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36.勝てない存在

朝食後。宿の前。勢揃い。


「皆さん、忘れ物は」


「なーい」


「ないでーす」


「よくできました」


「ガキ」


呆れの一言だけにヴォルフはさっさと歩き始め、見送る宿のオーナーへ手を振ってからヤマトも歩き出す。ロイドがオーナーへ「ヤマトさんが泊まった部屋、プレミア価格にすればァ?」と耳打ちした事はヤマトの耳には入らなかった。


入ったところで気にも留めないが。


共に王都へ来た冒険者達と宿を後にした。その事実に、観光は終わったのだと察した周囲は残念そうな顔に。まだ、その“黒”を目にしたかったのに……と。


そんな彼等は今後、いつの間にか王都に来ていつの間にか王都から居なくなっているヤマトに盛大に首を傾げる事になる。


「お前、ちゃんと教育しろ」


「師ではないので」


親指で背後を指しながらのヴォルフの言葉に苦笑を返し、その方向――レオンハルトが馬車から降りる姿に頭を抱えたくなった。来るのは構わないが、変装はしてほしかったな……と。


悠々と歩いて来る彼へと向き直り、周りからの驚愕の視線はスルー。何やら含みのある視線に覚える、達成感。“写真”を見た者達だろう。ウケる。


どうやらレオンハルトもそれを察したらしい。ヤマトの前に来たと同時に、するりっ――両腕をヤマトの首の後ろへ。


瞬時に口元や鼻を覆った住人達に、満足。それでも更に顔を近付け、


「『私を連れ去ってはくれないのですか』」


写真の影響により大ベストセラーとなった愛憎物語。そのヒロインのセリフ。しかし抱き着くような描写は無かった。


完全に、ヤマトの“愉快犯的娯楽”により悪い影響を受けている。


王族にあるまじき言動だが、その愛憎物語を読んでいない者の方が少ないので周囲は静かに大興奮。ヤマトの背後では、ロイドが声にならない悲鳴を上げ何やら大パニック。


見てはいけないものを見てしまったような……故に、見続けなければと云う使命感に似た感覚。人間とはそう云う性質を少なからず持っており、このふたりだからこそ尚更――なのだろう。


唐突な愛憎物語のセリフに目を瞬いていたヤマトは、


「『その血肉全てを私に捧げる覚悟があるのか』」


ノッた。


その“黒”に恍惚を孕ませ、口元を愉悦に歪めて。脳内に『納豆卵かけご飯レバ刺し付き』を描きながら。ブレない食欲。


誰もがノると確信していたが、実際に目にしてしまうと……なんだか、とても居た堪れない。期待と予想以上の破壊力に動悸がする。


そしてふたりの距離が近い。実は“そう”なのではと邪推してしまう距離感。違うとは分かっているが、どうしてもそう考えてしまう。


――かしゃっ。


不意に聞こえたシャッター音。……あぁ、レオが許可していたのか。


そう察しながら、再会した冒険者達が話していたサービス精神を体現するように。ぐっ――とレオンハルトの腰を引き寄せる。


その勢いに僅かに身体を反らせたレオンハルトへ顔を近付け、


「『どうした。私の糧と成りたいのなら喜ぶべきだろう。まさかこの私に、くだらない感情を望んでいたと。片腹痛、』」


「やめろ」


ぐいっ。唐突に首根っこを捕まれ引き剥がされ、振り返れば呆れた顔のヴォルフ。


「お前が言うと洒落にならねえ」


「この後がヒロインの見せ場で、ヴァンパイアが“愛”を自覚する名シーンなのに」


「ヒロインってのはアホ面晒すのか」


「え」


ヴォルフの言葉にレオンハルトを見ると僅かに口を開け硬直する姿。自分から始めたのに、なぜ。


とは思ったが、……なるほど。




“この顔”だからか。


これは誑かしてると思われても仕方ない。テオドール殿下の正論だった。


戯れにノっただけとは言え、なんだか申し訳ない。


愉しかったから良いけど。




どこまでも自分本位。


しかし周囲の者達が口元を隠し何やら震えているので、楽しんで頂けたようだと後悔はしない。申し訳ないとは思ったが反省もしない。


自分が愉しむことは大前提。そもそもこれはレオンハルトから始めた戯れ。なので責任はレオンハルトにある。ヤマトに落ち度は無い。


後悔も反省も無い。寧ろ、この“顔”の造形美を改めて実感出来たので上機嫌。純粋に性格が悪い。


ハッと我に返ったレオンハルトはヤマトとヴォルフを見比べ、序でにその向こうで大パニックを経て呆然と立ち尽くすロイドに苦笑。その“顔”に慣れたと思っていたが、実際はまだ慣れてはいなかったらしい。


