11 もう一度
翌朝、結局一睡もせずに考えに没頭していたクラウは、いつもより早い時間に寮を抜け出し、森へと出かけて行った。
澄んだ空気の中、思い切り深呼吸する。すると、少しだけ心のもやもやがすっきりしたように感じ、足取り軽く広場へと向かった。
毎日聞いても飽きることがないのか、観客の妖精たちはいつもより早いクラウの訪れを喜んで、朝もやが残る空を楽しそうに踊りまわっていた。そのうちの一体がクラウの憂い顔に気づいたのか、心配そうに手を握って顔を覗きこんでくる。
「大丈夫だ。ありがとう」
心配ないと言えば、彼女は恥ずかしそうに笑って、元気が出るおまじないだと祝福の言葉を送ってくれた。
彼らが過ごす場所は、いつだって深い優しさにあふれていた。そんな無償の慈悲に返せるものは、彼らが愛してやまない音色を届けることだけ―――
どれだけ人の世界が暗い底に落ちようと、彼らの存在がある限り世界は光に満ちているのだと、クラウは世界のまぶしさを感じながら目を細めた。それからいつも以上に丁寧に、感謝の気持ちを込めて演奏する。
やがてくるくると嬉しそうに舞いながら現れたプーラが、クラウの期待通り一つの手紙を持って膝の上に座っていることに気づく。いつもなら皆が去ってから目を通すことにしているのだが、今日は許してくれと周りに謝って演奏の手を止めると、クラウは一人仲間から離れた場所に立って手紙を開いた。
【 クラウへ―――
あなたが何を選ぼうと、私はあなたの選択を信じています。
でも、これだけは忘れないで、クラウ。
どんな選択だろうと、世界に、人に、何より自分自身に、ちゃんと胸を張って自慢できる道を歩んでください。それはきっと、あなたの人生にかけがえのない絆と幸せを運んできてくれるから。
大丈夫、あなたならきっとやり遂げ、貫き通せるわ。
だって、私とあの人の息子だもの―――― 】
「…やっぱり、適わないな」
遠い場所にいながらもちゃんと道を示してくれる母に感謝し、クラウは澄み切った空を仰ぎみた。
―――― 未来の形など誰が決めた?
未来は未来であって、必ずしも決まったものではないはずだ。
ならば、己が望む形の未来へ進むよう、あらゆる手段と努力を講じればいいだけの話ではないか。
「…はい、かあさま。必ずやり遂げ、守り通して見せます―――」
母に誓うその顔は、迷いの吹っ切れた清々しいものであった。
「プーラ!君にもう一つ、頼みがある。これを今すぐ、彼女に届けてくれっ!」
そう言って、クラウはあらかじめ伝言を書きつけてあった紙をプーラに投げてよこした。
説明せずとも賢い彼女はちゃんとその意図がわかっているらしく、風に乗って飛んできたそれを受け取ると、とびっきりの笑顔と共に頷き、空間の向こうに消えていった。
女子第二寮―――
まだまだ学生たちは睡眠の中にある静かな寮内のある一室に、クラウから預かった伝言を手にしたプーラが空間を割って姿を現した。場所は東の41号室。カーテンが閉じられた薄暗い部屋を勝手に移動し、ベッドの上を覗くと、かわいらしい寝顔が二つ―――
プーラは、そのうちの一つの頬をぷにぷにと突っつくと、早く起きるように促した。
『んむ?』
何やら慌ただしい気配に閉じていた目を開いたのは、同じく精霊仲間のアウラであった。寝ぼけ眼でぼうっとプーラの姿を見つめ、首を傾げる。どうしてここにいるのかと問えば、プーラがとびっきりの笑顔でアウラに秘密の話を耳打ちした。
『ほんとう!?』
聞こえた内容に、眠気が吹っ飛んだのか、アウラを大きな金色の瞳を真ん丸にして喜んだ。
『キラ!起きて!はやくぅーーー!』
『…ん、なぁに?アウラ…もう朝?』
『キラ、キラっ!はやく起きて!は~や~く~!!!』
