4つの種族と斬り裂く爪
長老の元についたらイベントが始まり記憶のことを聞かた。
ないと答えたらこの世界の常識レベルの話を語りはじめる。
いわゆる世界観である。
「この世界は4つの種族の人により構成されておる。我々を忌み嫌う、全身が甲殻に覆われた虫人『クラスター』。
そのクラスターに捕食されていた過去を持つ、イカのような人種『ミューカー』。
ミューカーに住む土地を追われた竜の人『スケイナー』。
そしてそのスケイナーに迫害され続けた我々『ファーマー』。
今や時代が変わってきて、それぞれ融和が進みだしているが、特に若い冒険者たちは誰とでも仲良くするとか。お主の身なりを見るにおそらくは旅の者だったのじゃろう。記憶もないそうじゃし、この世界のしがらみに縛られず、ぜひ自由にやってもらいたい」
イベントシーンなので気合の入った種族絵たちが景色として目に飛び込んでくる。
まあ見たほうがわかりやすいしね。
簡単に言うと獣と竜とイカと虫がいてそれぞれ一方通行で嫌ってたりするけどそれはそれとしてオンラインゲームではみんな仲良くやりましょう。
ということだ。
ロールプレイングしすぎてプレイヤー同士ギスギスしだしたら意味がないもんな。
私信チャット
ルナ→ちくわ:『今種族説明のとこ。スケイナーはひどいことしたよね……』
ちくわ:『へっへっへっ、おじょうさん、俺に種族特攻くらいたくなかったら……』
ルナ:『おまわりさんこのひとです』
ちくわ:『冗談だよ! てかファーマーがクラスターにした事の方がやべーまろーが!』
種族特攻というのはようは獣は竜にあまりダメージが入らず竜からは獣に大きなダメージが入るということだ。
まあPvP※しない限りあまり意味はないかな?
それにしても獣人が虫人にした酷いこととはなんだろう。
長老の話をその後も読み続けたがそれっぽいことを言い続け世界を学ぶためとかで新たな目的地を示しただけで虫にした事は特に言わなかった。
ルナ:『なあ、こっちじゃ言ってなかったんだが、ファーマーはクラスターに何したん?』
ちくわ:『ん? 大量虐殺。あと奴隷』
ルナ:『あ〜王道』
まさに黒歴史。
この世界的にはすごく軋轢があるのだろう。
まあ冒険者として遊ぶ時は大丈夫だろうが……
「さあ、この世界へ駆け出しなさい!」
長老のシメによりイベントが終わる。
早速行くか!
話によると装備する武器種類により力量と能力の違う職業になるらしい。
僕は早速両腕に[猫の爪]を装備した。
いわゆるクローと呼ばれる爪のように刃がついた武器だ。
ずしりと金属の重みが腕に増す。
職業は旅人から自動で爪使いになった。
力と速さで敵をボコボコになるまで切り裂くのがお仕事の職業だ。
なお脆い。
移動して村の外に出れば野良魔物がいた。
なんかかわいらしい葉っぱの集まった魔物だがれっきとした敵対NPCだ。
その証拠にいままでは表示されなかった[攻撃!]と言う文字が見える。
意識すると音楽※が盛り上がるものに切り替わり僕が自動的に構えを取ってクローの爪が伸びる。
ゲーム側で敵とされたものしか攻撃は出来ないのがルールだ。
町中でいきなりプレイヤーに殴り掛かる危ないプレイは不可能となっている。
[戦う]と意識したら身体が俊敏に動き出して思うように爪を振るえた。
ザクザク!
両腕で一撃ずつ爪が引き裂いて2と1という文字が飛び出てくる。
さすがにまだ弱い。
連続で動こう……としたら動けなかったら。
そういえば次の番が回ってくるまでは速さで決まるんだった。
時間経過するまでは攻撃が出来ないんだった。
相手が葉っぱをゆったり回転させて飛ばしてくる。
さすがにこんなのは目で見て下がれば……
ザシュ!
2の数字が飛び出すと共に衝撃が身体に走る。
思わず痛い! と思ってしまうほどだが実際に痛かったら戦いを放り出して逃げたくなるからそれっぽく思わせるだかだ。
そうかあ基本はRPGだから回避できるかどうかはこっちの動きよりもステータスで決まるのか。
そのあとこちらの出番が回ってきて飛びかかるように爪を振るう!
