Ⅶ
にしても、これは本当に凄いんじゃないか? このゲームのことは知らなかったし、あまり有名じゃないのかもしれないけど、でもこの歳でメインヒロインは凄いだろ。
「それと、もう一つやってみますか? こっちは特別お勧めです、今まで夏海が一番気に入ってる作品なんですよ」
夏海は気持ちが悪いまでの満面の笑みで、俺に迫って来て言う。
「えっと……一応……見せてくれる……?」
異次元メモリーは、結構面白かったし。普通の冒険物だったし、そっちも別に普通のゲームだろう。そう信じて俺は、夏海に見せるよう頼んだ。
「これです!」
夏海が俺に差し出してきたゲーム、それは『兄と妹 禁断の愛』と言うものだった。
はいダメ、お疲れ様でした~。完全なるアウト、題名だけで失格。絶対無理、信じた俺がバカだった。
「ちょっとお兄ちゃん、何でそんな諦めたような顔してるんですか? 題名はこれですけど、実は全然そんなんじゃありませんから。とっても感動物です、最高の作品ですぅ」
夏海が俺の周りをちょこちょこ跳ねながら言って来る。そんなこと言われてもな……。
「本当だな? もし嘘だった場合は、俺は一週間夏海と口を利かない。嘘か本当かは、俺の判断で決める。いいな?」
「えっと、別に構いませんよ。だって本当に、最高の作品なんですから。お兄ちゃんに心があるならば、認めてくれる筈です」
ほう、そこまで言うか。本当なのだろうか、それなら最初くらいはやってやるが。
~夏海目線~
このゲームには自然な流れでしか、兄妹の愛は入っていない。だから題名で相当引いてしまったお兄ちゃんは、多少覚悟しているだろうし、そんなに違和感を抱かないでしょう。
このまま少しずつ少しずつそれを普通を思わせて、最後には夏海とお兄ちゃんで…。ぐへへへへ。
夏海のこの完璧な計画、いくらお兄ちゃんでも見抜け無い筈!