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終端抵抗/未来モンスター・カリュド 33: 相談 念仏恐竜の夜

   33: 相談 念仏恐竜の夜


 砂漠気候から一転して、和音が引き寄せた熱帯世界の夜は湿気を含んで蒸し暑かった。

 体内に体温調節器を装備していないパスカル神父は、プロテクトスーツに守られていない顔面から止めどなく吹き出る汗をぬぐい去る事を、半ば諦めかけていた。

 それでも1号車へ特別に設けて貰った「懺悔室」の中では、他の人間達のようにスーツの胸元を緩めるだらしのない格好は出来なかった。

 後、もう少しは、第2次浄土惑星調査隊の為に、この「懺悔室」を開放しておくつもりだった。

 時折、四台のアッタカーの側を走り去る巨大な黒い影のブツブツと言う鳴き声以外は、物音一つ無い静かな夜である。


 円陣を組んだ四台のアッタカーの後部の天蓋が開き、そこからそれぞれの号車から三本ずつ巨大な金属製のポールが打ち出された。

 ポールは四台のアッタカーを取り囲む柵の様に、野草がぼうぼうと生い茂る地面に突き刺さった。

 更にアタッカーの天蓋は一抱え程の大きさのフラフラと飛ぶ円盤を吐き出してからその口を閉じた。

 それらの操作指示をアッタカーのリビングスペースで終えた黒木は、通信装置のスィッチを切った。

 アタッカー同士の定時連絡の時刻が迫っているのにだ。

しかも今度の定時連絡では、黒木が明日の指示をしなければならない。

「電磁バリヤーとは随分、古い物を持ち込んできたものだ。それにあのホバーも博物館でしかお目にかかれない代物だ。このアタッカーを含めて旧式の兵器が多いのはどういう訳だ?」 

 白竜は黒木が通信装置を切ってしまった事を気にしながら言った。

「おや、気づいていなかったのか?無理もないか、あんたは途中でリアタイヤしてたからな。地球では浄土の影響や干渉に対して、ああいった旧式の兵器類が有効だったんだ。俺の会社では、十年代以前の兵器を使用させている。現象の技術が混じっているか、原子力をエネルギーに使う最新兵器は、時として浄土相手には兵器としての有効性を失いやすい。理由は、判らないがね。」

「その事を、各国の対浄土防衛責任者は知っているんだろうな?」

「無論さ。世界各国のお偉いさんが、わが黒木警備会社に頭を下げて来たからね。全て教えて差し上げたよ。だが教えてやっても、それを有効に応用出来る国は少ないようだがね。例えば新品のBBGを、祝詞をあげ御払いしてから使うとかな、奴らはそれを冗談だと思ってる。浄土のスパーテクノロジーに目を丸くしながら、それでも自分たちの科学技術の方を信じている、頭の堅い連中さ。」

 黒木は昼間の白竜とのいざこざからもう立ち直っている様だった。

 アタッカーの外で、先ほど張り巡らせて置いた電磁バリアーに何かが引っかかったのか、物が焼け焦げる音がして、ついでブツブツという奇妙な鳴き声が聞こえた。

「念仏恐竜がひっかかっている。」

 ホバーから送られてくる少し揺れる映像を見ながら、唸る様にして、パスカル神父が言った。

 念仏恐竜という呼び名は、渦紋に教えて貰っている。

 もちろん、渦紋はその名を適当に付けただけだ。

「神父、あまり外の景色は見ない方がいい。狂ってしまいますよ。それと我々の防衛網は今の所、完璧に作動している様だ。今夜の見張りは、私と隊長でやりますから早くおやすみなさい。」

「、、ああ、そうさせて貰うよ。」

 力なく答えながらパスカルは白竜の言葉に従って、リビングスペースの奥の睡眠用コクーンに姿を消した。



「・・・さあ、何の相談だ?もう神父はいないぜ。なぜ通信を切った?二度手間だろ?」

「他の連中には聞かれたくない話があるんだ。オープンチャンネルの設定を今更、変えられない。あんたとの話が長引いたときに困る。、、何故、俺があんたを同じ車に乗せたか判るかい?俺はこれでもあんたの判断能力を高く買っているんだ。相談に乗って欲しい。」

 黒木は、用心深いというより、本質的は気の弱い男なのだと、白竜は今更ながらに思った。

 今や世界有数の黒木警備保障も、その母体は親から引き継いだものだ。

 黒木には才覚はあるが、本当の意味でのタフさがない。

 それは先のニルスでの戦いで判っていた。

「これからの日程についてなんだ。実はアッタカーに記憶させておいたΩスクワッドが作成した地図が役に立たなくなっている。Ωスクワッドは、あの丘で休息を取った後、約三時間で(仏陀の峡谷)に到着しているんだが、我々はすでに和音に導かれて違う場所に来てしまっている。」

「クラインの壺のせいだ。和音程度の意志力の干渉で、突破出来るものじゃない。何かが俺達が困るのを見て楽しんでいるのさ。しかしどのみち、宛の無い旅なんだろう?本当の事を言えよ。すべてがはったりだったと。」

「宛はある。Kやハギスが発見した特異点と、彼らが行くのを断念した機械都市だ。そこで浄土の謎は解ける。いや、解けるはずだ!」

 黒木が熱病に犯されたように狂おしく言った。

 普段は冷静な筈の黒木の急激な意識の乱れだった。

 浄土は静かに、黒木にも影響を与えつつあるようだった。

 白竜は暫く黙っていたが、やがて決心したように口を開いた。

「明日の朝、Ωスクワッドの残したデータを俺と渦紋に渡せ。俺と渦紋で、いや後、何人か必要になるかも知れないが、、。とにかくデータを俺達の頭に複写して、どれかの地点を呼び寄せて見る。みんなにはその段取りをお前が指示してみせればいい。リーダーらしくな。但し、大道和音は、この計画に参加させるな。二度と彼女にパミータを使わせない。それが俺の条件だ。」

「判った。」

 黒木俊介の顔が輝いた。



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