アウラはじれったいと足を踏み鳴らし、ベッドの周りをドタドタと駆け回り、それでもキラがぐずる様子に眠るキラの肩を遠慮なしにバシバシと叩き起こした。
『…?も、もう、何!?うるさくしたら、皆に迷惑でしょう?』
下の階の人に迷惑だから部屋を走るなと、キラは眠い目をこすりながら起き上った。
『キャー!キラっ、はやく!急いでっ』
ニコニコと、いつも以上に上機嫌なアウラは部屋中を駆け回り、踊り、キラに急げと叫んでいた。
『ど、どうしたの?アウラったら、何をそんなに慌てて…?』
訳が分からず戸惑っていると、プーラがふわりとキラの前に降り立ち、預かった紙を差し出した。
『え…?あ、あなた、もしかして、精霊さん!?』
信じられないと唖然と固まるキラにニコニコと微笑みながら、プーラは、早く受け取るようにとキラに促した。
『これを、私に…?』
プーラがそうだと力強く頷く。
キラは訝しながらも、そっと受け取り、目を通した。
[ 森で待つ クラウ――― ]
『う、うそ………』
キラは、自分が見ている物が信じられず、これは都合のいい夢だと否定した。
きっと己の願望が見せた夢に違いない。
なのに―――
『キラ!行こう!』
アウラが満面の笑みと光を放って、手を差し伸べてくる。
その横でプーラが、大丈夫だと語りかけるように優しい笑みを浮かべて、窓の外を指差す姿はどう見ても現実に思えた。
『ほんとに…?夢じゃ、ない?』
『ないよ!だから、キラ、行こう!』
『で、でも、待って!私、着替えて…それに頭だって、寝癖がっ!』
『そんなのいいの!はやくぅ』
アウラがじれったいとまた盛大に地面を踏み鳴らしてキラの手を引いた。そのまま四階の窓から飛び出そうとする様子に、キラは冗談じゃないとおじけづく。
『や、やだっ、アウラ!こんなところからでるの!?無理だよ!』
腰をひいて首を振るキラに、アウラは何がだめなのかと首を傾げた。それから自分たちのようにキラは空中に浮いたりできないのだと気づき、ポンと手を叩いた。
『大丈夫!』
そんな自信満々な返事と共に、アウラはくるりと舞うと、あっという間に結界で一階までの道を作ってしまう。まだ薄暗い中、アウラとプーラに急かされ、キラは淡く光を放ちながら続くガラスのような道に恐る恐る足を乗せた。
『はやく、キラ!』
『ま、待ってったら!』
一歩、二歩と、じりじりと進みようやく結界の道が頑丈だと理解すると、一人先に行こうとするアウラを追って一階まで駆け下りた。
プーラがこっちだと手招きする。その誘いを見失わないように走りながら、キラは森の中へと入っていった。
普段なら一人では近づけない森でも、今はどこか別の世界のように見えるのはなぜだろうか。キラの目には森全体が輝き、息づくように色めいて見えた。
そして、どこからともなく妖精たちが代わる代わる現れ、走るキラと並行して飛びながら急げと応援してくれる光景は、現実から切り離された歌劇のようだった。
―――本当に、これは夢じゃないのかしら?
早々に自分が今どこを走っているのかもわからなくなり、ふわふわと足元がおぼつかない。
それでも、木々が、風が、世界が「進め」とささやくままに、キラは走った。
『はあはあ…この、音―――』
やがて聞こえてきた音色は、キラが決して忘れることのなかった優しい音であった。
広場の中心で、多くの妖精達に囲まれながら笛を吹く背中が見える。すると、堪えきれなかったのかアウラが一足先に嬉しそうに飛んでいってしまった。
キラも、勢いのまま相棒に続こうと踏み出そうとした。
しかし、一瞬の戸惑いと捨てきれない恐怖に足が止まってしまう。
―――― もし、また拒絶されたら…?
