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終端抵抗/未来モンスター・カリュド 42: 強襲 良き天舞を!

   42: 強襲 良き天舞を!


一階の客達は、凍り付いたように動かない・

 ガタン。

 闇の中で、椅子が倒れた音がした。

 客が少ないホールの端だ。

 二階のステージから、その音を頼りにして、マシンガンが掃射される。

 同時に、椅子が倒れた場所より数メートル離れた闇から、ジィッツという射出音を発して光線がほとばしり二階に吸い込まれた。

 ドサッ。

 何かが、二階のステージから落ちる。

 光線の射手は、もう既に、先ほどいた位置からその気配を消し去っている。

『あの白竜さんって人。恐ろしく動きが速い。あれじゃ相手は射出光を辿って反撃する事も出来ない。』

 Gが感心した様に言った。

『驚いたな、無鉄砲な奴だ。あいつは、やることも俺の若い頃そっくりだ。』

 白竜は、本気で驚いているようだった。

 普通なら観客が巻き添えになる事を配慮して、あんな攻撃は出来ないと考えたのだ。

 その時、ホールの明かりが回復した。

 アルトゥーロは、既に、白竜と呼ばれる男によって、羽交い締めにされ、こめかみに光線銃の銃口を当てられていた。

「ボスの渦紋は、今、何処だ?」

 若き白竜は、頭に巻いたバンダナからこぼれ落ちた長髪を首を振ってはね上げながら、アルトゥーロに詰問した。

『聞いたか、G。奴は今、(ボスの渦紋)と言ったぞ!』

 それには答えずGは、肉声で若い白竜に怒鳴った。

「白竜!上だ!」

 若き白竜は、アルトゥーロの首を左腕で締めあげたまま、振り向きざま二階に光線銃を射った。

 二階のステージに残っていた最後の男は、胸部から煙を上げ、機関銃を抱いたまま、ゆっくりと床に落下していった。

「サポートヘリの奴ら、またドジリやがった。何が二人だ。もう一人いたじゃないか。」

 そうぼやきながら、白竜は、自分に声を掛けてくれた女性のテーブル席を見た。

 そこには、もう人の姿は無かった。

「畜生!美人だったのに。」

 白竜は、犯罪への怒りとは別の感情で、銃口をアルトゥーロのこめかみにゴリッと押し込む。

「そろそろ、この追いかけごっこは飽きてきた。もう、答えは、いいよ。終わりにしようや。」

「ヒィッ。言うよ。ボスは、丹仁ビルだ。」

「ありがとうよ、良き天舞を!」

 白竜は、そう言い終わると、銃把の一振りで、アルトゥーロを昏倒させた。

「ったく、こんな夜に仕事とはな、、早く片付けて、七面鳥が食いてぇ。」



 古風で巨大な総合商業ビルの前の公衆電話ボックスの中に、一組の男女が入っている。

 もちろん、二人揃って電話をかけているワケではない。

 その側では、浮浪者が酒瓶を抱えてうずくまっていた。

 通り掛かった老婦人が、電話ボックスの二人を見て、顔をしかめながら何事か呟いて行く。

 だがそれは、チナ・タウンの寒い夜には、良く見受けられる男女の光景である。

「このビルの最上階の居住区に、渦紋さんとフローレンスさんがいます。部屋の中には、人が入れるぐらいの大きな飾り壺が二つあります。その中に転移します。向こうに着いても、暫く様子を見て下さい。僕との会話は、テレパシーで。それと、決して渦紋さんにテレパシーで話しかけない事。守ってくれますね?」

 Gは、白竜より頭一つ背が低い、そのGが顔を寄せて見上げるように囁いた。

 電話ボックスの乏しい灯が、Gの顔を白く浮き立てている。

 Gの睫が、Gの涙袋に影を落としている。

 白竜は、その顔を見て、何故かドギマギしながら頷き、ボックスの外に出た。 

 浮浪者は、電話ボックスから出てきた男女に、たかり始めた。

「すんません、旦那。ワンコイン恵んでくだせぇ。」

 男の連れの女が優しく微笑み、爪の生えた黒革手袋で、数枚コインを摘むと、それを浮浪者の掌に落とし込んだ。

「これじゃ多すぎ、、、。」

 浮浪者が、自分の手の中のコインから目を離し、顔を上げた時には、もうそこには誰もいなかった。

「天舞神祭の夜には、不思議な事が起こるもんじゃ、、、、。良き天舞を、、。」



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