ」

「ヒナタ、わたしも撫でてちょうだい」


 右手にフードル、左手にミミー。両手にもふもふ。もう一度言うね、両手にもふもふ。これがハーレムなのかと噛みしめながら撫で続けた。


「わたし、ヒナタのこと気に入ったわ。オリバー、ヒナタのことしっかり面倒みて頂戴ね」

「うむ、我もだ。ヒナタはフクロウ騎士団にずっといればいい。ルーカス、ヒナタのいいようにしてやって欲しい」

「フードル、ミミー……そんな風に言ってもらえて嬉しいよ、本当にありがとう」


 フードルとミミーの優しい言葉に感激。返事の代わりに(くちばし)で甘噛みされて、幸せに浸っていたら、ルーカス団長がなぜか慌てたように口を開いた。


「ヒナタは、フードルとミミーの言葉が分かるのか?」

「はい、オウル王国のフクロウは話せるので驚きました」

「…………ヒナタ、フクロウと話せるのはフクロウと相棒契約した者だけだ」

「えっ……?」


 ホワイト君のもふもふの加護の最高さに驚く。


「ヒナタ、フクロウ騎士団に歓迎する」

「ありがとうございます! 一生懸命頑張ります……っ」


 フードルとミミーにおめでとうと言われて、頬がふにゃりと緩む。異世界の就職先はフクロウ騎士団に決定した。

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恋愛作品を色々書いています୧꒰*´꒳`*꒱૭✧
よかったらのぞいてみてください♪
ヘッダ
新着順① 評価順② 短編③ 商業化④ お勧め作品⑤ 自己紹介⑥
ヘッダ
 

― 新着の感想 ―
[良い点] フクロウ騎士団て、夢がありますね♪ フクロウさんたちと会話できるのは加護だったんですね。それぞれパートナーのフクロウさんがいる設定も素敵です。ひなたちゃんにとっては、両手にもふもふ最高ハー…
[良い点] >右手にフードル、左手にミミー。両手にもふもふ。 か、可愛い!! 光景が目に浮かびます!まさにハーレム。 騎士団が「フクロウ」というのが斬新なアイデアですごく良いです。 なにより可愛い…
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