11.出会ってしまいました
運命は突然に──!
好きになるのは瞬きする間に、運命の赤い糸が交差するのは予感もなくやってくる。誰かがそう言ってたような、言ってないような。とにかく、好きは突然やってくる。
私は、ホーリーとナッツが運命の恋のように、惹かれる瞬間を目撃した。
ホバリングを見せてもらってから数日後、ホーリーとナッツの相棒探しがはじまった。今日はちなみに三回目。
相棒探しと言っても、フクロウと相棒になりたい騎士達を集めたところにホーリーとナッツを連れて行くだけで、正直拍子抜けしたくらい。
二回目までは、フクロウ舎から屋外にある訓練所の散歩かなと思うくらいあっさり終わっていたから油断していた。完全に油断していた。大切なことなので二回言っておく。
「だ、団長……ど、どどどどうしましょう……?」
「まずは落ち着け、ヒナタ」
「む、むむ、無理です!! だ、だ、団長、あの……これって……!?」
「ホーリーとナッツに気になる騎士がいたようだな」
「っっっ〜〜〜!?!?」
団長の言葉に動揺して見上げると、森のような色の瞳と視線がぶつかった。森の緑にはヒーリング効果があったはず。団長の瞳をじっと見て、じっくり見て、森を感じて……って、団長の眉間が寄せられ、目が鋭くなったのを見て我に返った。現実逃避している場合じゃない!
魔お、いやいや、団長を見てリラックスできるわけなかったのに、私のばかばか。思わず両手で顔を覆うと肩にずしりと重みがかかった。
「ヒナタ、どうしたのだ?」
「うう〜〜フードル……っ!」
肩に乗るフードルの胸とお腹の真ん中あたりに顔をもふんと埋める。うう〜もふもふにそっと顔を埋めながら足のちょっと上を撫でる。ううう、もふもふで森の匂いがするし、ヒーリング効果半端ない。羽で私を撫でてくれるのもイケメン過ぎる。流石イケフク、癒されるうう。
「ぷはっ、フードルありがとう。落ち着いたみたい……!」
「うむ。ヒナタなら我の胸をいつでも貸すからな」
「はうう! フードル大好き!」
「うむ、我もヒナタのことを愛おしく思っておる」
くうう、フードルが今日もイケメンすぎて、胸がきゅん苦しい。イケフク恐るべし。フードルの首が見渡すようにぐるりと回る。
「ふむ。そうか、ホーリーとナッツが相棒を見つけたのだな」
「っ! やっぱり相棒を見つけたの……?」
「うむ、絶対ではないが、可能性はかなり高いだろうな」
フードルの返事に心臓をきゅううと掴まれたみたいに固まった。こんなにすぐに相棒が見つかるなんて思っていなくて、心の準備ができていない。
ホーリーとナッツの様子が気になるけど、怖くて見れなくてどうしよう。
「ヒナタ、よかったわね!」
ミミーの軽やかな声と共にフードルの乗っていない肩に軽い重みがかかる。
「ううう〜ミミー! 気になるけどドキドキして見れないの……どんな人を選んでる?」
「もうヒナタったら、しっかりしなさい」
二匹が可愛すぎて、二匹ばっかり見ていたから相手をまったく見ていなかったとミミーに正直に話す。
「まったく仕方ないわね……」
「ううう、ごめんなさい。ホーリーとナッツがホバリングしてるから可愛くて、つい……っ!」
「あの子たちの選んだ相棒、まだ相棒候補かしらね? 双子の姉妹騎士よ。双子騎士と相棒になったらホーリーとナッツも離れないで暮らせるからいいわよね」
「えっ!」
ミミーの言葉にパッと顔を上げる。騎士服を着た赤毛を高めのポニーテールで結んだ二人組がホーリーとナッツを見て嬉しそうに笑っていた。なんだか優しそうな雰囲気にホッと息をつく。
「あれはアルデン男爵家のリーナとセリナだね」
「…………へ?」
オリバー副団長の言葉に素っ頓狂な声を上げた。えっ、ちょっと待って待って! 男爵家って貴族ってことだよね?! えっ、ええっ、あの子達、お貴族様ってことなの……? めっちゃ偉いのでは?!?!
「ん、ヒナタどうしたの?」
「ちょ、ちょっと、オリバー副団長、男爵ってことは貴族ってことですよね? 私のいた国は貴族制度みたいな身分制度はなくて、どうしたらいいのかわからないです……っ!」
「いや、そこは今まで通りで問題ないよ」
「いやいや、お貴族様ですよ……!」
「んー大丈夫だよ。僕の名前は、オリバー・ウェストモアランド。ウェストモアランド伯爵家の長男なんだよね」
「うぇす……モア、らんど……伯爵……?」
呪文みたいな苗字を告げられて頭が混乱する。いや、苗字じゃなくて、家名ってやつなのかな?
「ウェストモアランド伯爵家ね。オウル王国の貴族には階級を示す爵位があるんだ。公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の順番だよ。その他にも準男爵や一代貴族なんかもあるけどね」
「ええ!? オリバー副団長、上から三番目じゃないですか……っ!!」
「まあね。でも、それを言っちゃうと団長なんて、」
「オリバー、ヒナタ、そろそろ相棒候補に会いに行くぞ!」
オリバー副団長との会話を遮るような団長の低い声に肩が跳ねた。びくんと跳ねた肩からフードルとミミーが団長と副団長の肩に飛び移っていく。
うう、ホーリーとナッツの相棒候補の子達ってどんな子だろう? ドキドキするよ〜〜〜っ!!
読んでいただき、ありがとうございます♪
少し更新に間が空いてしまいました……。
第二章のラストがすっっごく書きたくて、そこを目指して頑張ります(∩ˊᵕˋ∩)・*