そんな想像をしてしまったたら、キラはどうしてもそれ以上近づくことができず、でも戻ることもできず、結局、近くの木の影に足を抱えて座り込んでしまった。
やがて何度も繰り返し聞こえた笛の音が途絶えると、穏やかな風の音だけが残り、森の雰囲気がありふれた現実へと戻っていく。と同時に、地面を踏みしめ自分に近づいてくる靴の音が耳に届き、キラは身体を緊張に強張らせた。
「どこか、具合が悪いのか?」
静かな問いかけは、一日たりとて忘れることのなかった声で、顔を見ずとも誰のものかなど明白だ。しかし、キラはどうしても顔を上げる勇気がわかず、ただ首を横に振ることしかできなかった。
「…そんな土の上に座らないほうがいい。服が汚れるぞ。あっちなら岩場があるから…」
『キラ、一緒にいこ?』
アウラがキラの手をつかんで誘うが、やはりキラは頑なに首を振るだけであった。
「…怒っているのか?」
どこか気まずそうな声は、キラの様子を探っているように聞こえた。
「僕が初対面のふりをしたこと、君は、怒っているのだろう?」
しかし、キラはそうじゃないと、先ほどよりも強く首を振った。
「なら、一緒においで」
『っ……』
泣かないで頑張るとつい昨日リオと約束したはずなのに―――その優しい声色にキラの瞳が熱を持ち、じんわりと視界が歪んだ。
立つようにと手をとられ、その体温に触れた瞬間。耐え切れず、今日まで押し殺してきた感情が一気にあふれ、涙となって零れ落ちていった。
不安と安堵、戸惑いと嬉しさ、せめぎ合う感情が幼い胸を突く。
ぽろぽろとこぼれる涙をそのままに、キラはクラウの手にすがりつきながら声を上げた。
『わたしの、声っ……まだ、届きますかっ―――』
二人の視線がちゃんと交わったのは、あの再会の時以来、実に二十日ぶりであった―――
◇
人が人に抱く感情の大半を、誠吾は切り捨てて生きてきた。
愛情然り、友情然り、劣情、温情、同情、人情…―――――
それらの感情は、誠吾が生きていく過程では必要のないものだと、そんな寂しい結論のまま置き去りにされたもののはずだった。
しかし、ただ一つ―――
誠吾が二十四年という短い生涯で、ずっと抱え込んできた感情がある。
命が尽きる最後の瞬間。生と死の狭間で悟ったものは、ずっと見えないように胸の奥に仕舞い込み、あふれ出さないように蓋をしたはずの感情だった。
孤独の隣にある『寂しさ』を、誰よりも知っていたはずなのに、なぜ気づいてやれなかったのか。
クラウは涙に濡れたキラの瞳を前に、自分のとった行動を改めて恥じたのだった。
「君の気持ちを理解しないまま、僕の都合だけを押し付けてしまったこと、まずは謝らせてほしい」
静かに泣くキラを広場中央の岩場の上へと案内し、クラウは最初に謝罪の言葉を口にした。
「僕にはどうしても譲れないものがある。それは、僕がここに存在する意義と言ってもいいほど、大事なものだ。そのための苦労や罪なら、どんなものでも受け入れるつもりでいた。
けれど―――昨日の君を見たとき、僕は、わからなくなったんだ」
それは戸惑いでもあり、怒りでもあったように思う。
キラが自分に縋る理由を、クラウはちゃんと理解していた。絶対にいないと思っていた人間が目の前に現れれば、誰だって縋りたくなるだろし、その気持ちを否定はしない。
だが、クラウがキラと何かしらの関係を持つということは、同時に大きなリスクを伴うことでもあるのだ。
キラは他でもないルクセイアの人間であり、この学校で誰よりも聖宮に近い存在だ。それだけでなく、アリーシャの弟であるグレンディスとも親しい間柄とくれば、クラウが最も接触を避けるべき人物と言っても過言ではない。
入学式のあの日、キラ達の姿を見たクラウが真っ先に警戒したのも事実だ。
それは別にキラが好きだとか嫌いだとかいう感情的なものではない。ただクラウは良くも悪くも、己が進む道にとって都合がいい存在かそうでないかの損得でしか判断できない男であった。
