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あー。私ってやっぱり主人公なんだなって、心底思いました。  作者: 一子
第三章 主人公は、私ではありません。
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主人公は、私ではありません。


 残念ながら、どんなに美しく天才な私にも、できないことがあります。



 それは、王宮に入ることです。




 私は意を決し、ジェススの家に向かいました。

 


 お父様とお母様には、会わせる顔がありません。


 けれど、ただのフローレンスでは、誰かの力を借りなければ、バーゼル王子に会うことさえできません。


 そうならば、利用してやろうじゃありませんか。お父様もお母様も、お兄様もお姉様もフーリィもフィーナも、ジェススの家も。私の美しさも優しさも、チートも、天才であることも。


 全て、使って、アイツを落とす。




 私は少し目尻に皺が増えたお父様と、応接室で向かい合っています。



 私は頭を下げ、謝罪の言葉を述べました。私が至らず、家に迷惑をかけてしまったことを謝りました。


 けれどお父様は首を左右に小さく振って、構わないと短く告げただけでした。私が離婚したことで、この家にも迷惑がかかったはずです。それでも、お父様は文句の一つも言わず、ただ、家に戻るよう勧めてくれました。



 私は、目に力を入れました。泣きそうです。けれど、泣きません。


 私は、笑います。



 私はお父様の優しい提案を断り、背筋を伸ばしました。


「お父様、お願いがあります。明日、王宮で開かれる舞踏会に、私を連れていっていただけませんか。」


 いつの間にか、部屋にはお母様、フェルゼットお兄様とフィーナも集まっていました。皆が私とお父様を囲うように様子をうかがっています。



 「何故。」


 お父様の表情の険しさに、私は首を傾げました。お父様はなぜ、あんなにも嫌そうな顔をしているのでしょう。


 私は他の家族も見てみました。お母様は心配そうに私を見つめ、お兄様は腕を組みながら考え込んで、フィーナは怒っているようです。



「バーゼル王子に、会いたいの。」


 私の言葉に、皆が息を飲みました。


 静まり返った部屋に、なぜか、ぴんと張ったような緊張感が漂っています。お父様は険しい顔のまま私を鋭い目で観察しています。


「何のために。」


 お父様の質問に、私は家族全員をもう一度見つめてから、はっきりと答えました。



「私、王子を、落とします。」


 え。


 四人全員が、驚いて口を開けました。


「復讐じゃないのかぃ。」 


 お父様が鋭いツッコミをいれてきました。



 なるほど。


 皆は私がジルのことを刺しに行くとでも思っていたのですね。張りつめていた空気が、一気に和やかになりました。



「全く、フローレンス。お前はいつも、私の予想を裏切り、何か面白いことをやろうとするな。」


 お父様は楽しそうに笑って、「好きにしなさい」と言いました。お父様が認めたということは、それが家族全員の方針になります。


 けれど、フィーナが私に抱きつきながら懇願してきました。


「お姉様、やめて。王子を落とすって。そんなこと、やめて。王子は、私から見ても、ただの役立たずよ。」 


 フィーナの言葉に吹いたのは、フェルゼッドお兄様でした。


「フィーナ、正直に言いすぎだ。だが確かに、最近の王子は酷いな。だが、俺は応援するぞ。お前のことだ、何か面白い事情があるんだろ、フローレンス。」


 お兄様がニヤニヤ笑っています。



 意外です。超ド級のシスコンお兄様が、私の恋を応援してくれるとは思いもしませんでした。



 すると今度はお母様が、私の両手を握りしめました。


「フローレンス。(わたくし)は、いつかあの(くそ)()()を絞めようと思っていたのですよ。でも絞めるより、そういう面白い意趣返しの方が、斬新で良い気がしてきたわ。気が晴れやかに、なるでしょうね。」


 お母様が、にこりと笑いました。



 その時、屋敷の入口の方が騒がしくなり、こちらに誰かが向かってくる足音がしました。



「姉様。居るの。探しまくったよ。どこ。」


 弟のフーリィです。


 

 フーリィは部屋に入るなり私を捕まえて、私を責めてきました。


「何で、バーゼル王子のプロポーズ、断ったの。あの人、もう死にそうだよ。」


 フーリィがもたらした新情報に、全員が首を傾げました。



「え、あれ、プロポーズだったの。」



 一番驚いたのは、私です。






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