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終端抵抗/未来モンスター・カリュド 27: 因果 懐かしの怪獣映画

   27: 因果 懐かしの怪獣映画


 墜落したツンリマを支援すべく、床に這い蹲っていたカローンが、腹からむき出しの骨付きの筋肉を吐きだして、それを支えに反り返る様に起きあがった。

 ゴドーの落下地点に向かって走り出そうとするカリュドに、カローンの波動が射出される。

 カローンも又、短い距離なら、イカのジェット噴射の要領で波動を飛ばせるのだ。

 一瞬、カリュドは眼が眩んで、その場にうずくまった。

 カリュドのトシュッタット器官が痙攣を起こしている。


「響児!早くゴドーの所に行って!そいつは私達がやるわ。」

 その援護の声は、カローンの背後から聞こえた。

 サブリナ達だった。

 殱滅部隊が、続々とサルベージ船のフロアに乗船し始めていた。

『やめろ。俺が奴らの身体を簡単に打ち砕けるのは、接触した瞬間に、俺の波動を流し込むからだ。通常火器では歯がたたない。見た目程、たやすくはないんだ。』

 もしサブリナが、カローンによって人質に取られたら、自分は手も足も出なくなる。


 しかし響児は、カローンが送り付けて来る波動の中に、それを弱めようと意識的に織り込まれたもう一つ別の波動を感知して、全てを悟った。

 それは事も有ろうに、サブリナ達がいる方向から流れ込んで来るのだ。

 サブリナと響児、融合者同士の共感力で、二人は全てを理解した。

 響児は悲しい雄叫びを上げながら跳んだ。

 ゴドーの救出の為と言うより、この後起こるであろうカローンとサブリナの戦いを見たくなかったからだ。

 カローンの頭上を飛び越える前に、カローンが下から迫って来るのが見えたが、「何か」がそれを阻止した。

 響児は眼を閉じて、その「何か」を見ないようにした。



 その肉塊の周囲には、蝿がうるさく飛び回っていた。

 蝿は、あの猛烈な環境破壊をかいくぐって、本来与えられた姿を保持している数少ない生命の一つだった。

 蠅のたかったグロテスクな塊を見る者にとっては、疑似的な真夏の陽光を生み出すコクーン天蓋の輻射光が、恨めしく思えた筈だ。

 それは白日の元に見られるべきものでは無かったからである。

 ゴドーとジャックは、完全に解け合っていた。

 融合などという生優しいものではない。

 時を跳ぶため、存在を「緩めて」いたゴドーと、卵を産みつけていたジャックが、カリュドの波動によって、その命を絶たれたのだ。

 二つの死は完全に、そして無理矢理に混ぜ合わされていた。

 しかし、カリュドの眼差しの下、ゼリー状の血と肉に浮かんでいたゴドーの顔の眼が突如開いた。


「まだ生きていていたのか!ウィルスを俺に呉れ。もう君には用がないものだ!」

「、、お前に、ミスターハリーハウゼンの最後の遺言を伝えないとな。彼は今際の際に、自分の意志を継ぐ者に伝えてくれと、この私に最後の遺言を言い残したのだ。他ならぬ『時の矢の種族』のこの私にな。」

 カリュドの問いかけには取り合わず、ゴドーはいたずら坊主の様に片目をつぶりながら、仕掛けた罠を白状する口調で言った。

 響児は、又、ゴドーの真意が何処にあるのか判らなくなっていた。

「お前は、帝王と直接、関わりがあったのか!?」

「おやおや。ハリーハウゼンは、大恩人のこの私の名を、お前にも伝えていないのか?無理もないか、あの時は、ほんの3週間だけの滞在だったからな。しかし奴の映画には出たぞ。私が前の姿に戻ったら、お前も思い出すだろう。私の名乗り名は、ゴッドだ。ミスターハリーハウゼンに、人間が主導権を握る融合の仕方を教えた者だ。タイミングとワクチンだよ。君たちが融合緩和剤と呼んでいるのは、あのウィルスに対する一種のワクチンなんだよ。あの時はトシュタット・ライブラリィを構築しワクチンを生成するのに苦労したものだったがな、、今は楽しい思い出だ、、。」

 ゴドーからの波動がみるみる内に弱まって来ている。

「そんな話はどうでもいい!融合緩和剤はもうないんだ。ウィルスだ!肝心のウィルスは何処にある!」

「海の中だよ。私も驚いておる。何で保管してないんだ?トレジャーが着水した時点で増殖が既に始まっているようだ。あれは海水と出会って活性化するようだな。あれは、お前が想像している様な生易しい生命体ではないぞ。私がお前達に分かりやすいように、ウィルスという言葉で表現してやっただけだ。そんな得体の知れぬウィルスを、トレジャーが何故、この星に、わざわざ採集してまで運び込もうとしたのか、それが全く判らない。あれがやって来たら制御する方法はない。宇宙ウィルスに効く完全な免疫はない筈だからな。、、トレジャーを送りだした頃の人間はそんなに間抜けじゃない筈なんだが。大きな何かの意志に裏をかかれたのかも知れない。あれはトレジャーの外装あたりに、同化して此処にやってきたんだと思う。」

 途方もない話だった。

 『時の矢の種族』さえ知らぬ、別の「大きな意志」とは、一体なんの事だ?

「『時の矢の種族』は人間に融合して、元の人間をまるで車の様に運転する。お前なら判るだろう?その感覚が?それと同じさ。あれも実は『時の矢の種族』に乗っているんだろう。疑似遺伝子みたいんだな、、あれに、何の目的があるのか、、、神のみぞ知るって訳だ、、、、。だがキョウジよ。それでも本当に怖いのは、ウィルスじゃない。時の流れそのものだ。時の流れは人の心を変えて行く、、、。気をつけるんだ。時の流れに、、、それがミスター・ハリーハウゼンの最後の遺言さ。」

「時の流れ?待ってくれ、それはあんたが、これからやろうとしていた事に関係あるのか?」

 ゴッドは生き絶える前に、顔だけだったが、響児に「変態」をして見せた。

 、、、二十日鼠の顔は、ダストキングの「元からの顔」で、ゴッドのものではなかったようだ。

 それは、とても小さかったが、もう絶滅した「ゴリラ」そっくりの顔をしていた。

 思い出した。

 帝王ハリーハウゼンが、SFXで参加したリメイク版『キングコングの復讐』だ。

 確かキングコングが見せる悲哀に満ちた表情が評判を呼んだっけ。

 、、、派手なクリーチャーが出なかったから、興業成績はもう一つだったと聞いている。

 眼の前のゴドーの死に顔も、心なしか悲哀に満ちている様に、響児には思えた。



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