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主人公は、bではなくていい。


 俺が第七図書館に足を踏み入れると、どこからか視線を感じた。俺はその視線を辿って、あの青い瞳に行き着いた。



 俺は驚いた。


 前回、彼女は俯いて嫌そうな顔をしていたので、もう俺には接触してこないと思っていた。もしかしたら、何か俺に嫌がらせでもしようとしているのか。


 兎に角、俺は少し微笑んで、会釈をした。彼女も慌てて返してくれた。俺はそのまま、空いている席に着いた。




 それからは、図書館に行けば、俺は必ず彼女の視線を感じた。だが俺は、それを無視し続けた。



 大貴族であるジェスス家の娘が、平民に興味を持つとは考えづらい。そうなると、彼女は俺が王子であると分かった上で、視線を送っていることになる。彼女が何のために王子である俺に接触しようとしているのかは不明だが、ジェスス家は癖が強いと有名な家で、俺は女性が苦手だ。関わらない方がいい。



 しかも、フローレンス嬢は、兄ディミトリ王太子殿下の婚約者候補だ。殿下は、性格が悪い上に残忍で大袈裟だ。俺が彼女に手を出せば、殺されるかもしれない。殿下は、俺にはいつも強気で、俺が苦しむ姿を見て花が咲いたように笑う。



 そしてお母様には、失望されるだろう。


 考えただけで、憂鬱だ。そんな悪手をわざわざ選んで、時間を消費する程俺は馬鹿ではない。




 だが、もしかしたら、彼女は、俺に恋をしたのでは。


 

 そんな都合の良い考えも浮かびはした。有り得ないが、ここでだけはそんな妄想も許されるかもしれない。


 一国の王太子である兄ディミトリが、自分の婚約者にと求めているフローレンス・ジェススが、俺に、恋をしている。


 俺はほの暗い優越感を感じて、笑いそうになった。 




「バーゼル。勉強と剣の訓練は、お母様、貴方には向いていないと思うの。そもそも勉強は、貴方には必要のないことだものね。お母様、うっかりしてたわ。それに、剣など野蛮ですもの。とても危険だし、もし貴方が怪我でもしたらと思うと、心配で、心配で、夜も眠れないの。お母様の気持ち、分かってくれるわよね。優しい、私のバーゼル。」


「はい。お母様。」



 お母様が言うことを、俺はすればいい。そうすれば、お母様は、優しく微笑んでくれる。



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