Ⅶ
「紙を貰えませんか? イメージが湧いてきちゃいました」
ピカーンと眼鏡を光らせて、横島さんはそう夏海に頼んだ。
てか横島さんのイメージが……。話し掛けられるまでは、引っ込み思案で真面目そうな子。それで、難しい本とか読んでそうだったんだけど。
「はい、どうぞ。夏海も描きます! いいこと考えちゃいました」
自由帳を取り出して、夏海は二枚引きちぎる。そして鉛筆と消しゴムも二つずつ用意し、自分のところと横島さんのところに置いた。
二人は物凄いスピードで何かを描いて行く。ヤバい、俺が完全に置いて行かれてる。
「「出来ました!」」
少しすると、二人で息ピッタリに叫ぶ。
怖いな。俺のイメージを絵にしてくれたんだろ? 見るの滅茶苦茶怖いなぁ。
「ほら、これどうですか? 冬樹さんって感じがするとは思いませんかね」
まず横島さんの絵から見せて貰った。
最初の感想としては、上手い。特に背景なんて、写真を使ってるんじゃないかと疑う程に上手かった。これはもうプロだな。
でもCDとしては、かなり子供向けのCDに見えてしまう。
俺らしき人物が真ん中にいる。緑がベースの、妖精感がある恥ずかしい服装だ。そして後ろには森。熊などの動物が、かなり可愛らしく描かれている。隣の木には小鳥がとまり、皆で合唱をしている。そんな感じなのかな。
「う~ん、何か違いますね。夏海のも見て下さい」
今度は夏海の絵を見せて貰う。夏海の絵が上手いのは知っている。だから驚くことはなかった。
しかしこっちの方が、ちょっと怖い感じがする。ほぼ同じようだけどね。
俺らしき人物は、木の太い枝に座っていた。隣や俺の肩に、小鳥たちはとまっている。ここまでは可愛らしい。だが、背景が恐ろしさを感じさせた。
森、そう森なんだが……。何だか吸い込まれてしまいそうな、絶対迷ってしまいそうな森だった。なんというか、雰囲気の怖い森なんだよね。ちょっと黒で塗り過ぎちゃったのか、わざとそうゆう風にしてみたのか……。
「ああ、冬樹さんっぽいです。優しいだけじゃないんだよ? ってところが、上手く表現されていますね。さすがは実の妹さんです。あたしでは敵いません」
ってことはやっぱり、わざと少し暗い森を描いたってことなのかな。
「えっへん、これが夏海の実力ですよ。お兄ちゃんも、遠慮なく褒めちゃっていいんですよ? どうですか、凄いでしょう」
自分でこうゆう事言わなければ、普通に褒めてあげようと思うのに。確かに凄いのは認めるしさ。




