ⅡーⅠ
「夏休みですし、メッチャ頑張れると思いますよ」
ヤル気が凄いね。まあ夏海ったら、まったくもう。
「しかし仕事のし過ぎはよくありませんよ? 夏海様と冬樹さんで、最高の夏休みを送って貰わなければ困りますから。そして二人の愛を、仕事に生かして下さい」
横島さ~ん!? 何を言っているのだろうか。
心配してくれてる、そんな感じのことだろうとは思うけどさ。二人の愛って何だろうか。
「はい、学校がお休みで一緒にいられる時間も多くなりますし。その分いつも以上に愛を育み続けることが出来ると思います」
そんなんないから。妹を想う気持ちはあるにしても、そりゃ愛じゃないから。
しかしまあ、最早ツッコむのもめんどくさいな。二人を突っ込むと体が持たないから、俺は仕方なくスルーさせて貰った。
「期待しています。二人の共演作品とか、最高に最高なんですから」
最高に最高? もう何か、頭のいい横島さんはどんどん崩れていく。
知ってるよ、勉強できるのは知ってるんだけど。ハイテンション過ぎたせいかな? ちょっとアホの子みたいになっちゃってるよ……。
まあそれは夏海だって同じか。
夏海だって、勉強は別にできるんだから。とてもアホっぽいけど、バカではないんだから。
「夏海も最高です! 撮影現場にお兄ちゃんがいるだけでも嬉しいのに、共演だなんて神ですよ。ただお兄ちゃんがそこにいると、冷静キャラが演じずらくなりますね」
それはつまり、俺は迷惑なのかな? 夏海の演技に支障を与えてしまっているんだから。
でも夏海、台詞を読むときは全然違うけどね。
声も違う。それは当然として、表情だって全然違うもん。プロだわ……、本気でそう思うもん。
「しっかし夏海様の演技力は正真正銘神ですよ。どんなキャラだって余裕で最高に演じてくれるではありませんか。夏海様自身も最高に可愛らしいですし」
だけど嬉しいよね? ここまでのファンが身近にいるとさ。
「ありがとうございます。夏海、演技力を褒められることはあまりないので……とっても嬉しいです。可愛いだなんて、ほんと嬉しいです」
やっぱりこれは夏海だよね。
普段から可愛いとかは言ってるけど、本気で可愛いと思ってる訳ではないから。だから言われた時には、本当に嬉しそうな顔でお礼を言うんだよね。
これだから可愛いんだ。これだから好かれるんだ。
「お兄ちゃん、何ニヤニヤしているんですか? お兄ちゃんも夏海の可愛さにメロメロなのでしょうか」
不思議そうに夏海は俺の顔を覗いてくる。




