主人公は、bではないが、なれるかもしれない。
俺は第七図書館に辿り着く前に、アシュリーに捕まった。
良かった。丁度、彼に聞きたいことがある。
俺は、彼に向かって微笑んだ。
俺を捕まえておきながら、アシュリーが何もしてこないので、俺は挨拶も飛ばして気になっていたことを尋ねた。
「ジェスス公爵に何度か会ったのだけど、特に何も言われなかったことが不思議でね。アシュリー、君は、公爵に私のことを、話してないのかい。」
ジェスス公爵は魔法関連の仕事を任されている。だが、王宮で見かけることも多い。俺の父である国王と、よく話し込んでいる。
王宮でも、舞踏会でも、公爵と俺が話せる機会が何度もあった。それなのに、公爵は何も言ってこなかった。俺は、娘に近づくなと牽制くらいはされるかと身構えていたが、取り越し苦労だった。
アシュリーが頷いた。俺は眉を寄せ、アシュリーに尋ねた。
「何故。公爵に頼まれているのだろう。悪い虫が付かないようにと。」
俺は、明らかに、悪い虫だろう。
それともアシュリーも公爵も、俺など取るに足らないと考えているのだろうか。なるほど、そういうことか。それなら、有り得る。
俺が一人納得していると、アシュリーがフローレンスの父親への不満を話し始めた。
「公爵には、歴史好きの平民と仲良くしてるとだけ伝えました。もしそれが王子だと知ったら、あの親父はまた何か画策して、混乱が起きるから。です。」
その答えに、俺は思わずプッと吹いてしまった。そして、すぐに頷いた。
「ああ、そういうことか。確かに、あの親父になんでもかんでも画策されるのは、不愉快極まりないからね。君の気持ちは、よく分かる。」
俺の同意に気をよくしたのか、アシュリーが不機嫌な顔で尋ねてきた。
「王子こそ、何がしたいんですか。」
苛立った様子を隠しもしないアシュリーの態度に、俺は少し驚いた。だがいつもと変わらず、俺は穏やかに笑った。
「何がって。歴史について、話し合ってる。」
アシュリーが、あからさまに嫌そうな顔をして、わざと、深いため息をついた。
「歴史の話なら。身近に、もっと、優秀な、専門家が、いますよね。」
アシュリーの刺々しい言葉に、俺はフローレンスを思い浮かべた。
もっと優秀な人間。思い付かない。全く、思い付かない。
フローレンスは、特別だ。
俺はフローレンスとの会話を思いだし、つい、ふふ、と笑ってしまった。
「それが、いない。彼女の方が優秀で、脱帽している。」
俺の言葉に、アシュリーが少し考え込んだ。どう返してくるか、俺が見守っていると、アシュリーが右の拳をギュッと握りしめ、体に力を入れた。
俺はまた、笑った。
「アシュリー、君は自由すぎるな。憧れるよ。」
俺はそう言って、アシュリーのストレートを避けると、地面を蹴った。その際、魔法で砂埃をアシュリーの顔めがけて舞わせた。驚いたアシュリーが目を閉じた隙に、俺は彼の横をすり抜けた。
まさか、いきなり殺されそうになるとは思わなかった。
俺は楽しくなって、笑ってしまった。




