終端抵抗/未来モンスター・カリュド 51: 契り 最後の決め台詞
51: 契り 最後の決め台詞
コクーンの造り出した人工の朝日だが、それでも光は私達を祝福してくれている、、サブリナは満ち足りた気持ちでそう思った。
昨夜から思っていた事だが、響児とのセックスはまるで同性愛の営みのようだった。
美しいサブリナは、過去にそういった軽い経験を何度かしていた。
けれど、それらの百合的なセックスと決定的に違う部分は、響児には彼女を貫くものがちゃんとあったという事だ。
サブリナは、横に寝ている響児の少し巻毛の黒い髪に触れてみた。
それは彼女がずっとしてみたいと願っていた事の一つだった。
そして、その自分の手の甲に、一センチ程の直径の赤い薄皮が張っているのを、サブリナは見つけた。
これが、昨夜愛し始めた時に感じた手の痛みだったんだわ。
響児は此処に彼のトシュタット器官を集中して、SEXの最中に変態しようとする私を制御してくれていたんだ。
私だけを満足させる為に、いえ、私を傷付けないために。
昨夜の彼は、どんな想いで、いたのだろう。
響児は自分の背中に冷たいものを感じて目覚めた。
そしてそれがサブリナの涙である事にすぐに気付いた。
「どうした?恐い夢でも見たのか?」
「いいえ。私が今までに見た最高のいい夢よ。あまりに幸せだから涙がでるの。」
「、、どうだった?満足したかい?」
「ええ。貴方は?」
「最高だったよ。すまない。こんな時、映画だったらもっと気の効いた台詞を男は言うもんだが。」
「いいえ。貴方は最高のアクターだわ。」
響児はそうするのが、久しぶりだというように、照れ笑いの表情をぎごちなく浮かべた。
東洋の美女といっても良いようなその顔に、懐かしい響児の顔の面影が浮かび上がった。
「お腹がすいたわ。食事に行きましょう。」
「いいんだ。昨日の内にルームサービスを頼んである。もうすぐの筈だ。悪いけどサブリナ、服を着て、食事を受け取ってくれないか?」
「いいけど貴方は?」
見計らったようにチャイムが鳴らされる。
「このままでいる。どうせ服を着ても、だいなしになるから。」
怪訝な顔をしながら、ベッドから抜け出しかけるのを止めたサブリナ。
その可愛らしいお尻を、軽くひっぱたいて、響児は明るい声で言った。
「いいから、いいから。頼むよサブリナ。」
ルームサービスの朝食を取りながら、サブリナは目のやり場に困っていた。
響児の裸体は、美術館にある古代ギリシア彫刻がそのまま動きだした様なものだったからである。
ただし、そのモチーフは両性具有者だったが。
コーヒーを飲みながら響児が真顔で言った。
「君が昨日、病院に駆けつけたのは、本当は融合緩和剤の事についてだろう?」
「その話は、今はよして。幸せな気分を台なしにしないで。」
「そんな訳にはいかないよ。よく聞いておいてくれ。俺は融合緩和剤を今後、誰にも使わせるつもりはない。だがもしもの時の為に、保険をかけておきたいんだ。」
「もしもって、、。」
「俺は、今から時を遡る。今日に至った全ての原因を根本から、消去してまわるつもりだ。それが出来なかった時の保険さ。俺がいなくなった後の戦力は、君だけでは到底たりないからね。」
「駄目!」
「君も乱望と同じなのかい?彼は運命は変えられないと言った。ゴドーが死んだのは、ジャックに殺されたんじゃなくて、時の復原力がそうしたんだって。俺は、だったら何故あんたは戦うんだと言ってやった。」
「絶対に駄目!私が嫌なのは、そんな理由じゃないわ。行くなら私も連れていって。」
「駄目だ。俺が駄目だというのも、君と同じ理由だよ。」
響児は立ち上がって、窓際に歩去った。
人工の朝日が強く差し込んできて、響児の姿をシルエットに変えた。
やがて男のシルエットは、完全に女の形になり、光の中に薄れ始めた。
「今度逢うときも、きっと俺は君に一目惚れさ。」
響児の最後の言葉は、映画に惚れた映画屋らしい、決め台詞だった。




