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主人公は、私ではないようです。


 ジルは、(わたくし)に興味がないのでしょうか。



 小さな出来事にも一喜一憂し、想いをくすぶらせているのは私だけで、ジルはいつも穏やかで柔らかい。変わらないその態度が、私への関心の無さに感じられて、私は、泣きそうです。


 いえいえ、ダメダメ。


 こんなところで凹んでいても、何も良いことはありません。こうなったら、とにかく、色々仕掛けてみましょう。頑張れ、私。



 私は、考えました。


 学校で会うのが難しいなら、外はどうでしょうか。学外デートなら、他の生徒の目もなく、心おきなく二人っきりになれるかもしれません。



 私はお気に入りの歴史的事件をいくつか選び、デートで行けそうな歴史的名所はないか、地図と睨めっこをしながら、考えました。


 あった。十三代前の王妃が歴史的な演説をした塔が、徒歩二十分程の場所にありました。そこは、歴代の王妃達が愛した庭園の横に建てられた物見の塔で、意匠が凝ったデザインが観光にも人気となっていて、デートの名所でもありました。


 ここだ。有名な演説の話から、塔の美しさを噂に聞いたと言い、一緒に行こうと誘ってみましょう。



 良い案を思いついた私は、そのままの勢いで図書館を訪れたジルを誘ってみました。



「ああ、確かにあそこの庭園はとても美しいですね。」


 ジルが私の言葉に頷いて、私の瞳を覗き込みました。私は爆発しそうな心臓を抑えて、その続きを、祈るような気持ちで待ちました。


 どうか、「一緒に行こう」と、誘ってください。



 ジルが、いつも取る間よりも少し長い沈黙の後に、私から視線を逸らしました。私は、逸れていった甘い瞳とその仕草に息をのみ、目をつむりました。強張った体が震えるのを、必死で、押さえつけました。


 ジルは、私が誘っていることに、気づいていることでしょう。少し大きめに息を吸った彼が、呟いたのが、私の真っ赤に染まった耳に届きました。



「ですが確か、今はちょうど良い花が咲いていない時期ですね。」


 私は、何も考えられなくなった脳みそを左右に振り、目を開けました。ジルの顔を見ることは、できません。


「そうなのですか。」


 気力を振り絞って、私は声を出しました。それなのに、かすれてしまった声はとても弱々しくて、まるで泣いているように聞こえました。



 見たかったのは、花ではありません。



 私は、笑顔を作ることしかできませんでした。




 ジルは、私に、興味がないのでしょう。



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