ⅢーⅤ
「いお、そんなこと言うもんじゃありませんよ。お兄ちゃんの緊張ぷりって、本当に物凄いんですから。むしろ逆に、よくラジオで喋れましたねってレベルです」
あぁ、それはそうかも。でもラジオだったらまだ、目の前に人があまりいないからまだね。だって別に、スタッフの方々とかは知り合いだし。
「そこまでなんですか? えぇ、出演させましょうよ」
面白そうに言う唯織さんは、確かにらしいんだけど……。
「いえ、結構です。まあ、できればライブには行くから」
あんまずるいようなことはしたくないんで、普通にライブチケットを買おうかと思ってる。当たんなかったら、もうそれは残念てなことだね。
「絶対来て下さい! 絶対ですよ。できれば? そんなんじゃダメです。お兄ちゃんがいるって思えるから、夏海だって頑張れるってものです」
そんなこと言われても、当たらなかったら仕方がないんじゃないかな。
「チケットなら夏海があげますから」
俺だって行きたいとは思うけど、他のファンの人だって行きたいに決まってるんだから。だから俺はチケットを貰うだなんて、そんなことは絶対したくない。
「大丈夫だよ、それは却下ね。俺も自分で買う、当たったら行く。でも当たんなかったら、ライブ映像は買うからそれでお願い」
そう俺が言ったから、素直な夏海は一応当然分かってくれる。
「そうですか。お兄ちゃんは真面目なんですね」
捉え方が素直だよね、さすがは我が妹なりけり。
「いいや、実は行きたくないのかもしれませんよ? なーちゃんは素直過ぎるのです」
一方この人は、全然素直さなんて微塵もなさそうだった。
「なんてね。冗談ですよ、冗談。冬樹さんはなーちゃんの兄なだけあって、なーちゃんと同じく素直な方なんですから」
そう笑っていると、二人の休憩時間はもう終了とのことらしい。
「ねえお兄さん、貴方も何かグッズとか作ってみる? 結構人気も出てきたらしいし」
俺が一生懸命二人の応援していると、ずっと忙しそうだったアリスちゃんが俺のところに来てそんなことを言ってきた。
グッズ? それはつまり、俺のグッズということなのだろうか。そんな恥ずかしいもの、販売なんてして貰えるのか……。でもそれを店で見たときなんて、嬉しさと恥ずかしさのどちらが勝るだろうか。
「やってくれるんなら、欲しい……かな」
でも結構人気出てきたらしいって、そんなこと言われてもな……。確かに横島さんは物凄いけど、他にはあまり何も聞かないんだよね。




