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15.見つけてました


「はあ……いい……好き……」

 

 フードルのマグカップが目の端に入り、書類作業していた手が止まる。全てのフードル柄を楽しむためにくるりと回してうっとり眺める。控えめにいって最高。フードルの素晴らしさが表現できていて素晴らしい。


「ヒナタ、手が止まってるぞ」

「はっ、はい! すみません……っ」

「他所ごとを考えるとは、まだまだ余裕がありそうだな。これも追加で頼むな」

「ひっ、ひいいい〜!」


 団長の喝で書類に再び目を落としたところで、横にどさりと積まれた書類に悲鳴を上げる。鬼だ、鬼がここにいます……!


 

 どうして私が団長室で書類作業をしているかといえば──

 

 ご褒美マグカップを団長室に受け取りに行ったら、団長の机の書類が雪崩を起こした。副団長と一緒に仕分けを行いながら、事務だった話をポロッとしたら、まさかの団長の補佐を任命。まさかの坂を転がり落ちて、心は擦り傷だらけになった。

 フクロウ騎士団内で働くにはフクロウ審査が必要になるから事務や雑用の人員が常に足りていないらしい。前から事務作業のできる人が欲しかったと団長から鬼の微笑みをいただいた。

 フクロウ達のお世話が第一だけど、それ以外の時間は団長補佐に──そ、そんな〜〜!


 


 というわけで、現在、団長室には、鬼と私とフードルマグカップ。本当は私の部屋でフードルマグカップを使おうと思っていたけど、団長と二人きりだなんて耐えられない。癒しが欲しくて、フードルマグカップは団長室に置くことにした。

 団長の補佐なんて鬼だし、魔王だし、泣きたいと思っていたけど、団長の書類量が多すぎて引く。それに、鬼だ魔王だと言っても、フードルと団長は私の命の恩人だから、役に立ててよかったと思っていたりする。

 

 言葉の問題は、ホワイト君の異世界転移特典のようで、話すことも読むことも書くことも可能。不思議だなと思うけど、とっても便利なので心から感謝したい。ホワイト君、ありがとう!




 

 黙々と事務作業をしていると、窓をコツンと叩く音がした。


「ワッシ!」


 ワシミミズクのワッシが窓の外にいるのを見つけて、駆け寄る。ワッシも大きくなって目の虹彩はオレンジ色、くちばしは黒色、羽根は赤みのあるクリーム色にまだらな模様。大きな体に対して小さな羽角がちょこんとしているのが可愛い。


「ヒナタ〜ただいま〜あのね、ヒナタのヒヨコとウズラ食べたくなっちゃった〜」

「今日はあんまり狩りが上手くできなかったの?」

「ううん〜いっぱい獲ったんだけど、ヒナタのごはんも食べたくなって帰ってきたの〜」

「そうなんだ!」


 もう! もうもう! うちの子、可愛すぎる! でれでれ頬を緩ませて、ワッシの話を聞いた。

 ワッシは相変わらず食いしん坊さんで、おっとりおおらかな性格。沢山食べた後にも、私の捌いたご飯も食べたいって来てくれるの、すっごい可愛い。うう、胸キュンが止まらなくなって胸を押さえていると団長の声が頭の上から降ってきた。反射的にピッと背筋が伸びる。何もしていないのに、条件反射って怖い。流石、鬼。


「ヒナタ、ワッシはどうしたんだ?」

「あっ、あの、団長、ワッシがヒヨコとウズラが食べたいって言っているので、今からフクロウ舎に行ってきてもいいですか?」

「ああ、わかった。ワッシから食べたものを聞いて、あまり与えすぎないようにな」

「はい! 了解です」


 団長補佐だけど、私の最優先はフクロウたちのお世話。これは絶対譲れないし、団長もそうしてくれと言ってくれている。

 団長の許可をもらった私は、肩にワッシを乗せてフクロウ舎に向かう。大型のフクロウのワッシはかなり大きくなって、肩にズシリとした重みもある。大きくなったと思うと重たいことも嬉しい。


「ワッシ、今日は何を食べたの?」

「んっとね〜魚を捕まえて〜ネズミも食べたよ〜ん〜あとはリスも食べたかな〜あといっぱいネズミ〜」

「わあ、いっぱい捕まえたね! ワッシすごい!」

「ぼくすごいんだ〜えっへん」


 ワッシの得意そうな顔が可愛くて、頬がゆるむ。胸を張って、ふわりと空気を(はら)むと見た目が更に大きくなった。ワッシは食べることが大好きだから、私がお世話していた四羽の中で最も狩りが上手い。好きこそ物の上手なれって本当だなって思う。


「じゃあ沢山食べてきたみたいだから、ヒヨコとウズラは少しで大丈夫かな?」

「うん〜ぼくは〜ヒナタに食べさせてもらいたいだけなの〜」


 スリスリと甘えてくるワッシにときめきが止まらない。ワッシはこういう発言を天然でしてくるから年下甘えん坊の人たらしだと思う。もう、好き。もっとして!

 フクロウ舎の冷凍庫からヒヨコとウズラを数匹取り出して、(さば)く。この捌く行為は、ヒヨコやウズラがそのままだから、今でも少し緊張する。でも、食べ物を食べるってことは、命をいただくってことだって実感するから嫌いじゃない。捌く前に心の中で感謝を告げている。

 


 種類別に盛り付けて、ワッシのいる止まり木へ行く。

 ピンセットでつまんで、口元で小さく揺らす。パクッと黒いくちばしで咥えて食べる。ふふっ、可愛い。好きなフクロウが食べている姿っていつまでも見ていたくなるよね。はあ、愛おしい。


「おいしいね〜ヒナタのごはんは元気になるの〜」

「ふふっ、ありがとう! 嬉しいよ、ワッシ」

「ホーリーとナッツもあとでくるって言ってたよ〜」

「えっ、そうなの!? 楽しみだな……っ!」

 

 ワッシは食べ物のこだわりが一番強くて狩りをした後もよく食べに来る。他の三羽は雨の日や狩りの成果がイマイチだった日に食べることが多いかな。あと、最近のホーリーとナッツは、顔を出した日は私の捌いたヒヨコやウズラを食べていく。

 狩りができる四羽が私のご飯を食べている様子に、他のフクロウが食べたがって団長の許可をもらって食べさせることもある。どのフクロウも可愛いので、役得すぎて幸せだなと思っている。

 


「はあ〜美味しかった〜」


 満足そうな顔でワッシに告げられ、背中をそっと手の甲で撫でた。大きなワッシはふっくらしていて触るともふもふしている。しばらくもふもふを堪能していると、ワッシのくちばしでツンツンされた。




「あっ、そうだ〜! 今日、ヒナタのところに行ったの、食べたいからじゃなかった〜」

「えええっ? ワッシ、なんの用事だったの?」

「うん〜さっき川でね〜仲良くなりたい人がいたんだ〜」

「っ!???!」





 えええええええ?!?!?!

 ワッシ──それって相棒契約したい人ができたってことだよね?!?!?!

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