表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コント ~的名講演録~

作者: 武内 修司

司会:公民館にお集まりの市民の皆様、本日は、高部 普三<たかべ ふぞう>先生の講演会に御参集頂き、真に有難う御座います。先生は今や政権の中枢を担う重鎮となられました。この輝かしき郷土の誇りとなられた先生の講演会の、司会を務めさせて頂ける事は、私としても望外の喜びで御座います。さて、先生の御登壇を頂く前に、まずは現政権の総括をして頂きましょう。K大学経済学部教授、的名 長務<てきな おさむ>さんです。それではお呼びしましょう、的名教授です!

*割れんばかりの拍手。壇上に、初老の紳士が登場。

的名教授:拍手を有難う御座います。ご紹介に与りました、私が的名長務であります。さて、まずはこの様な場を与えて下さった主催者の皆様、ご参集頂いております皆様方に感謝の意を述べさせて頂きます。

*眼前の聴衆を見渡し。

的名教授:さて、私が登壇いたしましたのは、当然ながら我が国の経済、その現状及び未来についての考察を述べる為であります。まずは現状に関してでありますが、残念ながら、憂慮すべき状態にある、としか申しようが御座いません。では、その原因は何か、と申しますれば、これは明白であります。現政権の政策ミスであります。

*観覧席のあちこちで、ひそひそ話が始まる。

的名教授:私は現政権を三無一有内閣と、命名致しました。その意味する所は、無恥、無能、無責任、即ち有害、であります。先の増税によって、家計消費は長らくの低迷を見ております。適宜の財政出動を怠ったため、設備投資などは鈍化し、デフレ脱却はおろか再度の転落にすらなりかけております。しかし、現政権はその点に関して、無意味な言葉を糊塗するばかり、反省も謝罪も無いのであります。これぞ正に無恥、であります。貿易協定におきましても、あれほど堅守する、と喧伝しておった一線を容易く譲り渡したのであります。これぞ無能、であります。更には、こういった事々を議論とならぬ詭弁、意味不明な答弁を繰り返す事で徒な審議時間の浪費を行い、後は数の論理に訴える。これぞ正しく無責任、であります。これを有害と言わずして、何を言いましょうか?

*観覧席がざわめき出す。

的名教授:むろん、増税に関しましては、前政権与党主導で決定した物であります。が、現政権はそれを改悪致しました。現野党が増税決定の件を弱味と感じておられるのであれば、こう主張なさるが良い。『増税法案には当初、景気如何で増税時期を再考する旨の条項を盛り込み、増税時期の延期が可能となっていた。しかし現政権は先の増税延期時に、この条項を削除し次には無条件の増税を実施する、と確約された。これはもはや我々が企図した増税法とは乖離したものである』と。意図に沿わぬ法改正に反対する事に、何の躊躇いがありましょうか?

*観覧席は、もはやどよめいている。

的名教授:更に、現政権は、売国の如き政策を推し進めようとしておるのです。移民政策しかり、非正規雇用化推進しかり、であります。これらの意味する所は何でありましょうか?国民を、安く使い捨てられる労働力と見なす、という事であります!

*観覧席から怒号が上がる。慌てて上手から司会が現れる。

司会:的名教授、有難う御座いました。どうぞあちらでお休み下さい。

的名教授:グローバル経済という名の搾取システムが、どれ程の不幸の種を世界中に播いた事でありましょうか!今こそその現状を直視し…こら、何をするか!

*数人の黒服に引き立てられ、下手から的名教授退場。

司会:大変失礼致しました。どうやら不都合…いえ、不適切な方に講演を依頼してしまった様です。

*小さく、銃声らしき音が数回。微かに、悲鳴らしきものが聞こえる。

〜おしまい〜

現実世界と似た所があるかも知れませんが、あくまでコメディですので(笑)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