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不思議な女子高生

タイトルを『JKと店員』から『不思議な女子高生』へと変更させていただきました。

そして、内容も大幅に変更させていただきました。

これで、気持ち悪さもなくなり、私的にはすっきり?

まあ、ちょっと不思議な話にはなっていますが、主人公に害はなくなったと思います。



 春香との約束を取り付けて、電車は最寄りの駅に到着した。

 時刻は13時を回ったところだった。

 

 待ち合わせ時間まで時間が余っていたので、駅周辺の散策をすることにした。

 

 駅前は商店街になっており、真昼間にもかかわらず多くの人でにぎわいを見せていた。

 俺は、家とは反対側の方へ向かって歩いてみる。反対側には飲食店や専門店が多く立ち並んでいた。中でも目を引いたのは、インド料理屋さん。店の前の看板にカレーセット、ナン食べ放題700円とデカデカと書かれていた。中の様子を覗くと、インド人と思われる人たちが、ホールと厨房に合わせて4、5人作業しているのが見えた。お客さんはまばらながらも、料金的にはお得なので、今後の夕食の候補として入れておくことにした。


 商店街も外れの方に差し掛かり。お店の数も少なくなって来たので、飲食店探しをやめ、今後はアルバイト出来そうなお店を探すことにした。


 母親から毎月5万円ほどの仕送りは送ってもらえるとのことだが、家賃4万円のアパートから水道光熱費を差し引くと、雀の涙程度しか残らない計算になるので、早急にアルバイトを始めなくてはならなかった。


 どこかいいところはないかと、商店街を駅の方向へ戻りながら進んでいると、とある居酒屋の入り口に、アルバイト募集中の張り紙がしてあるのを見つけた。張り紙には、『時給1030円』と書かれている。その居酒屋は、いかにも大衆居酒屋という感じの雰囲気で、見た感じあまり自分好みの雰囲気ではなさそうだった。


「うーん……」


 一人顎に手を当てて(うな)りながら渋い表情を浮かべ、切り替えて次のお店を探す。

 

 次に目に入ってきたのは、入口の両脇にワイン(だる)が置かれているおしゃれな雰囲気が漂うお店。お店自体は奥まっていて、店内の様子を窺うことは出来なかったが、こぢんまりとしていて、落ち着いた感じに見える。 

 ワイン樽に貼られているメニュー表の下に、さりげなくアルバイト募集と書かれた小さな張り紙が貼ってあるのを目ざとく見つけた。


『大学生以上 時給1100円~』


「1100円かぁ~」


 中々悪くない。候補の一つに入れておこう。お店の名前を覚えておくために、俺はその張り紙をスマートフォンのカメラでカシャリと一枚写真に撮っておく。

 写真を確認して、もう一度ワイン樽に書いてある店名を見つめた。


「レストラン『ビストロ』……か」


 また何かの機会に覚えておこう。

 そう心に秘めて、スマートフォンをポケットにしまって、再び散策を続ける。


 駅前の方に戻っていくと、ものすごい自転車が置かれている三階建てほどの建物があった。置かれた自転車が道路まではみ出していて、通行の邪魔になっていた。


 雑居ビルのようで、一階は歯科医院になっている。

 その雑居ビルを通り過ぎようとすると、雑居ビルの掲示板のようなところに、塾講師募集と書かれた張り紙を見つけた。

 

 その張り紙が気になり、雑居ビルの掲示板の前まで足を進めた。どうやら、この二階が個別塾になっているらしい、その塾講師のアルバイト募集の張り紙には、週一回以上で時給が2500円と書いてあった。


「すげぇ……さすが塾講師」


 俺は、ぽつりとそんな独り言がつぶやいてしまう。

 勉強は苦手ではないので、塾講師も候補の一つに入れてみようかなぁ。俺は再びポケットからスマートフォンを取り出して、その求人張り紙をカメラで撮影しておく。


 写真を撮り終えた時、雑居ビルの階段の方から寒暖を下りてくる足音が聞こえた。見上げると、一人の制服姿の女子高生が降りてきた。

 

 その女子高生は、つり目で少しムスっとした表情ながらも、どこか透明感のある美しさがある美少女だった。肩まで届くか届かないかくらいの真っ直ぐな黒髪で、可愛らしいサクランボのついたヘアゴムで、サイドテールに結んでいた。


 女子高生は、プラスチックのカバンを手に提げて、青いリュックサックを背負いながら階段を下りてきた。ふと、俺の姿に気が付いてこちらをちらっと一瞥したかと思うと、キョトンと俺の顔を見て固まってしまった。


 辺りを見渡しても、他に立ち止まっている人影はいない。見たところ、俺のことを見つめているらしい。

 だが、都内で知り合いの女性なんて数が知れている。その中に女子高生の知り合いはいない。

 

 俺は、少し戸惑いながらも声を掛けた。


「あの……何か用かな?」

「へっ……? あっ、いやっ、何でもない」


 我に返ったその少女は、恥ずかしそうに頬を少し染めながら、トタトタとローファーを鳴らして、逃げ去るように駆け足で逃げて行ってしまった。


 何だったんだろう?