そしてキラは、十中八九、クラウの行く道に大きな不安をもたらす存在になることは明らかだった。
「一度誓ったことを破ることは、僕はどうしても許せない」
父親を連れ帰るとアリーシャに約束した。
母親を守るとガルフに誓った。
そして、そのための努力を惜しまず、進み続けることを自分自身に誓ったのだ。
それでも万が一、アリーシャの所在がルクセイアにばれた時は、クラウは何よりアリーシャの意志を尊重し、彼女が望む未来を後押しすると決めていた。アリーシャがルクセイアに戻りたいと言うなら里の皆を説得する側に回るだろうし、帰りたくないと言えば、エルフの皆と共に守り抜く。その結果、たとえグレンディスたちルクセイアの人間と敵対することになろうとも、クラウは己の誓いを破るつもりはなかった。
だが、現実にそうなった場合、言い方は悪いが、クラウにとってキラの存在は足かせになる恐れがあった。
なにより一番傷つくのは、クラウと仲間の間で板挟みになるキラ自身のはずだ。
近寄れば近寄るほど傷つけるとわかっていて、どうして仲よくなろうなどと思うのか。ならばいっそのこと、初めから拒絶してしまえばいい。
そう判断した自分に、後悔などなかったはずだったのに―――
昨日、リオに向かってあきらめたように笑ったキラを前に、クラウは説明のつかない衝撃を受けたのだった。
――――なぜ、そんな顔で笑えるのか
その理由を、クラウは昨晩ずっと考えていたのだ。
リオが言葉を読み間違えたあの時、キラは仕方がないことだと口をつぐんだ。
そうやって今まで、己の言葉をどれほど飲み込んできたのか―――
同じ虚しさを、クラウは誰よりも知っているはずだった。
誠太郎と小百合に向けた誠吾の言葉は、いつだってその身体をすり抜け、宙に浮いたまま静かに散っていった。そして、いつしかその行為に意味を見つけられず、言葉を交わす努力を放棄したのは、誠吾自身同じではないのか。
言葉が届かない虚しさを誰より知っていたはずなのに、反対を押し切って聖宮を飛び出したキラの覚悟を、クラウ自身が拒否したのだ。
「最初会ったときに言った通り、僕にはいろいろと複雑な事情がある。君と初対面のふりをしたのもそのためだ。様々なことを考慮した結果、己にもたらされる損得だけで君を遠ざけることを選んだ。決して、君のことが嫌いだとかそういった感情からとった行動ではないし、僕の行動が君に与える影響など大したものではないと勝手に判断した。だから、僕自身、君を傷つけるつもりはなかった―――とはいえ、それはただの詭弁だ。
だから謝らせてほしい。すまなかった。
…まさか君がここに来た理由が、僕にあるとは思わなかったんだ」
『…え?』
「僕に、会いに来てくれたんだろう?」
一拍の後、キラは言われた意味を理解したのか、一瞬にして顔を真っ赤にして慌てた。
『な、なんで、そのこと…!?』
「…すまない。君が昨日ライラックと話しているのを聞いた」
クラウが若干罰の悪い顔で正直に言うと、キラはますます顔をゆでだこのように赤くして狼狽えた。
『あ、あの、わたしっ…!』
「せっかく会いに来てくれた君に、僕はとてもひどい態度を取った。そのことを、改めて謝らせてほしい」
『ちがっ…ちがうの、謝らないで!悪いのは私の方なのっ!』
律儀に頭を下げるクラウに対し、キラはそうじゃないと何度も否定した。
また頬を伝っていく涙をそのままに、しゃくりあげながら必死に言葉を紡ぐ。
『…私、本当はダメだって、わかってのにっ…!みんな、自分のために一生懸命頑張ってて、でも、私、どうしても、あなたにもう一度あいたくてっ、すごくわがまま言って…。それで、いっぱい、いろんな人に、迷惑かけて、心配かけて…リオくんも、エルも、ベイン様もみんな私のことを想って、考えてくれてるって、わかってるのに…。でも、わたしっ』