恐らく慣れる日は来ないだろうな……。そう、こっそりと確信しながら口を開いた。


「暗唱する程に気に入ったようだな」


「面白かったので。“モデル”としても楽しめました」


「お見通しか」


「途中からですよ。……うん。そうですね。“私”は、王家の不利益とならない限りでならモデルにされても構いません」


「官能作品も?」


「イメージし易いように脱ぎましょうか」


「ん、ぐ……ふっ」


緩く両腕を広げるヤマトに口元を隠し笑いを堪えながらも、“黒髪黒目”直々に創作物のモデルにされる許可を貰えた事実に満足。しかも『王家に不利益とならない限り』と。


それは事実上の無規制と同義。


幾ら自由な創作物と言っても、そもそも王家から目を付けられるような内容を書く者はいない。元の世界とは違い、この世界は王族や皇族が絶対的存在。


物心付く前からそれを擦り込まれている。危険思想イコール――処刑。


今迄は許されていた“黒髪黒目”をモデルとした創作物も、本人が嫌がるのなら厳しい規制が掛かってしまう。しかしヤマト本人は嫌がっておらず、寧ろこうやってワンシーンを再現すると云う気遣い。


先日の女性へのファンサービスのように、相手がレオンハルトでなくとも同様に再現したのだろう。『過度な規制は必要ない』と、オタクだからこそ創作物を守る為の公言に利用して。


故に女性達の娯楽は守られた。『ヤマト』と云う“黒髪黒目”に限り、で。


「ありがとう」


小声での感謝に目元を緩めたヤマトは手を差し出し、王族よりも先に握手を求める――その行動に苦笑も無いレオンハルトもその手を握り、流れるように齎された抱擁を受け入れた。


