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終端抵抗/未来モンスター・カリュド 14: 隔離 強襲前夜

   14: 隔離 強襲前夜


 響児の所属する第三部隊の白虎は首相を、第二部隊の朱雀は沢西将軍を、それぞれ同時に強襲する事になっていた。

 部隊では、ここ数日間、強襲の為の綿密な打ち合わせと、作戦実行時に使用される兵器類の取扱い訓練が続いている。

 そんな中で、響児はただ一人、白虎から孤立していた。

 孤立の原因は、強襲に使用されるフォーメーションにあった。

 首相官邸に侵入した部隊は、首相を抹殺する為に選ばれた二名を護衛する形で、警備網を破っていく事になる。

 二名が使命を完遂する事が出来ず、残存した隊に定刻に帰投しない場合は、新たな二名が生き残りから選ばれ、再び作戦が繰り出される。

 実力のあるジャックが、その第一陣に起用されたのはわかる。

 問題は、残りの一人に、響児が選ばれていたことだ。

 第三部隊は、部隊きってのお荷物である映画屋を護衛していく事になるのだ。

 BENTEN・ジャックなら首相を抹殺する可能性は高い、しかし響児では、、。

 その彼を送り届けるために、部隊の何人かが、死ぬ事になるかもしれない。

 上層部からこのフォーメーションの発表があった時、一番反対したのがジャックだった。

 ダンボもこの時ばかりは、いつもの強圧的な姿勢をとらず、憤るジャックを慰める側に回っていた。

「映画屋以外のオーダーは、全て俺がやった。映画屋を指名したのはケルベロスだ。ケルベロスには、ケルベロスなりの考えがあるのだろう。」

 そういった経緯でダンボは不本意ながらも、響児を部隊から隔離して置かなければならなかった。

 なぜなら響児は、作戦実行までに部隊の者から殺されかねなかったからだ。

 死人は戦地に赴けない、簡単な理屈だ。

 実はダンボ自身も、作戦実行までに響児を隠密裏に抹殺する方法を模索していたのだが、結局、ダンボはケルベロスの意に背く訳には行かなかったのである。


 作戦実行前夜、響児が隔離されている部屋に、二人の人物が訪れた。

 エドガー乱望とサブリナである。

 エドガーは気を使ったつもりか、サブリナに部隊長室で待っていると言い残して部屋を出ていった。

「ご両親には逢えたかい?」

 彼女の為にベッド脇に用意した椅子にも座らないで、只つっ立っているだけの、サブリナは、親にはぐれた子供の様に見えた。

「いいえ、、。でも生きているようだわ。」

 話し合う事が、山の様に在る筈の二人だったが、気まずい沈黙が部屋を支配していた。

 特にサブリナは、三カ月間に渡る『時の矢の種族』の学習の中で、「彼女自身が響児をとんでもない世界に引きずり込んでしまった」のだという負い目を日に日に強く感じていた。

「メモリーカードは無事か?あれでなんとか御両親に逢う段取りをした方がいい。俺は明日の作戦で死ぬかもしれない。俺のマネージャーとしての君の利用価値はなくなる。」

 久しぶりに彼女に会えたんだ。もっと気の効いた台詞は無いのか。

 しかし響児の心は、三カ月間の訓練と、何時仲間に殺されるかも知れないという恐怖で擦り切れかけていた。

 響児は月並みな台詞が、自分の口から流れ出るのをぼんやりと聞いていた。

「私の両親の事は、もう考えないで!貴方の事を考えて!私を責めて頂戴!」

 サブリナはベッドに倒れ込んで激しく嗚咽しはじめた。

 響児はサブリナの金髪をなぜようとして出した手を、引っ込めて言った。

「君が苦しむ必要はない。俺は、、」

『君の関心を引きたくて、この役割を引き受けたんだ。』

 明日がないかも知れないのに、響児は次の言葉が出せなかった。

 いや明日がないから言えなかったのかも知れない。


「そのう、、融合で得られる力は、どうやって出せるか、何か判ったかい?」

 話を変えるつもりで、響児は聞いた。

 サブリナからかんばしい答が聞けるとは思わなかったが、、。

 サブリナは部屋を飛び出していった。

 響児は、サブリナが泣き崩れていたベッドに錦糸を織り込んだ小袋を見つけた。

 民族の純血性を保持していた響児は、その小袋に見覚えがあった。

 幼い頃に見た彼の祖母が身に付けていた物によく似ている。

『あれは何と言ったか、、。そうオマモリだ。そう言えば俺の先祖の古典ムービーにこれとよく似た場面があったけ。出兵前の若者に、娘が思いを託してオマモリを手渡すのだ。普段からでもサブリナの行動様式は、俺の先祖によく似ている。自分を極力押し殺し、他人の為に涙を流す。いや、それはムービーの中だけの事だ。実際の俺の先祖は、環境破壊の先鋒だったじゃないか、、、』

 響児は自分の夢想癖のスィッチを切った。

 響児は三カ月の訓練の中で、夢想のスィッチを切る方法を覚えた。

 これだけが、人間性をはぎ取る軍事訓練の中で得た、響児の唯一の収穫だった。

 響児はベッドに入る前に、睡眠薬を二錠飲み、明日の戦闘に備えた。





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