後悔したくなかったの―――
くしゃくしゃの顔で泣きながら吐き出されたその言葉を、クラウは真正面から受け取った。
『ちゃんと、覚悟してここに来たつもりだった…!ちゃんと、わかってるつもりだった…!でも、あなたに、初対面だって言われて、ああ、迷惑だったんだって、その時になって初めて気づいたの…。わたし、そんなこと全然思いもしなくて…。自分の気持ちばっかりで、あなたを困らせるなんて、これぽっちも思わなかった自分が、すごく、恥ずかしかったのっ。ごめんなさい!』
「謝るな。理由はどうであれ、君は君なりの努力をすると決めたのだろう?ならば、恥じる必要はないし、自分を卑下する必要もない」
『で、でもっ…』
「―――なら、そうだな。
君がここにいる理由が僕にあるというのなら、僕が君を『肯定』しよう」
『え…?』
「君は決して卑怯者でも、臆病者でもない。
――― 会いに来てくれて、ありがとう」
「う、うぅっ…」
思いもよらない優しさに触れ、キラの瞳から涙があふれて止まらなかった。
「…そんなに泣くな。目が溶けるぞ」
慰めるつもりで言ったのに、やっぱりうまくいかないなと、クラウはキラの頬を袖で拭いてやりながら困り顔で小さく笑った。
「情けないことだが、僕も君もまだまだ未熟だということだ」
一度大人になった経験があるのに、結局何もわかっていなかったのだ。
人ひとり笑顔にできない人間が、世界の悲しみを救おうというのだから、とんだ笑い話だ。
誰かの幸せの裏で誰かが泣く世界が、本当にあるべき世界の姿なのか。偽善と強がりの上に掴んだ幸せに、いったいどれほどの価値があるというのか―――当然、クラウには答えなどわからなかった。
しかし、少しでも己が望む理想に近づくために、努力を惜しまず模索し続けることはできるはずだ。
「未熟者同士、これから一緒に学んでいけばいい」
『うぅ、ひっく…は、いっ…!』
「…おい、どうすれば泣き止むんだ?」
キラの涙が一向に引っ込む気配がない様子に、クラウが周りの仲間に助け求めると、にこにこと笑みを浮かべたプーラが一つアドバイスをくれた。
「…そうか、そうだな。じゃあ、初めからもう一度やり直そう」
『…?やり、直す?』
真っ赤な瞳でじっと見つめ、首を傾げるキラに向かって、クラウは手を差し出した。
「――――僕の名前はクラウ・オーウェン。君は?」
『あ…私、キラ!キラ・ウェイクストンです!』
「良い名だ、キラ。やはり人目があるところでは大した会話はできないが。それでも良ければ、改めて僕と、友達になってくれないだろうか?」
『!!!っ』
それは他でもないキラの願いだったはずだ。なのに、いざクラウから言われるとどうしていいか分からなくなってしまい、キラは自分に向けて差し出された手をじっとみつめたまま固まってしまった。
だが、あとからじわじわと嬉しさがこみ上げ、頬がゆるゆると緩んでいく。
『ほ、ほんとに…?夢じゃ、ない?』
「ああ。世界に、人に恥じない道を歩むと、かあさまに誓った。
君がその優しさのせいで心を痛める未来にならないよう、君が僕の隣で笑って過ごせる未来を目指す―――
その一歩として、僕は君と近づくことを望むんだ」
『……はい!よろしく、お願いします!』
『やーん!僕も、僕も~!!!』
クラウとキラが固く握手する姿に、アウラは自分を仲間外れにしないでとあわてたように飛んできて、その手に飛びついた。
変わらない相棒の姿に、ようやくキラの顔に笑みが浮かぶ頃、風に乗って精霊のささやきがクラウの耳に届いた。
―――― 『世界に根付く 絆の導
響く福音に夢みるは 花咲く永劫 万の煌めき
狭間の地に眠る世界の意志に 代わる御霊に
我ら 世界の再生を願う
応えるは有限の希望か 無償の追憶か
もう一度と囁く声 残る未練の愛ゆえかな』 ――――