「テオドール殿下にも、よろしく」


「タイミングが有ればな」


ふっ。小さな音が、ほぼ同時に互いの鼓膜を揺らす。そんなタイミングは無いと、どちらも分かっている故の笑み。


するりっ――


あっさりと離れたヤマトはレオンハルトの頭を一撫でし、名残惜しさも無く踵を返した。やるべき事は全て終わらせた、とでも言うように。


そんなヤマトの横を歩くヴォルフは、レオンハルトへ視線を向ける事も別れの言葉を告げる事もない。流石、生粋の貴族嫌い。


変に感心するレオンハルトも数秒程ヤマトの背を見送ってから踵を返し、


「まっじでさあ! あんた顔良いの自覚してんだから自重しろっつっただろ!」


「愉しめませんでした?」


「めちゃくちゃ面白かったけどタチ悪ぃんだよ!」


「ありがとうございます」


「褒めてねえよっ!!」


背後からの会話に咄嗟に口元を隠した。面白過ぎた。




元貴族の冒険者から叱られる“黒髪黒目”なんて、きっとこの先もヤマトだけだろう。畏れ多さと、純粋な恐怖で。


年下からのそれを許す程にロイドを気に入っていると云うことか。無論、ヴォルフと私のことも。


逢いに行って良かった。“友人”を、求めて良かった。


次は私も何かしら叱ってみようか。


……そういえば。プルが出て来なかったな。挨拶をしたかったのだが、寝ていたのだろうか。


まあ、また遊びに来る時を待てば良い。挨拶が出来なかった詫びに、プルが気に入っていた菓子を多めに用意しておこう。


その日が今から楽しみだ。




そんな事を考えながら馬車に乗り込んだレオンハルトは、


「あ……エルフの国が戦争中だと伝え忘れた」


まあ大丈夫か。ヤマトなら。


一瞬でそう判断し、窓からヤマト達を見る事もせず。馬車を出させ王城へと帰って行った。


直ぐに上がって来るだろう先程の写真を、心底楽しみに思いながら。











王都を出て歩き続ける彼等の間には、会話が生まれたり沈黙が流れたり。しかしその沈黙には自然の音が混じり、少しの気不味さも無い。


ふ、と。脳裏に浮かんだ疑問。


「依頼は?」


基本的に冒険者の移動は、商人の護衛か拠点を移す時だけ。王都に来る理由はヴォルフ達には有ったが、今回は無い。


ロイド達は完全に娯楽で付いて来た。面白そうだからと。事実、面白かった。満足。


「途中で適当に魔物狩る。盗賊も残ってんだろ」


「なるほど」


「プルは」


「?……あ、コートの中に居ますよ。レオと離れるのが寂しいと、拗ねていて」


「拐おうとした訳か」


「訳です。気に入ったようです」


「飼い主に似たんだろ」


「王族を拐おうだなんて思いませんよ」


「どうだか」


心外だと眉を下げるヤマトを鼻で笑ったヴォルフは、揶揄っただけ。本気でそう思っての発言ではない。


自由さと規格外の戦闘力は似ているとは思うが性質は真逆。ヤマトは、自分が愉しめるのならそれで良い。プルは、ヤマトが愉しめるのならそれで良い。……、あ。




俺とプルが似てんのか。


こいつが愉しめんなら、周りは喜んで振り回されるべきだって。




唐突に理解したヴォルフは、されど苦笑も無く。“そう”思っていることは事実なので自己嫌悪に陥ることも無い。


だからと言って剣を素手で止め……た迄は許せたが、指を斬り落とされたことは『それで良い』の範疇外。魔法でその結果を避けられただろうと、本気で叱った。




――『弟への愛による嫉妬だと分かったので気に入っちゃいまして。一旦、ヴォルフさんに任せようと思って』――




その言い訳に、その口は飾りかと更に叱った。そのまま泣かそうかと思った。


その絶対的造形美の顔でしょんぼりされ、更に矢面に立った訳ではないので折れたが。顔が狡い。


これからも、物理的にも精神的にもヤマトに勝つ事は出来ないと確信している。だからと言って全てを許すつもりは毛頭無く、叱る時は全力で叱る。


甘やかすにも限度はあり、ヤマトの意志が介入し『逆鱗』に触れたのなら尚更叱る。


流石に同じ過ちを犯すとは思わないが……自由過ぎるので、思いたくない――と言った方が正しいのだろう。


そんな自由過ぎるヤマトは、


「そういえば。旅館、レオが先触れを送ってくれたようで。いい子ですよね」


王族が自分の為に動く事を当然のように受け入れている。自由に。自分本位で。ナチュラルな傲慢さで。


笑いを堪える為か、背後のロイドが苦しそうに呻いた気がした。


「土産買ってんだろ」


「ゴボウを買おうとしたらロイドさんから止められました」


「だろうな」


「ヴィンスには買いましたよ」


「嫌がらせじゃねえか」


「私の手料理なら食べるかも。と思って」


「……あぁ」


「楽しみです。――なので、レオに相談したら『写真を渡せば充分』と言われまして」


「……」


「普通の写真です。ほら、座ってるの」


「祭壇組まれんぞ」


「え」


旅館への土産――“迷惑料”。身分証の無い者が王族を利用して宿泊するのだから、迷惑料として美味しいものでも買って行くんだろう……と思っていたらまさかの“写真”。


“黒髪黒目”が豪華な椅子で頬杖を突き、脚を組んで只座っているだけの写真。正に『支配者』の姿。


“黒髪黒目”へ懸想するこの国の、しかも初代国王が作らせ愛した旅館。その事実に誇りを持つ旅館のオーナーならば確実に祭壇を組む。


……あぁ、なるほど。




レオは、あの旅館の存在意義を明確にしたいのか。王族として。初代国王を心底から敬って。


やっぱり、いい子。


レオが王に成ればこの国は更に発展しそうだ。勿論テオドール殿下が王に成っても、レオは裏で存分に能力を発揮して発展はする筈。


まあ“国の顔”としてはテオドール殿下は色々と足りないから、レオが王に成るだろうね。その方が私の『後ろ盾』が強力になるから有り難い。


だから精一杯頑張ってね。レオ。




堂々と王族を後ろ盾に利用するのは、恐らくヤマトだけ。


それを実行する事に対し一切の躊躇が無いので、とっくに察しているレオンハルトも『潔い人だ』と甘んじて利用されている。代わりに、利用する時は存分に利用させて貰うつもりではいるが。