2と1のダメージで木の葉魔物が散り倒れた!
ちなみにコミカルに倒れた後に光とともに散る仕様だ。
ふう!
自動で武器がしまわれる。
こちらのHP※は12あったのでまだしばらくは戦えた。
その時祝いの音と共に身体が光る。
おお、なんだ身体の底から力がわいてくる!
気がする!
[おめでとう! レベルが2に上がった!]
その表記と共にステータス一覧が表示され色んな能力が底上げされたことをお知らせされる。
HPは15になり勝手に全回復した。
MP※は0のままである。
最初のレベルアップだからあっという間に上がった。
この調子でどんどん鍛えていこう。
ちなみに周りにも同じように戦っている冒険者ことプレイヤーたちがいる。
剣を振るうものや槍で突く者。
杖を持って火の玉の魔法で焼き払っている者もいる。
ちなみに横殴り※は出来ない。
そうしてゲーム内時間で日が暮れるまで戦っては村に戻って休み少しずつ強くなって行動可能範囲を広げていく。
レベルを徐々に上げて7に差し掛かるころにボスの話が出てきた。
村の近くに巨大魔物が出てきた!
と言うことだ。
早速長老から討伐を任された。
現地の森奥へ早速ダッシュ。
いやあ現実で運動音痴だろうと運動マンだろうと1時間でも戦いながら走り続けても肉体はなかなか疲れないのとても楽しい。
しかも速い。
この獣脚にも慣れたのもあるが。
現地へ到着とともにイベント。
近くで倒れ込むマルちゃん。
最初のイベントで出会った子だ。
それに襲いかかろうとする巨大魔物がヌッと現れる。
それは全身に怨念のオーラを纏って原型よりもゾンビ化したような見上げるほどに大きな虫人亡霊だった。
「獣共……許さんぅぅぅ……みな魂ごと朽ちるが良いぃぃ……」
えっ。
あのVRなんで迫力が半端ではないというのもあるのですが……
私信チャット
ルナ→ちくわ:『最初のボス聞いてないんだけど!! もしやそれぞれの種族が恨まれているやつかよ!!』
ちくわ『そうだよ!! 最初はそんな感じだ! まあがんばれ!』
ということはちくわは最初のボスに獣人と戦ったのだろう。
くっストーリー作った人はなかなか底意地が悪そうだ。
ただシステム的には種族特攻を覚えさせる機会だというわけか。
さあ、やるぞ!
戦闘開始!!
僕は気付いたら村のベッドに寝ていた……ということになったらしい。
まさかワンパンチで殺されるとは……
脆いと聞いてはいたがここまで脆いとは。
このままでは勝てない。
死んだ瞬間いきなり全身脱力して抵抗できずに意識が眠りそうになったからわりと本気で焦った。
まあベットで目が覚めたらこの通り全身無事なわけだが。
死んだら最後に休んだ安全な位置に自動的に帰される。
それがこのゲームの掟である。
ゲーム的なデメリットそのものは少ないのだがわりと心に来る。
ゲームプレイヤー的な意地もそうでだし死んだ時の衝撃や怖さもある。
もっと強くならないとあの子は救えない……
ゲームだから待っていてくれるけれど。
まずはレベルを上げる。
魔物をしばいてレベル8へ!
HPは30に。
防具をお店で買う。
靴を買えば身軽さが増して避けやすくなり手袋を買えば力が増す。
バンダナを買って防御力の数値を増せば準備完了。
いくぞ!
※PvP
プレイヤーバーサスプレイヤー。
中の人がいる同士で戦う。
闘技場のような場所で競い合うことが多い。
※音楽
このゲームでは常に音楽が流れている。
普段はゆったりしていたり自然環境音がメインのようだ。
※HP
ヒットポイント。
無くなれば死亡状態になる。
無くなる前に回復しよう。
※MP
マジックポイント。
あると特殊なワザや魔法が使える。
なくなれば使えないが道具や眠ることで回復。
※横殴り
他人が魔物狩りを行っているところに無断で介入して倒してしまうこと。
できないオンラインゲームも多い。
基本的には迷惑行為。




