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終端抵抗/未来モンスター・カリュド 11: 相棒 映画屋の受難

   11: 相棒 映画屋の受難


「なあジャック。この訓練って、おかしくないか?」

「ん、なんでだ?映画屋。」

「普通、軍隊なら、もっとこう統率のとれた組織的な動きみたいなものを要求されると思うんだが。今やってる事は、ヨーィドンで敵の親玉の首をとって来いみたいな感じだ。おまけに賞金付きだ。武器だってバスターにブルブルナイフだけだ。まるでヤクザのカチコミだ。そんなのが、最後の総仕上げになるのか?」

 基礎訓練では、一応、組織戦に必要な相互連絡の手順や、それらの訓練もあったが、それを、みっちり仕込まれたという記憶がない。

 開けても暮れても、やったのは、基本、一人一殺を視野に入れた少人数での戦闘訓練だった。

 弓削の「私設軍隊」とは名ばかりで、その正体は、多少、軍事的な統率感のあるテロ組織のようなものだと解りかけてはいたが、それでも響児は最後の実地訓練がこういう形式になる事に合点がいかなかったのだ。


「俺は、ちっとも違和感を感じないがな、俺らが昔やってた事と、さほど差を感じねぇ。まあ、こんだけ人数がいるんだ。ちょっとは、お前が言うように、人間の動かし方に頭を使えよって気はしなくもないがな。もっとも、俺達が鉄砲玉で、数打ちゃ当たる式なら、これもありだろうさ。」

 二人は、夕暮れの迫った街を、肩を並べて歩いている。

 最終訓練に選ばれたこの街は、セットではなく本物だ。

 弓削は元来、このコクーン内の居住地を、人口が増えすぎた既存コクーンの受け皿として準備を勧めていたようだ。

 勿論、それは慈善事業ではない。難民の受け入れ時でも利益をあげようとする男なのだ。

 利益を生み出すための建築物と施設だから、ハリボテではなく、下水浄水、配電等のインフラはそれなりにちゃんとしている。

 従って、そんな町中を軍服も着用しない二人が歩いていると、軍事行動と言うより、武装した私服警官が街をパトロールしている感じだった。


「そんな事より映画屋、獲物を見逃すなよ。襲って来るのを待つより、こっちから、仕掛ける方がいいのに決まってる。それに隊の連中の事を仲間だと思うなよ。ボヤボヤしてると賞金欲しさに敵の首の横取りでもされかねん。」

「ああ。でも、愛鈴も言ってたが、どうやって一般と見分けを付けるんだ?」

 街ですれ違う人間たちは、極めて普通の様に見える。

 勿論、本物の人間はいない。全て「再生品」だ。

 ただ人間の格好をして、動き回っている。

「カンだよ、カン。コイツは、って思ったら、相手を揺さぶってみる。ブルブル・ナイフがあるだろ。あれを、使うんだ。ブロックバスターは、強力過ぎて脅しには使えねぇ。」

 ジャックがそう言った途端に、数ブロック先でブロックバスターの派手な爆裂音が聞こえた。

 ジャックが、その方向に向かって猛然と走り出した。

 戦闘が始まっているなら、その戦いにわざわざ介入するする必要はない。

 敵は何人もいるのだ。

 まさか、隙を見つけて獲物を横取りするつもりなのか?

 響児はその後を付いて行かざるを得なかった。

 小公園のど真ん中で、パッキャオとルーディが高周波振動ナイフを使ってモンスターと交戦していた。

 パッキャオはボクサー崩れ、ルーディは入隊以来ずっと響児をいびって来た、いけ好かない大男だ。


 ・・・・・・・・・


「チューリップ、、、。」

 響児が素っ頓狂な声を上げた。

 それはモンスターの形を言い表している。

 花弁に当たる部分が人間の頭部、チューリップの軸と言うには些か太すぎるが鱗が生えた体幹に当たる円筒の根本には、先の尖った細長い葉の様に見えなくもない触手のようなモノがたくさん生え出していた。

 太い軸がグネグネと動いているから、その天辺に有る人間の頭がクラクラと揺れている。

 恐らくそれが、先程まで擬態していた人間の姿を解体した姿なのだろう。

 ただし擬態された人間もこのモンスターも偽物だ。

 チューリップの植物人間モンスターという発想に、響児のSFXデザイナー魂が苛立ちを感じたが、流石に現在では兵士としての感覚が、それを上回っていた。

 こいつの主な武器はなんだ?やはりあの触手みたいな葉か?

 植物人間の根本に生えた触手が二人に攻撃を仕掛けていた。

 だが彼らは、何故、ブロックバスターを使わない?

 確かにバスターをきれいに命中させると、口の中のボタンどころか、相手の首を吹き飛ばしてしまう恐れがあるが、牽制には使える筈だ。


「葉っぱ野郎の足下を見ろよ。バスターが2丁転がってる。」

 正確には引き千切られた手首事、2丁だ。

「凄い、手首もがれても戦ってる!」

「ふん。どうせ、バイオアタッチメントだ。そんなもの、賞金首一つありゃ、十人分揃えられるぜ。」

「でも、早く助けよう!」

「、馬鹿か、お前は?お前は、右から回り込め、奴の背後だ。」

「俺は加勢するふりして、奴の注意をこちらに向ける。撃つのは背中だぞ。間違っても首を撃つな。」

 ジャックがそう言い切って、バスターを構えながら、どんどん前へ進んで行く。

 響児はその通りに動くしかなかった。


「パッキャオ、ルーディ!一旦、下がれ!」

 ジャックの大声に後ろを振り返った二人だか、その指示に従うかどうか一瞬迷ったようだ。

 勿論、彼らの脳裏に走ったのは、「横取り」という言葉だった。

 だがジャックが、本気でブロックバスターを撃つ気なのを感じ取ると、一目散に後退しはじめた。

 このままでは、ブロックバスターの爆裂に巻き込まれてしまうからだ。

 彼らは、ジャックという人間のやることを良く知っていたのだ。

 ジャックは腰だめの姿勢になって、バスターをモンスターの根本部分に向けて続けざまに放った。

 それに対する相手からの反撃はない。

 「長距離まで伸びる触手」というその反撃手段は、先程までに繰り広げられていたパッキャオとルーディとの闘いで、既に削がれていたのだ。

 つまりパッキャオ達は、そこまで敵を追い詰めていたのだ。

 BBGの炸裂は散弾銃の性格を帯びている。

 それでもモンスターの身体は、四散しないで、持ちこたえている。


「映画屋!グズグズすんな!」

 ジャックの怒鳴り声が聞こえる。

 響児はその時、モンスターの背後に回り込むことに成功していた。

 成功はしていたが、ジャックの言った「頭部を残せ」という射撃に手こずっていたのだ。

 ブロックバスターガンは精密射撃には向いていない。

 ましてやターゲットは激しく動く円柱だった。


「クソっ!」

 響児は、もうどうとでもなれ!という気持ちで、引き金を引いた。

 目の前のモンスターが爆裂した。

 響児が走ってその場所に駆けつけてみると、そこにジャックが気の抜けた様に立っていた。

「すまん、ジャック。やっぱり、頭までふっ飛ばしたのか?」

「いや、それはねぇ。お前は俺の言う通りにやったよ、、」

「だったら、なぜ?」

「あの二人、頭だけ持って行きやがった!くそっ。」



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