主人公は、私ではありません。
こちらは、以前載せていた2章の一番最後と同じ内容です。
最新話は、次の3章からです。
私は、図書室にいた第五王子に、もう一度顔を見せてほしいと頼みました。
イケメンです。
笑い方も、話し方も、話す内容も、私の理想通りの、私の理想の彼氏です。
けれど、私の心臓はドキドキすることも、頬が赤く火照ることも、ありません。
王子と話していても、思い浮かぶのは、ジルの困った顔、意地悪そうな顔、無表情な顔、泣きそうな顔、そして、笑顔です。格好悪くても、狡くても、意味不明な行動も、優しくない言葉も、私を騙していたことさえ、愛おしい。
私はジルが、好きです。
ジルの全てが欲しい。
なんだか、アシュリーになったような、変な気分です。
そういえば私は、アシュリーの友情が、恋に変わり、狂暴な執着に変わっていくのを、目の前で見ていました。弟のようにバカで可愛かったアシュリーが、私を力で押さえ込み、男の顔をして私を眺めるようになった時。
私はアシュリーが、狂っているのだと思いました。
けれど、違ったのですね。
アシュリーはただ、恋をしていた。
私に、恋をしていた。ただ、それだけだったのですね。
私も、もうすぐ、狂ってしまいそうです。
ジルに、私を愛して欲しい。
王妃よりも、私を見て欲しい。
そのための方法を、私は、持っています。
この手紙を見せれば、ジルはきっと、私を見てくれるはずです。ジルはきっと傷ついて、もう生きていけないと泣くでしょう。そうしたら、私はジルを抱きしめて、これからは二人だけで生きていこうと、言うでしょう。もう他の誰も見ないで、私だけを見て。他の事も考えないで、私の事だけを考えて。
私達は、きっと、幸せになれるでしょう。
私は、荷造りを済ませると、客室を出ました。ジルの部屋の前で少し迷ってから、ノックをしました。ジルは机に座り、勉強をしていたようです。分厚い本を閉じ、私に視線をよこしました。
私は静かに、王宮を出たいことを告げました。
ジルも静かに頷いて、記入済みの離婚申請書を出し、サインするよう私に言いました。
こうして私は、結婚九ヶ月で離婚し、王宮を出ることになったのです。
どうしましょう。
私には、行くあてがありません。




