主人公は、私です、私です、私です。
手紙の解読を引き受けてから、私は平日は授業の合間をぬって第七図書館で目ぼしい資料を探し、王宮では図書室に閉じこもり、考えました。
以前の私なら、家政婦万歳、王妃の秘密を暴くの巻。ニヒニヒ。などと言っていたでしょうが、今の私には、そのような心の余裕は全くありません。
最初の頃は、時折顔を出していたジルが、今はもう、全く来ません。私達はもう、五ヶ月くらい、会っていません。私はこれを解決するためだけに、ここに連れてこられたのでしょうから、ジルにとって、私と会う時間は、無駄な時間なのでしょう。
私に愛していると伝え、私をやる気にさせて、私に謎解きをさせる。
とても、良い案ですね。ジルから見れば、良い案です。
私は、確かに、チートや家や美しさや賢さではなく、私の血と肉を愛して欲しいと思っていました。
けれど、それも、ここまでくると、笑えます。笑うしかありません。
私は、知っています。
こういうのを、見たことがあります。テレビで。
「実録!捕まっても被害者達から訴えられない凄腕結婚詐欺師たち。愛される彼等の嘘を暴け、今夜これを見れば、あなたはもう騙されない!」
騙されましたけど。
盛大に、騙され続けてますけど。
私は俯き、番組のまとめを回想してみました。
男達は弱さを見せて、女性の母性に訴えかけてくる。要注意ワードは、「俺なんか」。
男達は誠意を見せて、女性の理性に訴えかけてくる。要注意ワードは、「信じてる」。
男達は希望を見せて、女性の願望に訴えかけてくる。要注意ワードは、「一緒に」。
時には、男達は貴女を責めて、女性の罪悪感に訴えかけてくる。要注意ワードは、「君が、悪いんだ」。
そして最後に甘く囁いてくる。要注意ワードは、「愛してる」。
ああ。
私は、結婚詐欺に、あいました。
いいえ、あっています。
ジルは、全部、言っていました。要注意ワード、全て、私に、囁いていました。この間。
被害届は、どこに出せばいいですか。相手は国家兼権力ですが、大丈夫ですか。
いや、いいです。
やっぱり出しません。
ジルは私を愛している。今は忙しいだけで、きっと、戻ってきてくれるはずです。私のところに、戻ってきてくれる。彼は、私を愛しているのだから。謎を解けば、甘々な新婚生活です。
私、結婚詐欺になど、あっていません。
しくしくしく、もう、泣くしかありません。
私はもう、おかしくなってしまいました。




