ⅢーⅩ
今まで真面目に考えてくれてなかったんだね、やっぱり。
「お兄ちゃんって、妖精さんとかのイメージがありますね。それか、周りにお花が見える素敵な天使さんとかですね」
妖精? 天使? しかし夏海のこれは、真面目に考えてくれての答えなんだろうね。それはそれで困ったもんだよ。
「それでもいいんだけど、だったらファンは何になるの?」
アリスちゃんは、常識からかけ離れた我が妹に対して尤もなツッコミをした。
「妖精さんだったら、……例えば森の動物たちとかになりますね。ほら、可愛くないですか? 天使さんでしたら、魂とかですか? うぅん、あんま可愛くありませんね」
森の動物たち。確かに、そっちはそっちで可愛らしい言い方をしてくれたね。
でもさ、あんま可愛くないとかじゃなくて魂って何じゃい。つまりそれは、死んだあと天使に天国に連れてかれた魂ってことだろ? 多分。可笑しいだろうよ。
「だったら、屍とかはどうですか? 可愛いじゃないですか」
訳分かんないことを言っているので、勿論この人はスルーの方針で行かせて貰う。屍って、真面目に考えていてそうなる筈がないからね。
「どうですか? 妖精さんと森の動物たち。可愛くていいと思うんですけど」
確かに可愛らしいなぁとは思わないでもないけど、俺要素がどこにあるのか分からない。
「お兄ちゃんの声って、妖精さんみたいな感じなんですよ」
妖精さんみたいな感じ? ってどんな感じやねん。それってさ、多分女子だったら嬉しいかもしんないけどさ。
「それはワタシも分かります」
「ええ、確かに言いたいことは分かるわ。納得ね」
二人も賛成のようなことを言っているが、もう俺は騙されないから。
「いや、わりと本気でそう思いますよ。妖精感はあると思います」
妖精感? だからさ、妖精感ってどんなのなのさ。
「伝説って感じのではないのだけど、レア素材って感じはするわね。ほんわか優しそうって言うか、でも自分でもそう思うでしょ? 俺様系だとは思っていないでしょうよ、自分のこと」
確かにそのどっちかで言われたら、そうかもとか自分でも思っちゃうけどさ……。
「だから、攻めか受けで言われたら受けなタイプなんですよ。肉食系じゃなくて草食系なタイプなんですよ。積極的じゃなくて、消極的で待っちゃうタイプなんですよ」
唯織さんがそんなふざけたことを語り、それに夏海が大きく大きく頷いていた。もう首が痛そうなくらい、大きく大きく頷いているのであった。
「いいですよねっ!? 妖精さんと森の動物たち」




