老魔術師たちの自爆事故についての報告
ここ数年、老魔術師たちの爆破事件が相次いでいる。
理由は分からない。
何者かによる犯行か、もしくは魔術師たちによる意思表示か。
その中にはかなり高名な魔術師も含まれ、我が魔術学校の教授や元校長の姿もあった。
長らく我々を悩ませていたこの事件だが、ある老教授の一言によって私は解明の糸口を掴む。
「歳を取るの魔力の扱いが上手く行かんでの」
「今、何と言われました?」
「うん? だからションベンと一緒だ、チョロチョロ出とると思ったら急にドッと出る」
小便の話は置いておくとして、もしこのボケ老人……いや、老教授の言う通りなら我々は何か対策を取らねばならない。
私はまず引退した魔術師のリストを手に入れ訪ねてみる事にした。
「確かに最近は手元が狂う事も多くなったな。でも大したこたぁない、せいぜい小屋の一つや二つが燃え落ちる程度だ」
その老人は灰になった小屋を指差し笑った、既に兆候が現れている。やはりあの小便教授の言う事は正しかった。
そこで私はこの老人に魔術の使用を制限するよう提言した、すると老人は急に怒り出した。
「魔術もなしでどうやって生活するってんだ! 俺に飢え死にしろってか!?」
「いえ、そういう訳では……。しかしそうでもしないと命に関わる事態に」
「帰れ帰れ! てめぇみたいな奴と話す事ぁない!」
話はそれで終わりだ。
非常に扱い難いジジイ……いや、ご老人だが彼の言葉にも理があるらしい。
実際、老人が一人で暮らするのに魔術がなければどれだけ不便だろう。火起こし・薪割り・食料の確保、挙げるだけでキリがない。
それを老人の細腕でやらせようと言うのだ、それこそ酷ではないか。
なので私は方針を変えた、彼らに共同生活を提案したのだ。
だがこの方針も上手くは行かなかった。
彼らは故郷で余生を過ごしたいと思っている、都市での生活に嫌気が差したのだ。
それならと家族に話を持って行ったが、それも無駄だった。
魔力は主に遺伝の影響が強い、だから彼らの子供や孫は国にとって重要な役職に就いている事が多い。それを辺境で老人と過ごせなどとは言えはしない。
老魔術師は偏屈になる傾向が強いらしく、私も疲れが出ていた。
どうしてあんな糞ジジイどもの為に私が骨を折る必要が(以下の文章を記録から削除する)
老人たちの暴発を止める方法はないのだろうか、唯一の手段と思われる辺境の村は人口のほとんどを都市に奪われ機能していない。
だが私に出来る事はした、これで報告を終わる。
元になってるのはあるコラム。
老人の自動車事故が多いのはこの社会が車社会なのが原因で、老人も車に乗らないと買い物すら出来ない状況にある。
だから地元の商店街を歩行者天国にして復興しよう、というもの。
異世界的に書くとこんな感じか。