例えば、対魔物に関する国防の時。とか。


そんな瞬間が来ない事を願いながらも、それでも力を貸してくれるだろうと。生卵や納豆、特にゴボウはこの国でしか食べることが出来ないから。


ヤマトのゲテモノに対する強い食欲を信頼して。……大変遺憾ではあるが、事実なのでレオンハルトのその考えを知ったとしてもヤマトは文句は言わない。


ゲテモノ……と、しょんぼりはするが。


「あー、あの写真。偶然会った父親に自慢してやったらめちゃくちゃ悔しそうな顔してた。ウケた」


「本当に偶然でした?」


「まっさか。狙い分かってたし、ごちゃごちゃ言われる前にヴォルフさんの名前出したら引き下がったっすよ」


「おい」


「ヴォルフさん、本当に有名人なんですね」


「そりゃあ。実質個人Sっすから」


「あ、やっぱり。手合わせして頂いても?」


「ぜってえ嫌だ」


「残念です」


ヤマトに剣を向けるなんて己の矜持が許さない。……とは、無意識での考えなのでヴォルフは自覚していない。単純に負けるのが嫌だから『嫌だ』と思ったのだと自認。


何があっても。ヴォルフがヤマトへ忠誠を誓う未来も、己を“騎士”と自認する未来も無い。


漠然と。元貴族の感覚にしか過ぎないがそれを察したロイドは、……あーあ。




ヴォルフさん、まじで生まれた村さえ違ったらこの国最強の騎士に成れたのに。


いやヤマトさんに出逢えなきゃその『最強』も意味無いけど。“唯一”を得て初めて、意味が生まれる強さな訳で。


まあそれは『王家の盾』っつう伯爵の血が流れてる俺にも言えるんだけどさ。




「じゃあ俺と手合わせしてよ、ヴォルフさん」


「一度だけだ」


「じゅーぶん」


ニンマリと笑うロイドは、その手合わせで『ヤマトの利になる』――ヴォルフがそう判断すれば指導してくれる。それを確信し、殺す気で挑もうと心に決める。


どうせ負けるから。ならば全力を見せるべきだと。


それは『盾』としてではなく、単純にヤマトの側に居たいから。


決して飽きることのない“娯楽”を愉しむために。





閲覧ありがとうございます。

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『王都編』と言っても良いのか迷う作者です。どうも。


編とかは特に考えず書き続けていますが、一応王都でのわちゃわちゃはひと区切り。

なので、今回の後書きは王都編おまけを置いておきますね。


↓もしもヤマトが王家に転生していたら。

(※ifが苦手な方は読まないでね)





この国の全国民待望の“黒髪黒目”の誕生。


それは一大ニュースとして、その存在の誕生間もなく国中が知る事となった。皆が熱狂し祝い、特に王都民へは王家から肉と酒が配られた程。


その王都での盛大な祭りは1ヶ月にも及んだ。各領から大勢が祭りに参加した事で経済が回り、この国の“黒髪黒目”への熱望を知る友好国からも祝いの品が大量に届き多くの者が“彼”の生を祝福。


