プロローグ 覚醒
この世界には全人口の約三割の人間が体内に宿る魔力を利用し魔法を使うことができる。そんな世界の物語である。魔法は基本的には遺伝により生まれつき使うことができるといわれている。しかしまれに魔力が覚醒して魔法が使えるようになる魔法覚醒者と呼ばれるものもいる。そして俺は今…
「ハァ… ハァ…」
なんと死にかけているのだ。
俺は昔から困っているものをたすけられずにはいられない性格である。時には隣にいたおばあちゃんの荷物持ちをしたり、時には公園で泣いている子供を泣き止むまで一緒にいたり。きっとこれは魔法を使う者たちの真似事をしていたかったんだと思う。魔法を使う者たちの活躍は一般人の耳にはよく入ってくる。ニュースなどを聞いていて魔法を使う者たちの話が出てこないことはない。命がけで戦う姿に俺はあこがれていた。だから力がないなりの人助けをよくする性格になったんだと思う。そして今回はこの性格のせいで生まれて初めて死にかけているのだ。
話は少しさかのぼるが、友達と遊んでいた帰りのことだ。少し遅くなってしまい一人で帰っていたところ、男の大きな声と女の悲鳴のような声が聞こえてきた。俺は、その声を聴いた瞬間走り出した。声が聞こえた方向に一生懸命に。
どのくらい走っただろうか。きっと百メートルも走っていない。恐怖なのか全然足が前に進まない。少しずつ声が近づいてくる。夜遅いのにどうしてこんなところに。きっと貧しい家庭に生まれた子なんだと思った。そして、街灯も全くない裏路地で大男と女の子が対峙していた。
「てめえ、なにぶつかってきてんだよ。あ?」
男は十二歳位の女の子に向かって怒鳴っていた。女の子はひどく怯えている。無理もない。男は賊のようで大きな体で武器を持っていた。
「ご…ごめん…ごめんなさい…」
女の子は振り絞って出したかすかな声で謝った。まあ当然許してはもらえないだろう。
「や…やめるんだ!!」
俺は恐怖で震えながらもその大男に向かって声を上げた。俺は魔法は使えないが女の子が泣いているのに見過ごすことはできなかった。だが、俺にできることは何もない。せいぜい女の子を逃がすための時間稼ぎくらいしかできなかった自分が悔しかった。
「お…お金が目的なら、俺が出す!!」
お金なんか対して持ってなかったが時間稼ぎをするためには一番だと判断した。その間に女の子を逃がそうとしたが、足が震えて動かない様子だった。
「俺が欲しいのは金じゃねえ。その女だ。」
とんだクズ男だ。ただの変態である。女の子はそれを聞いてさらに震えていた。結果的にお金の話は無駄な交渉になってしまった。俺も正直怖い。逃げたいとも何度も思った。でも、女の子を抱えて逃げるのは、自分の頭の中で無理だと判断した。ならば平和的な解決がしたいが話が通じる相手でもなさそうだった。ならば勝負で勝つしか方法がわからなかった。冷静になれていれば、ほかの方法も思いついたかもしれない。でも、恐怖で頭が回らなかった。
「た…ただの変態かよ。お前みたいな変態に俺は負けない。」
大男は、余裕そうな顔からあからさまにイラっとした顔つきに変わった。
「ぶっ殺してやる…」
大男そういうと持っていた武器を構えて俺に襲い掛かってきた。
こちらには武器は何もない。でも死にたくはなかった。必死に男の攻撃を躱していた。少しでも傷を負わされると死ぬ。そう感じた。
「ハァ… ハァ…」
「どうした?もう終わりか?」
大男の言うとおりだ。必死によけていたが限界はくる。素人の俺に何度も男の攻撃を躱せる技術なんかなかった。男のナイフが俺の腕を切った。
「ぐわああぁぁぁぁぁぁ」
とても痛い。言葉では表せられない激痛が走った。痛みで立ち上がれない。この時点で俺は死を覚悟した。男も頭に相当血が上っているようだ。俺を切りつけるとすぐにとどめを刺しに来た。
「俺にケンカを売ったことを後悔して死ね」
男はこういうとナイフで何度も俺に切りつけた。意識がなくなっていく。血を流しすぎていることがすぐに分かった。もう言葉も発することはできなかった。武器でもあれば俺も勝てたかもしれない…。
「な、なんだ?」
意識が朦朧とする中そんな声が聞こえた。いや、今まで意識が遠のいていたのに声が聞こえた?おかしい。なぜか意識が戻っていっている。いつの間にか俺は立ち上がっていた。そして俺の手には二本の剣があった。俺にもこの状況は理解できない。説明ができない。あるとすれば“魔力の覚醒”だ。
「おい、なんのつもりだ?その剣を下げろ」
大男がそういうも聞くつもりはない。このままであれば、形勢逆転する大チャンスである。
「おろさないというんだな。傷だらけのやつに、この俺が負けるわけがないだろう?」
そういわれて自分の体を見回すと確かに傷だらけだった。だが痛く感じてはいなかった。きっとアドレナリンが出ていたからであろう。しかし早期決着に限ることに越したことはない。俺もこれ以上動くと命が危ないそう感じた。
「おろさない。悪いが、終わらせてもらうぞ。」
「いい度胸だ、終わるのはお前だがな。」
相手は刃渡りの短いナイフであったため、素人の俺が適当に剣を振るだけでもあたっていた。
一度剣が相手を切りつけた隙に俺は、剣の腹で思いっきり頭を殴った。殺されかけても相手を殺したくはなかった。勝負が終わると同時に剣が消え、意識もなくなっていた。
「お…女の子が…無事で…よか…」
その場で俺は倒れた。
そしてすぐにある女性が駆けつけてきた。
「女の子が泣きながら走っていたから、何事かと思って駆けつけてみれば…フフッ…」
不気味ながらうれしそうに女性はわらっていた。
そして次回の物語は、三年後に移る。
初めまして。翔と申します。かけると読んでください。まずは、この作品を読んでいただきありがとうございます。正直自分の自己満で書き始めたこの物語ですが、なんか残したいなとそんな気持ちでメモ感覚で書き始めました。正直誰かに見てほしいなって気持ちが今は大きいです。書きながらストーリーを考えているので矛盾とかおかしなとことか出てくると思いますが、その時は、どんどん言ってきてください!これから毎日はきついかもしれませんが、完結まで頑張りたいと思っているので。最後までよろしくお願いします。