 俺は首を傾げながらも、改めてアルバイトのお店探しを再開することにした。


 雑居ビルから駅の方向へ少し歩いたところに、ドラッグストアを見つけた。

 そう言えば、ドラッグストアで思い出したが、まだ救急セットをこちらに来て揃えていなかった。丁度いいや、あそこのドラッグストアで買っていこう。

 

 そう思い立ち、俺は商店街沿いにあるドラッグストアへと足を踏み入れた。

 ドラッグストアの入り口は、商店街のテンポということもあるのか、人一人がやっと通れるほどの狭い通路が二本あるだけで、店はかなり奥まっていて縦長だった。

 見渡した限り、入り口付近は食品や栄養サプリなどのコーナーで、救急用品は置いていないので奥へと進んでいった。


 店の奥へと入り込み、辺りを見渡しながら救急セットを探して店内を散策していると、とあるコーナーに、先ほどのすれ違った女子高生を見つけた。


 角から様子を覗き込むと、女の子はしゃがみこみながら真剣な表情で商品を一つ一つ手に取って吟味していた。

 商品をじっと睨みつけるように見ては棚に戻し、見ては棚に戻しを繰り返していた。

 何やっているんだろう?? 首をかしげていると、おもむろに女子高生が俺のいる方へ顔を向ける。

  

 俺は何故か咄嗟に物陰に隠れてしまった。まずい、このままだと先ほどから後を付けてきたと勘違いされてしまう。さらに場が悪いことに、救急用品コーナーはしゃがみこんで商品を吟味している女子高生の奥のところにある。ここは、偶然であることを証明するためにも、知らん顔で堂々と通り過ぎよう。


 そう決心して、一つ息を吐いた時、ふいに背後から声を掛けられた。


「何かお困りですか?」


 俺はビクっと反応して瞬時に振り返る。そこにはドラックストアの店員と思われるショートヘアーで茶髪の、若い女の人が立っていた。

 

 緑のエプロン姿で、胸のところには吉川というネームプレートが付けられていた。

 

 俺が挙動不審な動きをしていたので、声を掛けられたらしい。


「あ、いやぁ。えっと……」


 俺が返答に困っていると、吉川さんと思われる人物は、俺の後ろの方を見て、何か納得したような表情を浮かべた。


「あぁ、なるほどね。また来てたんだあの子」

「知ってるんですか?」


 俺がそう尋ねると、吉川さんらしき人は再び俺に向き直る。


「いや、名前は知らないんだけど、いつもああやって一つ一つ商品を見比べて毎日吟味してくんだよ」

「毎日ですか……」

 

 俺がそうつぶやくと、吉川さんらしき女性は苦笑いをしながら会話を続ける。


「まあ、結局何も買わないで出ていっちゃうことが多いんだけどね」


 すると、吉川さんらしき人は「はっ!」っと何か思い出したように俺に向き直った。


「ごめんなさい、話し込んでしまって。私ここのアルバイトの吉川萌絵よしかわもえっていいます」

 

 ネームプレートを持ちあげながら、吉川さんは丁寧に挨拶してきてくれた。


「あ、どうも。えっと、南大地って言います」

「あら、名乗ってくれるんだ」

「まあ、紹介してくれたのにこっちが答えないのはフェアじゃないんで」

「お客さんなんだから、そんなこと考えなくていいのに」


 吉川さんは、あははっ、と笑いながらバシバシ俺の肩を叩いてきた。


「それで、何かお探しですか? 南くん」


 吉川さんは、店員モードでお調子よく俺に尋ねてきた。


「あぁ、えっと絆創膏とか消毒液とか買いに来たんですけど」

「なるほどね! 救急用品系を買いに来たのね、了解了解!」


 吉川さんは、ニコニコしながら辺りを見渡した。


「あの、どいてください」


 すると、ボソっと可愛らしい声が後ろから聞こえる。

 振り向いて下の方を向くと。先ほどの女子高生が、俺たちを睨みつけていた。 どうやら俺と吉川さんが話し込んでいたせいで、通り道を塞いでしまっていたようだ。


「あ、ごめん」


 俺がとっさに道を開けてあげると、その女子高生は睨みつけていた顔を和らげて、真剣な眼差しでじいっと俺の方を見つめる。

 その真っ直ぐとした真剣な瞳に、俺は頭の中まで見透かされているような感覚に陥る。

 女子高生は、しばらく俺を眺めて動こうとしなかったので、痺れを切らして「あの、どうかした?」と声を掛けた。


 すると女子高生は、


「え?」


 っと我に返った表情になり、ポっと顔を赤らめて俯いた。


「あ、その。ありがと……」


 一言そう言い残して、女子高生はスタスタと何も買わずにドラッグストアから出ていってしまった。


「ありゃ、いっちゃった」


 吉川さんも、女子高生の姿を眺めていたらしく、ボソっとそう口にした。


「あ、ごめんね。救急用品はこっちだから!」


 気を取り直した吉川さんに手招きされて、俺はその不思議な女子高生を見送ってから、救急用品コーナーへと足を動かした。

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