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主人公は、私にきまっています。


 (わたくし)は、ジルから渡された手紙をぼーーと眺めています。



 やる気がおきません。私は一体、ここで、何をしているのでしょう。



 この手紙について、思い当たることが幾つかあります。ありますが、その事について、私は考えたくありません。


 考えません。私は、考えません。




 とにかく、これを誰が書いたのか、それについて考えましょう。さあ、家政婦の時間です。頑張れ、私。



 まずジルが、この手紙を私に渡したタイミングからして、書いた人は王族です。だってわざわざ、私が王族専用の部屋に入れるようになってから頼むなんて、書いたやつは王族だよって言ってるようなもんでしょ。そうならば、ジルは、誰が書いたかを知ってて、私に頼んだ。


 で、女の筆跡。


 女性の王族で、ジルが関心を持ってる相手なんて、一人しかいないだろ。



 王妃でしょ。はい、おしまい。



 私は王妃の筆跡を確認する方法を考えました。確か、王族新聞に、王妃直筆のファッションコーナーがあったはずです。私は図書室の隅で山のように積まれた新聞を取り、中を確認しました。



 全然、違う。



 そうですか、違いますか。けれど王妃以外、思いつきません。絶対、王妃だろ。



 違うの。違うのですか。



 え、待ってください。


 そうなると私は、この筆跡の主を求めて、国中の書物を確認しなければいけないということですか。まさか、ジルは、自分でやるのが面倒だから、私に押し付けたのですか。私なら、やってくれるって。いや、やるよ。やりますよ。ジルに頼まれれば。ジルに、笑って欲しいから。


 私は、王妃という勘が外れたことに気落ちしながら、更にこれから何万もの書物を確認しなければいけないのかとうんざりして、俯きました。



 私は、一体、何をしているのでしょう。


 ジルに会えもしないのに、私はこんなことをずっと続けるのでしょうか。けれど、謎が解ければきっと会えます。誉めてもらえるはずです。それで、誉めてもらって、どうするのですか。また、謎解きをするのですか。それを、繰り返すのですか。ジルは、謎解き係が欲しかったのでしょうか。


 そんなはずない。


 これが、解ければ、きっと、いいことがあるはず。




 私は手紙を見つめました。



 何か、違和感を感じます。この手紙の字は、少し、個性的です。高位貴族ならすぐに矯正されそうな、個性的な字、なのです。



 あ、王妃の出身は、確か子爵家です。



 公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。子爵は下から二番目の爵位で、そこまで裕福ではない設定です。



 私は、子爵家時代の王妃の筆跡を探してみることにしました。王宮に、そのような資料あるでしょうか。あるとしたら、王妃の私物しか考えられません。王族専用の部屋ですね。



 こうして私は初めて、この部屋に足を踏み入れました。


 そこには、左右の棚には雑多な資料や書籍が並び、子供用の玩具なども置かれています。何のためにここに、これらを置いたのでしょうか。私は木箱にも気づき、中の本を取ってみました。金色の髪の王子。なるほど。王族以外には見せることができない、王族を称賛する資料が置いてあるのですね。



 さて、王妃の箱は。


 ああ、あれあれ、あれですね。


 白い布で覆っているやつです。



 私は、中を漁りました。大した資料は入っていないでしょう。ここは王族だけが入れるとはいえ、かなりの人数の王族がいます。重要な資料など、ないでしょう。


 けれど、少女時代の作品か何かなら子爵家から持ってきているかもしれません。あった。これは、一時大流行した願いが叶う呪われた布人形ですね。少女達がこぞって人形を自作し、願い事を書いて、人形のお腹の中に、埋め込んだのです。



 私は容赦なく、人形のお腹にペーパーナイフを突き刺して無理やり切り裂き、中から出てきた紙を広げました。



 王妃になりたい。



 なんと。王妃の幼少の頃からの夢は、王妃になることでしたか。ちょっと、衝撃的でした。私は、ものすごい根性と、意地と、ぶれない魂を感じました。


 かっこいい方ですね。


 ジルの母親でなかったら、応援したいところです。




 筆跡は、当たりです。ジルから預かった手紙と同じです。王妃は、王妃になるにあたって、癖のある筆跡を矯正されたのでしょう。よくある話です。



 さてジルは、なんと答えるでしょうか。





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