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主人公は、私にしておいてください。
時を、戻してみましょう。
私フローレンスは、普通に生まれ、育ちました。
確か主人公のオープニングでは、主人公にとって重要な過去の出来事のシーンが羅列され、最後に本人の自己紹介のようなものがありました。
私の章には、何もありませんでした。
え、何だって。
あるの。
まさか、あったの。ジルの章の一番はじめに、そんなシーンが。
ぷぎゃ。
ちょっと待って。待ってください。
この物語の主人公がジルで、私が恋愛対象な場合、ジルに、もし私が選ばれなかったら、どうなるのですかーー。
私は今、一生懸命、熱くて濃厚な物語を紡いでいます。けれど、それは、私がジルの相手の可能性があるからですよね。
では、相手ではない、となったら、まさか。
突然、暗転。
『フローレンスはジルに振られ、歴史家になり、歴史に名を残しました。おしまい。』
って、なるのか。
嫌だ。嫌だー。
もう少し、頑張らせてよ。
私の人生を、一文でまとめるのはやめろ。
私は歴史を捨ててまでジルを選んだのに。今さら私を捨てられると思うなよ。ジルめー。




