Ⅳ
しかし放置し過ぎていると、あまりにも調子に乗り過ぎてしまう。
こっちが何も言わずに黙ってると、だってすぐこれだぜ? 困ったもんだろ。
「俺は誓わないけどね」
耳元で五月蝿いので、ボソッと一応反応しておいてあげた。
だけど何だかんだ言っても夏海のいいところだよね? 反抗期ってのがやって来ないんだから。
ちょっとキモいんだけど、近付かないでくれる? とか言われたら普通に傷付くと思うんだ。まあ、それは父親的な立場かもしれないが。
「指輪の値段は気にしなくていいですよ? 夏海、値段で文句なんて言いませんから」
まだ騒ぐか。折角誓わないって言ってあげたのに。
「百均でも?」
少しは黙って貰いたいけど、夏海に黙られちゃうと寂しいよね。ってなことで、やっぱり一応反応はしておく。
「百均はちょっと……。あっでも、想いが込もっていれば夏海は全然問題ありませんよ」
マジで? それってさ、小さい子供にあげる玩具みたいなもんじゃないのかな。
「じゃあ父さんに買って貰えば? 夏海への愛情を沢山込めてくれるんじゃないかな」
だってこの夏海を育てた男だぜ? 相当なもんだろうよ。
「……え。いや、夏海はお父さんじゃなくてお兄ちゃんがいいんです。お兄ちゃんじゃなきゃ嫌なんです」
ジタバタとしているので、それを無視して俺は部屋を後にする。
「お兄ちゃぁん! 待って下さいよぉ」
ドタバタと追いかけてくる夏海はやっぱり騒がしくて、だから俺も安心できて。
「完全スルーですか? お兄ちゃんじゃなきゃ嫌なんです。お兄ちゃんじゃなきゃ嫌なんです」
何度スルーしても、めげずに何度も言ってくる。
五月蝿いな。反応するまで言い続けるつもり? それは迷惑だな、宿題も始まらないし。
でも……。
「何て返せばいいの?」
分からなかった。夏海が繰り返す言葉に対する、俺が返すべき模範解答が。
「俺もだよ、夏海。とか、そんな感じのことをカッコ良く言って下さい。あっでも、夏海が言っちゃったので今のはダメですよ? お兄ちゃんの本当の気持ち、さあ今こそ夏海に伝えて下さい。素直になっちゃってもいいんですよ? ずっと隠し続けるのも辛いことでしょう」
台詞を読んでるんじゃないか。そう思うような言い方で、淡々と夏海は読み上げてくれた。
普段の声より少し大人びた、あまり聞かないタイプの夏海だった。美少女って言うより美女ってイメージの。
「宿題始めようか、夏海」
そして夏海のアドバイスを貰った俺は、本当の気持ちを夏海に伝えてあげた。これで希望通りかな。




