ⅢーⅧ
「夏海さん、安心してくれて結構よ。そんなの狙ったりなんかしないわ」
夏海の言い方も何かあれだけど、アリスちゃんの言葉は普通に傷付くなぁ。
「そうですか、ならよかったです。とでも言うと思いましたか? アリスちゃんがそんなことを言ったって、賢い夏海はそう簡単には騙されませんよ。やっぱり卑怯なタイプなんですよね、アリスちゃんは」
素直ですぐ納得するのが夏海のいいところなんだから、アリスちゃんの言葉だって素直に信じろよ。何でそんなどうでもいいことだけ疑うのかな、我が妹ながら。
「本当の本当にいらないわよ、夏海さんじゃないからお兄さんの魅力が分からないわ。ごめんなさいね。夏海さんと唯織さんで勝手に争っていて頂戴」
魅力が分からないって、そんなストレートに傷付くこと言わないでよ。
ファンとか言われたりグッズとか言われたりして、少し舞い上がって調子乗って自惚れてたのは認める。それは俺自身も認めるけど、やっぱ傷付くよな。
「ワタシも? いやいや、なーちゃんが独占してくれていいと思いますよ」
アリスちゃんに名前を挙げられて素直に驚いたのか、冷静に落ち着いた声で唯織さんは否定してきた。
「恥ずかしがって素直になれない気持ちも分かりますが、夏海は容赦してあげませんから。いいんですか? 早く素直にならないと、夏海の大勝利で終わっちゃいますよ。あとで後悔したって仕方がありませんからね」
俺の気持ちは? 多分素直になったところで、最後まで俺は夏海の兄だと思う。
「後悔なんてしませんよ。だってそれに、冬樹さんの気持ちはもう決まっているようですもん。今更ワタシは何もしませんから」
は? 唯織さんの言っている意味がさっぱり分からない。
「夏海もそれは分かっていますけど。でも万が一、お兄ちゃんの気持ちが揺るいだらどうするんです? だっていおは勿論、アリスちゃんだって可愛いですもん」
まず前提から可笑しいようだけど、俺の気持ちは決まってるってどうゆうこと。
「そう言ってくれてるのは嬉しいけど、別にお兄さんを揺るがすつもりなんてないわよ。それに、ライブの練習中の人にそんなこと言われたくないわね。夏海さんの歌を聴きに、大勢の人がお金を払ってここに集まるんだからさ」
アリスちゃんの言うとおり、こんなでも夏海は超大人気声優なんだ。
「いいえ、それは違いますよ。なーちゃんの歌を聴きに来るんじゃなくて、全員ワタシの歌を聴きに来ているんですもん。この超絶美少女双葉唯織のね」




