ⅡーⅩ
そんな俺の質問は、完全にスルーパスらしい。
「まずショコラティエですから、チョコレート感を残すのかどうかってところですよね。なーちゃんから、意見をどうぞ」
妙に低い声を出して唯織さんは言った。チョコレート感? でもまあショコラティエだしね。
「別にどうでもいいんじゃないでしょうか。夏海はそう思います」
どうでもいいって。結局まだ俺は、どうゆうことなのか説明を受けてないしさ。
「分かりました。では出さないという方針で行きましょう」
何が分かったのかは分からないけれど、唯織さんはどんどん一人でノートに何かを描いて行く。
「冬樹さん、冬樹さんはショコラティエのCDを持って来て下さい。今までの奴、全部お願いします」
そして結局、俺はそんな奴割に回るのであった。別に不満があるとかじゃないよ? 俺は素直に唯織さんに従い続けているのであった。
「今日はもういいでしょう。二人の意見で、何と無く構成は出来ました。明日はどうせ仕事で会いますし、その時に少し話をしましょう」
明日は仕事。そう、明日は夏海と唯織さんは仕事。俺はただの応援係。いや別に、不満があるとかじゃないよ? 応援大好き。
「はい、分かりました。しかしいお、いおは大丈夫なんですか? お暇じゃないんじゃないでしょうか」
心配そうに訊く夏海。でもまあ唯織さんの出演作品は確かに多いし、うちに遊びに来るほど暇そうな感じはしない。
「ん? ワタシ? まあ暇ではありませんね。でも遊べない程、ワタシはお仕事してませんよ。それになーちゃんと一緒に遊べなくなるくらいなら、ワタシはお仕事だってお断りです」
爽やかにそう言って微笑むと、唯織さんは部屋を出て行く。
「お邪魔しました」
そのまま見送られてくれることもせず、唯織さんは家を出て行ってしまった。
「いお、大丈夫でしょうか。お兄ちゃん、夏海だけじゃなくていおの応援もしてあげて下さい。お兄ちゃんに応援されてると、とっても力が漲ってきますから……」
唯織さんが去って行くと夏海は、真剣な眼差しで俺を見つめて真剣にお願いしてきた。
「分かった。俺で良かったら、いくらでも応援する。妹は勿論、友達のことを応援しない奴がいるかよ」
だから俺は笑顔で返す。俺まで真剣な顔してたら、何だか真剣な話してるみたいになっちゃうだろ? それよりも笑顔で楽しい話の方がいいから。
「お兄ちゃん……☆ それじゃ、お兄ちゃんも一緒に頑張りましょうね。夏海やいおが頑張るときには、お兄ちゃんが一生懸命応援してくれてるんです」




