主人公は、私です。
私はアシュリーの屋敷を出ると、学校の寮の自分の部屋へと急ぎました。何もしていないとつい色々なことを考えてしまいます。
やだやだ。
はやく、仕事しよ。
私が馬車置き場から部屋へ向かっていると、寮の入口がなぜか物々しい雰囲気に包まれていました。人だかりができています。学生ではありません。豪華ではありませんが、なんとなくキラキラ輝いている集団でした。
何か、あったのでしょうか。
私が家政婦根性丸出しで観察していると、なぜか、その人だかりがこちらに向かってきました。
私が驚いていると、その中心に、王子がいました。
その中心に、王子がいました。
大事なことなので、二度、言いました。バーゼル第三王子です。
私は急いで道をあけ、道の端で頭を下げました。そしてため息をつきました。なんというタイミングでしょうか。こんなところで、偶然居合わせてしまうなんて。
どうか、私に気づかないまま、行ってください。
私が祈りながら様子を窺っていると、バーゼル王子が私の方へ近づいてきました。
なぜでしょうか。私は大好きな政変特集のことを思い出し、混乱した心と頭を落ち着けました。
大丈夫。
私は、笑える。
もしかしたら、再婚の報告を、前妻である私にしにきたのでしょうか。
バーゼル王子は、私の目の前で止まりました。頭を下げている私の目には、王子の手入れの行き届いた革靴だけが見えています。
「久しぶりだね。フローレンス。頭を上げてくれないか。」
私は仕方がなく、お辞儀をしてから頭を上げました。
久しぶりに見た王子は、四年前よりも痩せて、顔色も良くない、表情も固い、不幸そうな青年でした。
「仕事は、どう。」
なんと、世間話をはじめようというのでしょうか、私は王子の視線をよけ頭を下げました。
「順調でございます。」
私が俯いたまま答えると、王子が少し間を取ってまた質問してきました。
「体調は。風邪など、ひいてない。」
一体、王子の目的は何なのでしょうか。私は不思議で、けれどなるべくはやく会話を終わらせようと、素っ気なく答えました。
「はい。お陰さまで。お心遣い、ありがとうございます。」
会話を続ける気がない私に、王子は少し戸惑ったようです。そのまま口を閉じました。私は王子の沈黙に、更に首を傾げました。再婚の報告なら、そう言えばいいのに。
どうしたのでしょうか。
私は俯いたまま、気まずい沈黙に耐えられず、仕方がなく、自分からその話を出しました。
「バーゼル王子。良縁に、恵まれたそうですね。まことに、おめでとうございます。」
私は顔をあげ、真っ直ぐ王子の瞳を見つめ、柔らかく、微笑みました。
王子がなぜか驚いて、慌てています。私はその様子が可愛らしくて、また微笑んでしまいました。
私を不幸そうな瞳で見下ろしている王子が、急に何かを瞳に灯し、私の両手を握ってきました。
「フローレンス。君を、愛している。俺と一緒に行こう。」
真っ赤に染まった王子の頬とミルクティ色の真剣な瞳を見て、私にも四年前の感覚がよみがえってきました。私の心臓がドキリと跳ね、頬が熱く火照り、心が王子へと向きました。
私は正直な自分の体に、笑ってしまいました。四年間会っていなくても、私はジルが好きなのでしょうか。
好きなのですね。
私は微笑みました。
嬉しいです。とても。
盛り上がってきましたー。
揺れるフローレンスをご堪能下さいー。




