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あー。私ってやっぱり主人公なんだなって、心底思いました。  作者: 一子
第三章 主人公は、私ではありません。
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主人公は、私です。


 (わたくし)が「また」と呟いてアシュリーの手を頭から離そうとすると、逆に、腕を掴まれてしまいました。



「また今度、って。お前、うちにまた、来るつもりか。」


 アシュリーの言葉に、私は恥ずかしくなりました。ここを出なくては、そう思っているのに、また来るとすぐに言ってしまった自分を、私は恥じました。アシュリーに甘えている自分が、嫌になりました。


「ごめん。迷惑だよね。もう、来ない。」



 私の謝罪に、アシュリーが「いや」と頭を振りました。


「迷惑、ではない。そこじゃない。問題は、そこじゃない。王子と、結婚、するんだろ。」



 何を言っているのでしょうか。


 私はアシュリーの話の飛躍に、苦笑しました。


「ジル、バーゼル王子との話は、断ったの。そもそも、プロポーズじゃないの。王子は、もうすぐ結婚する。多分、私はまた、謎解き係りだと思う。それか、資料の整理係りか。それとも、何か面倒なことが起きて、私に手伝ってもらいたいのかも。」


 私は、作り笑いを浮かべました。


 アシュリーが舌打ちをして、眉間に皺を寄せています。


「話は、聞いたのか。」


 答えづらい質問です。私は俯きました。


 私とジルは、分かり合えない、相性の悪い二人なのです。


「聞いて、ない。聞けば、私はいつも、ジルに騙されちゃう。私にはジルの何が真実で、何が嘘か。いつも、分からない。」



 アシュリーが私の頬に手を添えると「バカ」と囁きました。


「フローレンス、お前は本当に、バカだ。何が真実か、嘘か。そんなこと、知る必要もないだろ。」


 なんですか。


 その意味不明なアシュリー理論は。


「知らないと。私はバカじゃないけど、バカになっちゃうの。」


 私が叫びそうになっていると、アシュリーがまた舌打ちをしました。


「お前、自分のことが全く分かってないな。お前は、そもそも、生まれつき、ずっと、バカだ。諦めろ。」


 冷たい言葉に、私は叫びました。


「私は、バカじゃない。」


 アシュリーが私の口を手で塞ぐと、指に力をいれてきました。


「黙れ。大事なのは、そこじゃない。」


 大事なこと。


 一体、なんでしょうか。


 もう大事なことが何なのか、それすら私には分かりません。



「王子の真実と嘘は、お前にはどうでもいいことだ。問題は、お前の、真実だ。」


 私はアシュリーの言葉に、何も言えなくなり黙りました。



 私の、真実。


 そういえば、私はいつもジルに気づかって、私がどうしたいか伝えてきませんでした。いつも、我慢していたのです。ジルに、嫌われないように。


「私。私の真実。私は、ジルが好き。好きで好きで好きで、頭がおかしくなりそうなほど、ずっと、どこにでも、ジルが、いつも、いる。」



 だから、私はどうしたいの。


「一緒に、いたい。」



 あとは。


「嫌われたくない。騙されたくない。利用されたくない。他の人と結婚しないで。私を見て、本当に、愛して欲しい。」



 アシュリーが、私の額に唇を落としてきました。


「それなら、それでいいだろ。あんなヘタレ王子、お前なら、簡単に落とせるだろ。」


 アシュリーの冷たい瞳が、私の瞳を覗き込みました。


 小さな頃から私を見つめてきたその瞳が、「私を愛している」と訴えています。自分を信じることができない私よりも、きっとアシュリーの方が、私のことを信じてくれています。



 主人公が嫌。


 家も嫌。


 美しさも、賢さも、チートの全てが嫌。


 全て捨てて、本当の私になりたい。



 そう、思っていました。



 けれど本当は、捨ててしまいたいその全てこそが、私、フローレンスなのです。



 主人公もチートも実家も能力も使わなくても、本当の私を愛してくれる人と結婚したい。そう思っていました。


 けれど、そんなフローレンスは、この世にいないのです。



 私の名前は、フローレンス。


 ジェスス公爵家の次女でございます。


 私は、賢い。


 私は、美しい。


 私は、強い。


 私は、優しい。


 父は魔術師団団長。母は国王陛下の妹。兄は騎士団副団長。姉は公爵夫人。弟は王太子殿下の側近。妹は社交界の華。


 私は幼少の頃から冷静沈着で、物事をよく見、考えることができ、社交も完璧で、乗馬やダンスなどもすぐにできるようになりました。


 私は、特別。天才、と呼ばれることもあります。



 これが、私です。



 私は私の全てを使い、あのヘタレ王子を、幸せにしてみようと思います。



「ありがとう。私、行ってくる。」


 アシュリー、ありがとう。私を愛してくれて。



「私、もう来ない。ジルのこと、絶対に落としてみせる。」


 アシュリーがいつも通り鼻で笑うと、私の髪をなで、背中を押して、私を部屋から追い出しました。




感想お待ちしてますー。

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