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終端抵抗/未来モンスター・カリュド 16: 百鬼夜行 人間の戦場は奴らの狩り場

   16: 百鬼夜行 人間の戦場は奴らの狩り場


 響児は、病室のベッドの中で、新しく手にいれた自分の身体の探検に夢中になっていた。

 目を瞑って、意識を肉体に飛ばせば、それが出来る。

 響児は、『時の矢の種族』が、自分の身体を自由に変形させる事が出来るのは、彼らが自分の体内をくまなく『見る』事が出来るからだと考えていた。

 「見る事が出来るもの」は、意識化でき、意識化できるものは、どんなものにでも変化させる事が出来る。

 今までのカリュドとの融合の時を経て、それがこの知的生命体に与えられた基本的能力なのだと、彼は理解したのだ。

 そしてティム・ハリーハウゼンが、『時の矢の種族』の融合者に、身体的な能力の高さよりも、想像力の高さを基準に置いたのは、その為だったのだと響児は気付いた。


 響児の病室には、幾人かの見舞い客が現れたが、この「内面への探検」以上に、興味深い興奮を彼にもたらしてくれる客人は、今の所、誰一人としていなかった。

 見舞客は、響児の心ここにあらずという風情と、あまりにそっけない対応に、不思議な顔をして病室を立ち去るのが常だった。

 九死に一生を得たジャックが、「響児への賛辞」と共に、今まで部隊中が響児を蔑ろにしていた事を謝罪しに来た時でさえ、響児は興奮する事もなく、ジャックが退室すると直ちにまどろみ始め、時を制御する細胞を『見る』事に没入していったのだ。


 エリザスの場合、あの「舌」の様な器官に、トシュタット器官は集中していたが、カリュドの器官は、彼女の身体のいたる所に潜在していた。

 しかもその一つ一つの器官が、エリザスの「舌」に匹敵するエネルギーを内包している事が判った。

 又、こうした行為を続けていると時より何かの弾みで、響児は『時の矢の種族』の世界を垣間みる事があったが、彼の今の頭脳では、その記憶を覚醒時まで保持する事はむつかしかった。

 ただ、その世界には、響児自身が今までSFXで作り上げてきたどの異形たちより、「凄まじき者達」が、ひしめき合ってるおぼろげな残像と、そこに奇妙な寂寥感ともいうべきムードが漂っている感覚だけは、心の中に残っていた。


 響児が次に目覚めた時、乱望の顔が彼を見下ろしていた。

「お目覚めかね?身体に損傷はないと聞いている。で、悪いが、明日から隊に復帰して貰う事になった。今度の相手は、沢西将軍だ。」

 乱望の人のよさそうな、ギョロ目がしばたく。

「彼は朱雀が始末したんじゃ、なかったんですか?」

 響児はベッドに起きあがって疑問を述べた。

 そんな話は、先に訪れていたジャックからも聞いていない。

「第三部隊は、死者こそ出さなかったが壊滅状態で逃げ帰って来たんだよ。完敗だ。警備網はなんなく突破したのだが、変身した沢西将軍自らに、部隊の半数が倒された。そのタイミングで将軍に援軍が来たんだ。人間相手にあれ以上、ドンパチはやれなかった。彼自身は無傷のままだ。だが徴兵制の方は、エリザスが死んだおかげで、我々がプッシュしている左派のゴーリニェが臨時の首相に収まったから、暫くは何とかなる。」

 乱望が徴兵制の事を口にしたのは、響児の手前であって、彼も弓削も徴兵制の事など何も気にしていない筈だ。

 要は、弓削達は、彼らが利用しやすい「怪物でない」人間を、増やす事が重要なのだ。

 響児は、そう思っていた。

「問題は、軍部を沢西が未だに掌握していると言う事だ。このままでは、折角造った新政府を、軍部のクーデターでひっくり返される可能性がある。」

「左派の新政府だって、、。前から不思議に思ってたんだが、どうして弓削は、徴兵制に賛成じゃないんだ?彼は平和主義者じゃない。いずれどこかのコクーンを侵略する事にでもなれば、一番儲かるのは弓削だろう?」

 もう響児は、誰に対してもあまり控えめな態度は見せなかった。

 それはカリュドと融合した事による力の裏付けの自信というより、彼の内部で起こった、もっと根本的な精神的変質だった。

「戦争になれば、奴らがその状況を狙って、大勢遣ってくる。そこは、奴らにとって、又とない狩場になるからな。もちろん狩られるのは、我々、人間だ。現にソメリアがそうだった。」

「、、あれは、ソメリアの内紛じゃなかったのか?」

「初めは、そうだったがな、、。」

 響児は、絶句した。

 ソメリアの内紛に介入した各コクーンは、その戦闘の激しさに、消耗しきっていた。

 そして各コクーンは、ソメリアの惨劇を目撃して、他自治圏コクーン介入からは、どんな利益も引き出せない事を、今ごろになって気付き始めていた。

 それでも他コクーンを侵略しようという、愚かなコクーンはあるが、、。

 そのコクーン間戦争時代の最大の悲劇と言われるソメリアが、『時の矢の種族』の一大レクリェーションセンターだったとは、、。

 笑うに笑えない皮肉だった。


「ソメリアに限った事ではない。どのコクーンも最近、その内部で、作為的に誘発されたとしか思えん、きな臭いにおいがたちこめている。いずれにせよ、我々のような屠殺場に放たれた豚野郎が、仲間の死の上前をはねるには、状況が酷すぎるという事だ。この状態で、喜んでいるのは、『時の矢の種族』だけだ。」

 それはソメリアの戦闘を経験している乱望の徹底した自虐の台詞だった。

「『時の矢の種族』の存在について、知っている人間は、何人いるんだ?この地球上には、コクーンが五百以上はある。」

「『時の矢の種族』の実態に気づきかけている人間は、ここ百年間で、多数に渡るに違いないだろうが、奴らを敵と見なし対抗組織を組み得たのは、我々だけだろうね。なにしろ、余りに信じがたい事実だからな。」

「本当に、彼らに実質的に対抗しうるのは、俺一人なのか、?」

 気の遠くなるような話だった。

「君は象徴だ。いくら君が強くても、初戦に勝利を収める程度の戦力にしかならんだろう。君の様な戦士を量産する事を、我々は考えている。エリザスの死体も、持ち帰ってきて分析にかけている。しかし、今の所、我々の方から『時の矢の種族』に融合するのは、無理なようだ。あちらからは、可能なのにな。数少ないチャンスをものにして、それを成し遂げたハリーハウゼン氏は、先見の明があった訳だ。しかし、心配するな、我々だって馬鹿じゃない。なんとかなるさ。」

 暫く考え込んで、響児は言った。

「エドガー、隊の出動を二日遅らせてくれないか?それと俺のSFX制作機材を買い戻して欲しいんだが。金は、確か奴らの首一つ分の賞与で、賄える筈だな。」

「何を、するつもりだ?」

「軍部の奴らに『時の矢の種族』の存在を嫌が上でも思い知らさせてやるのさ。俺のコピーとやらが出来るまで、ちょっとでも、人間の仲間が多いに越した事はないだろう?」

 乱望の眉が、つり上がった。

「なるほどね、、俺は、只の凶戦士じゃないってわけだ。SFXの帝王は、良き後継者を得たものだな。」






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