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主人公は、私だと願っています。
はあ。ただの私は、なんて無力なのでしょう。
彼と目が合えば、きっと挨拶をして話しかけてくれると自惚れていました。誰だって、私、もしくは私の家や家族、と、繋がりたいに決まっています。そう、思っていました。
けれど、彼は。
そのような気が、ないのでしょう。私と知り合いになれる機会を、あえて、使わないのだから。
ふふ。自然と、笑みがこぼれました。
この、落ち込んでいるのに、とても温かい気持ちはなんでしょう。私は、私を利用しようとしない人間に、会ったことがありません。彼は。私を利用する気がないのでしょうか。そのような人に、出会えるなんて。最高です。
もう、彼しかいません。
ところで、彼は一体誰なのでしょうか。
私、どうすれば、彼と知り合えますか。