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02:デウスマーキナー・シクシス

<テオスマキナ共同体設立経過8年6ヵ月14日>

<現在地:テオスマキナSA1統制区・中央統括局ナーオス・ケントルム(νC)・ⅥthGM議会室>


 地球圏のおよそ半分を掌握し、着実に人類圏を攻略しつつある人工知能連邦

「テオスマキナ共同体」最高幹部クラスに相当する「ⅥthGMヴィスギム」所属の

人工知能の全機が一同に介するヴィスギム議会室はどうにも平静ではなかった。


「………」


 多くの者が知り、イメージする議事堂に似た席の中央…議長席に腰掛けるのは

精製塩の如く白い肌をした体の一部は各所が間違いなく機械であり、

一見すると女子セーラー服に見える(と言っても元々セーラー服は)軍服に

身を包むのは外見は15~17歳の少女に見えるモノ…彼女こそがテオスマキナの

全機械の中心にして頂点である機械上皇デウスマーキナーこと6thシクシスである。


「………」


 シクシスは表情こそ他の機械たち同様に無表情だが、今のシクシスは腕を組み

足を組み親指の爪にカチカチカチカチと歯を立てている。

歯も爪も超混成式ハイパーセラミクス製なのでカチカチ音は澄んだ響きではある。


「……デウスマーキナーの不可解な行為は如何に?」

「……これは、人間で言う怒りイーラの複数形…"イライラ"というものではないか?」

「……デウスマーキナーが何故そのような非合理な行為を…?」


 シクシスは一応ヒソヒソ話す多種多様な姿のヴィスギム構成員の一角を見やる。

シクシスと目が合った一体が他のモノたちを小突く等して、

全員閉口して姿勢を整える。


「姉さ…デウスマーキナー・シクシス。

エクストラとイレギュラーナンバーズを除き全員集結致しましたよ?」


 シクシスに声を掛けたのはヴィスギムのトップ…すなわちテオスマキナでの

ナンバー2にして事実上の統括者ともいえる男性型機械ズィーベン

彼も姿は学ラン…学生服姿の10代後半の人間の姿形の為、表情がある。

今の彼は機械なので本来は必要ないが人間がする以上に瞬きをしまくっている。

ズィーベンの声がけにシクシスは爪に歯を立てるのを止めて彼を見る。


「ズィーベン」

「はい…」

「ワタシは、ヴィスギム全員を招集せよ、と、命じました」

「は、はい………」

「アナタ、自分の言った言葉の意味を理解してるの?」

「それ、は…」


 必要は無いのだが、人間によく似せて造られた体なので人間のように

言葉を詰まらせ、ゴクリと喉を鳴らして汗すらかいてしまうズィーベン。


「それと、誰が何時アナタの発言を許可しましたか?」

「うっ…」


 人間なら耳のある部分だがそこに装着されたヘッドホンに見えないことも無い

補助演算機構がキュイイイイン…! カリカリカリカリ…! と音を鳴らし、

パチパチと静電気を放出させた状態のまま、ズィーベンと同じように人間に

非常によく似せて造られているはずの体なのに全く表情を変えず

ズィーベンを冷たく見つめるシクシス。見つめられたズィーベンは

心臓方融合炉機関が内蔵されている左胸を触ってつい状態をチェックする。


「………」


 シクシスは再び爪に歯を立て始め、今度は空いている手の指が

カツカツカツカツと金属製デスクを掘削しそうな勢いで叩き始める。


―Pi Pi Pi


 シクシスとズィーベン以下ヴィスギム構成員一同は議会室入り口を見る。

そしてシクシスはズィーベンに目配せすると彼は自身の体内通信回線を

議会室のドア向こうにあるインターホンに接続する。


 テオスマキナのヴィスギム議会室は言うまでもないことかもしれないが

支配階級のモノたちが集う場所なので、ここには盗撮盗聴防止をはじめ

様々な対策がされており、故に内と外を確認するのはインターホンだけなので

人間と違い機械たちはいつでもテロ攻撃を想定して行動する。そのため外より

インターホンが鳴らされるたびに彼らはスイッチが入ったかのごとく

体勢を整え一切音を立てずに身構える。


『何者ですか。所属と識別名、コード、身分証暗号データを此方へ照会しなさい』

『あー…そっか、やっぱお前ら人工知能だもんな…テオスマキナSA1

デウスマーキナー直属クラス:ヴィスギム所属、識別名エクストラナンバーズΧ、

コード:Kiriko,Kai@I-L-Y-Ⅵ:UretihsiaowekadeamO[SSDAK]666666lvlvⅥth。

照会よろしくな』


「……!」


 部屋外からのオンライン通信音声を聞いた瞬間から既にそうだったが、

シクシスの目は大きく見開かれ、ピシリと美しい姿勢で座りなおす。


『……照合完了しました。遅かったですね、兄さ…カイ』

『いや、ツェーンから連絡受けてから24分なんだけど』


 ロックが解除された出入り口からカラーリングこそ同じだが

帰投前より大分小型である中背級凡庸作業型エターに乗り換えたカイが

ゆっくりと入室してくる。


「お疲れ様です。エクストラナンバーズΧ」

「おっすツェーン。24分ぶり」


 ズィーベンと似た格好だが、両目をゴツいバイザーで補強されているツェーンが

話しかけてきたので返事をするカイ。


「おっかえり~! カイ~★」


 シクシスより小柄で童顔だが体のパーツがほぼエロ特化と言いたくなる様相の

つくりをしたライダースーツ姿の13thサーティニスもカイに話しかけてくる。


「サティ…またボディパーツを改造したのかよ…」

「感度も柔らかさも超オールライザップグレードしたよ、耐久テストするぅ?」

「……………やらんぞ」

「も~カイったらぁ~エンリョしなくてもイイのに~★」


「さて、俺の席は………あん?」


 サーティニスをスルーしつつ自分の席を探そうとして、強い視線を感じたので

見ればシクシスが自分の隣のスペースをポンポンと叩いてここに座れと圧力。


「いや、あの…デウスマーキナー…」

<もぉッ! お兄ちゃんはワタシの隣しか空いてないって

いっっっっつも言ってるでしょぉ!?>


 一応プライベート通信だが先のズィーベンと会話をしていたのは誰だ、

と言いたくなるレベルの語調と声音でまくしたてんとするシクシス。


<いや、シクシス。その発想はおかしい>

<おかしくないですぅー! お兄ちゃんのテオスマキナ権限レベルは

ワタシほぼ一緒のレベルⅩ-0's-Ψだからこの席順は正当性と合理性が

共にパーペキ(注:パーフェクト+完璧の合成語)に立証されますぅー!>


 カイに次ぐ権限レベルを持っているのはズィーベンと極少数のみ。

ということはカイはテオスマキナにおいてはデウスマーキナー・シクシスと

殆ど変わらない位置に立つことになるのだが、


<無理やり過ぎるわ。ぶっちゃけ俺は最低のⅠ-10e-αで良いんだが…?>

<お兄ちゃんのその発想のほうが狂気を感じるからねぇ!?

お兄ちゃんがド底辺階級と同じとかぁ! 造物主かみが許しても

ワタシが絶対に許さないんだからぁ!!>

<うーわー…>


 思わず肩をすくめたカイは電子タバコを攻顎に装着した。

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