そんな、国民の期待と羨望を“背負わされた彼”は――


「また抜け出して来たのですか。王太子殿下」


「窮屈」


「服も着崩さないで下さい」


「だから。窮屈だと言っている」


「まったく……少しは王太子の自覚を持って頂きたいものですな。殿下は王になるのですよ」


「不自由この上ない。そうだ、お前に王位継承権をくれてやる。嬉しいだろう?」


「不要です。そろそろ私を唆すことは諦めて下さい」


「王家の血筋だ。構わないさ」


「構います。“黒髪黒目”が居るのですから」


「おやっ。グリフィス家は代々野心家と聞いていたのだが。不思議な事もあるものだ」


「“本物”を目にして傅かない貴族はおりません」


「つまらん」


「詰まる話をしたいのなら。潔く城へ帰り、先日の養殖産業計画の進捗を確認しては如何ですかな」


「毎度の事だが、一体どこから嗅ぎ付けているのだ。お前は」


「噂は本当のようですな」


「狸め。――、……ハァ」


「お帰りですか」


「告げ口好きな老人は嫌になる」


「お気を付けて」


カップに残る紅茶を飲み干してから腰を上げた“彼”は、一度窓の外へ視線だけを向ける。しかし後は何も言わず、ひらりと手を振りながら応接室から出て行った。


振り返ることもしない“彼”を微笑みで見送ってからカップへ手を伸ばし、……かちゃりっ。珍しくカップの音を立ててしまったのは無理もない。


国民全てから一方的な……身勝手な期待と羨望を“背負わされた彼”は――


「これだから“王”に相応しい」


――唯我独尊。自由を手にしようと足掻く姿すら何よりも尊い。国民全てから望まれる儘に、無意識下で“支配者”として君臨する『本物の王』。


生を受けた瞬間に王太子として生きる事を決められ、幼い頃から持て囃された故に育まれた傲慢。只座っているだけなのに、呼吸すら許されないと錯覚する程の染み付き滲み出る威圧感。


見る者を魅了する絶対的造形美。ひとりでこの大陸すら蹂躙可能な“人の理の外”に存在する魔法理論。加えて、型破りな剣術で相手を翻弄する稀代の魔法剣士。それらの才を天から授けられた、圧倒的な支配者。


『世界の覇者』……目にしてしまえば本能的に歓喜し手が震えてしまう。“覇者”が王家に生まれたのに王に成らないなんて、到底許される事ではない。


そんな、生を受けた瞬間に人生を決められた何よりも尊い存在――“彼”を迎えに来た馬車には、今回もまた“王家の盾”の私生児が乗って居るのだろう。


そう確信しながら、その私生児を参謀兼近衛騎士に指名した“彼”の慧眼に改めて感服する。今頃は小言を貰っているのだろうが。毎度の事なのに懲りないらしい。


周りの全てから慕われ、弟達も競うように補佐役の勉強に励んでいる。そんな切磋琢磨する弟達を一番近くで見ている“彼”が、王に成らない未来は有り得ない。


「家族愛が重過ぎるからこうなるのですよ」


どこか満足そうな声色で呟いてから、“彼”が置いて行った――『ドラゴンの心臓』の肉片が入った薬用瓶。また……ひとりで勝手に“あの森”へ行って来たのか。


そう呆れつつもそれを手に、応接室を後にした。


『王家の血筋』故に家族愛を向けられている。とっくに察していたその事実に、身震いする程の優越感を覚えながら。





以上、ifストーリーでした。

ふふっとして頂けたら幸いです。


ifでもヴォルフとは出逢っていますが、“貴族嫌い”を尊重して“友人”を望んではいないかと。

ヴォルフからは『変わり者の王太子』と思われていて、貴族ではなく王族なので気が向いたらダンジョンや“あの森”に付き合っているだけです。

なんとなく“気になって”いるだけで、貴族と関わりが深い王族なので『唯一』とは見做しません。

筋金入りの貴族嫌いですからね。


つまり。ヴォルフだけが、ifではなく本編の世界線でのみ幸運を得られる唯一の存在だと云う事です。

そう考えるとこの作品は『ヴォルフの為の物語』なのかもしれませんね。

めちゃくちゃヤマトの存在に振り回されていますが。


一応。

プルはスライムと云う、本来思考や感情を持ち合わせない魔物です。

幸不幸は有って無いようなものです。

スライムは『森の掃除屋』ですし、“あの森”に居れば食いっぱぐれずスライムらしいスローライフを送っていたかと。

――っと云う事は、プルが本編の最大の被害者かもしれませんね。

ヤマトの言動を愉しんでいるようなので問題は無いかと。たぶん。


次回、匂い。

ヤマトの嫌いなもの。

各々の甘やかし。

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