4話 私はこのままぎゅっとしてても良いよ
「ねぇ、目覚ましかけてたけど、今日土曜日だよ?」
俺と晴夏は布団を敷いたまま、その上でゴロゴロしていた。スマホをいじるでもなく、ただただボーッとしている。
「あれ? そうだっけ?」
「うん」
「俺の兄さんとかが小学生の頃は、土曜日も学校あったらしいよ。俺のときはなかったけど」
「え? 土曜日もあったの? 耐えられない」
「学校、嫌い?」
「嫌いじゃないけど、勉強は好きじゃない」
「まぁそれはわかるかも」
「なんで大学行ってるの? 高校卒業したらもう働けるよね? 勉強嫌いならどうして?」
「ん? なんかね。普通に働きたくないなーって。まだ遊んでたいなって思ってさ」
「ふーん」
「まだわかんないよ。小学生だったらまだたっぷり時間あるんだから」
「そのうちわかる?」
「多分ね」
「ふーん」
「昨日は遅くなってごめんな。待っててくれたのに」
「ううん。仕方ないよ」
「晴夏は今日どうするんだ?」
「どうするって、別になにも決めてないけど」
「俺も・・・・・・二度寝する?」
「良いね!」
学校に行くつもりでかけた目覚ましのアラーム。まだ時刻は七時半だ。カーテンは一応閉めているが、隙間から差し込む日の光が部屋の中を明るくする。
頭がボーッとしてきた。ちょっと左に目線をやると、制服姿の小学生女子が寝転んでいる。
第三者目線から考えてみると、何のプレイかと思う。小学生のコスプレをした女の子が出張してくれるデリヘルか。貧乳で身長が低くて、童顔で。って探せばいると思う。
「ちょっとだけ良い?」
「なにを?」
ぎゅっ。
何か細くてすぐに折れてしまいそうな、柔らかい感触が俺の左腕に感じる。
晴夏が俺の左腕に抱きついていたのだ。身体は横を向き、目線は俺の腰辺りを向けている。
まだ許可はしてなかったんだけどな・・・・・・。
この腕の柔らかさは本当に女の子なんだなと思わせる。そして、その腕の細さが子供だってことをちゃんとわからせてくれる。
俺は何も言わなかった。少し女子を意識してしまっていて、ドキドキし始めていることは内緒だ。
スヤスヤと眠りについている晴夏、俺は抑えきれない衝動にかられ、少し横を向いて、右手で晴夏を包み込んだ。
これ以上野生化してはまずい。なんとかここで気持ちを抑えないといけない。それはわかっっているんだけど、理性が言うことを聞かないんだ。
「ありがと」
晴夏の声が聞こえる。寝ていたはずだ。
「寝てたんじゃ・・・・・・」
「ううん。起きてた」
「そうか、ごめん」
「ううん。大丈夫、お兄ちゃんの腕ってなんだか安心する。もうちょっとこのままでいて」
晴夏の口は俺の腕にに近いところまで着ていて、息がかかる度に少し温もりを感じる。
「あ、あぁ」
変態だのエッチだの怒られるかと思った。
「ごめん。俺、晴夏のこと子供だと思ってた」
「え? 子供だけど・・・・・・」
「大人っぽいところもちゃんとあるんだなって」
「どういうとこ?」
「その・・・・・・腕の・・・・・・」
この続きは言えるわけがなかった。変態お兄ちゃん扱いをされてしまう。
「腕?」
「いやー、あの」
腕という言葉を聞かれてしまっていて、動揺した俺。
「一人で留守番できたりとかさ、料理もできるし」
「えっへん!」
どこの漫画の小学生だと言わんばかりの自慢げに、微笑ましくなる俺。返事はしなかった。
どこまで自分を女の子だと思ってるんだか微妙な年齢だ。一昨日のお風呂の前、昨日の朝の着替えの時、恥ずかしがった事実はあるが、今はこうして俺に抱きついている。心はまだまだ子供で、だけど、少しずつ膨らみかけている胸。見られてしまうことには恥ずかしさをやっぱり感じるんだろうか。服の上からでもなんとなくわかる。俗に言うまな板ではないことは。
早いのか遅いのか知らないけど、そろそろ、ちゃんとカップのついたブラジャーを身につけてもいいんじゃないか。なにかのハプニングで胸に触れてしまうことがあったら、もう俺は自分を抑えることができるか、不安だ。
別にロリコンというわけではないが、実際、かわいらしい。いいや、女としてかわいいと言って良い。
落ち着け俺。
「それで、今日なにする?」
「私はこのままぎゅっとしてても良いよ」