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おまけ


「い"っだぁぁぁ。」


 (わたくし)は両足を少し広げて立ったまま、パンパンに張ったお腹を、押さえました。ジルが私の体を支え、一生懸命腰をさすってくれています。



「いだぃぃぃ。無理。もう無理。麻酔、麻酔。はよ。」


 私が絶叫して、新しく王宮の専属医師となった女医に向かって手を伸ばすと、彼女は手作りの医療器具の手入れをしながらチラと私の方を見てから涼しい声で言いました。


「麻酔はダメです。胎児への影響が分からないので、使いません。」



「悪魔ーーーーー。鬼めーーーっ。」


 私がまた叫ぶと、こちらの世界で初めて麻酔の調合に成功した彼女が笑いました。それから私に近づいてきて、私の耳元で囁きました。


「鬼なんて、酷いわ。出産は、あちらの世界でも、基本的に麻酔なしです。」


 私は自分の耳を疑いました。


 嘘でしょ。あっちでも、ないなんて。



「女医殿。王妃をベッドに寝かせなさい。」


 長年、王族付きの医師達を束ねてきた老医師が、新しく入ってきた、しかも女性初の王宮医師となった彼女を憎々しげに眺めてから威圧的に命令しました。



「まだ寝なくて大丈夫です。動いたほうが、はやく生まれます。」


 女医は戸惑いながら、けれどはっきりと自分の意見を述べました。老医師の顔が歪み、二人の間に緊張が走りました。


「寝てるより、動いてるほうが、楽かも。」


 そう呻いた私を、老医師が忌々しげに見つめてから頭を振ると部屋から出ていきました。



「怒らせちゃった。ごめんね。」


 私がジルに謝ると、ジルが私のこめかみに唇を落とし首を左右に振り、今度は私の唇に唇を重ねてきました。


「出産は、命がけだ。何でもいいから、兎に角、二人とも、無事に。」


 この時代、出産で命を落とす女性は後を絶ちません。ジルは私と私のお腹を見つめ、私の両手をぎゅっと握りしめました。




「ねぇ、ジル。はやくゲームやろうよ。」


「待って。今おしめ替えてるから。」


「陛下。その様なことは、お止めください。王妃、いい加減にしてください。」


「何が。」


「国王には国王の仕事がございます。このような些事、私どもにお任せください。せめて、女性である王妃が、なさるべきです。」


「このような些事、って育児舐めてんの。子供は大人に世話されて、お互いに愛着を持つの。そもそも、ジルは今、国王として、一、番、大、事、な、仕事をしていますけど。優秀な、次の国王を、育てあげているところではありませんか。私は産後なの。弱ってるの、か弱いの。休憩が必要なの。女性のための産後の休養制度導入したんだから、産後ママは休んでいいの。」


「あっはは。フローレンスは強いな。」




 ついでに、私は女性の地位向上や参政権のためにも力を尽くしておきました。



 あれ、この物語って、こんなに社会派でしたっけ。



 

 おしまい。





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