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主人公は、私ではダメかもしれません。
嬉しいことに、家のことを教えてくれたあの時から、少しずつ、ジルは他のことについても話してくれるようになりました。
兄弟が沢山いること、父親とはあまり交流が無さそうなこと、苦めのチョコレートが好きなこと。
ジルの話から、小さなジルの断片が読みとれるようになって、私の心もその度に満たされて、そんな幸せな日々が続きました。
けれど、ある日、私は考えてしまったのです。
ジルの心が、ゆっくりと開きはじめても、未だにジルがしてくれないことが一つあります。
ジルは、私のことを、何も聞いてきません。
ジルの言葉も、表情も、姿形も、家も、家族も、どんなに小さなことでも、全てが知りたいと想う私。こんなにもジルのことを求めている私と、全く私を知ろうとはしてくれないジル。
考えれば考えるほど、辛い。
なんで、こんなことに気づいてしまったのでしょうか。私のバカ。
本当に、バカな私。