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作者: アンモニア騎士

【ショートショート】すこし薄暗い描写注意。


雨雲が過ぎ去った。

「じゃあ、出かけよっか?」

雲が少なくなってきた頃合いで、母親は少女に声をかける。

「着替えようね」

母はいつものワンピースを手に取り、バンザイを促す。

袖と頭を通し、再び母が手渡してきたリュックを背負う。

これで準備は万端だ。


いつものように少女は左手を差し出し、母親は右手を繋ぐ。

近所のスーパーまでのひと散歩。

雨が降った後ではあるが、アスファルトからの熱と湿気が背の低い少女にムワムワと襲いかかる。

家から出てまだ数メートルしか歩いていないはずなのに、すでに頭がクラクラとしそうだ。

少女は空いている右手でスカートをパタパタとはためかせる。

「お水、リュックに入っているからね」

「ん、ありがと」

母は左手に持った日傘を少し右に傾ける。




「ウェーーーイ!!」

急に後ろからの大声にビクリとする。

自転車に乗った3人の少年たちが、車道に広がりながら彼女達を追い越していく。

「まてよーー!!」

遅れた少年の、ペダルにかかったサンダルにうっかり目をとられてしまう。

素足は随分と日に焼けており、いつも半ズボンを履いているのだろう。

目が滑り、つい見てしまった上半身も黒々とした素肌、それに生える派手なロゴマークのTシャツが眩しい。

・・・ふと、少女はそばの水たまりにも目を向けてしまう。

そこには、自分と母の姿が映し出されている。

そこにいた長袖の少女に、目を見開いてしまう。

自分のありのままを、自然現象に見せつけられてしまった。



「何かあった?」

不意に、母の右手が強く握られた。

あ・・・、しまった。

日傘の影になっているが、母は口を引き結び、困ったような泣きそうなような顔をしているのがわかる。

眼差しだけははっきりと捕らえられ、まるで脳味噌の裏側までじっくり見聞をされているようだ。

「うん、だいじょうぶだよ、ママ」

「本当に?」

「うん、ほんと」

「そう、よかった」

左手にかかった圧が緩む。

これではきっと、今日も水筒に口はつけられなさそうだと、少女は気付かれないように落胆した。




少女はきっとこれからも半袖に目を奪われるのだろう。



処女作です。読了ありがとうございます。

文章力のスキルアップも目指して勉強中なので、ご感想ご意見も頂ければ幸いです。

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