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主人公は、私かどうか分かりませんが、なれる気もしません。
ジルは王妃と和解してから、毎日王妃の元に通っています。
私との会話も、王妃のことや国王になることばかりです。私との未来の話は、一体どこへいってしまったのでしょう。
私は結局、ジルに手紙の話ができないまま、時間だけが過ぎていきました。
王妃の夢が、『王妃になること』だったことはジルも知っています。当然、王妃がジルを王太子に推したのは、ジルを王に相応しいと考えたからではなく、王妃が王妃のままで居たいから、だということを、ジルは分かっていることでしょう。それでも、ジルは王妃のために、王太子になることを決めました。
自分のためではなく、王妃のために。
そんなジルに、「王妃は貴方のことを、愛していないよ」と、伝えることが、できるでしょうか。
私は、ジルの話に相づちをうちながら、だんだん、笑うことができなくなりました。
私は、ジルに会うのが億劫で、体調が悪いと伝え、会うことを控えるようになりました。
私は、もう何もかもに疲れ、王妃のことを憎く思うようになりました。ジルと一緒に、王妃に笑いかけることなど、到底できません。




