ⅡーⅥ
そうだよね。そりゃまあ俺の家知らないんだから、方向が同じかどうかなんて分かる筈ないよね。
まあ取り敢えず迷惑ではないので、着いて来てもいいと頷いておく。
「冬樹さんの家ってことは、夏海ちゃ……夏海さんの家でもあるってことですよね? そんな素晴らしいところに、あたしは連れてって貰えるんですね」
直さなくたって、別に夏海ちゃんでもいいと思うけどな。てか、素晴らしいところって……。
さすがの俺でもキモい、ちょっと引く……。だとか、そんなこと思ったりしてないんだからねっ! 熱狂的なファンの方、とっても嬉しいです。
「普通の家だよ? 期待はしない方がいいかも」
そんな感じに温度差を感じながら会話をして、俺は横島さんを連れて自分の家まで帰った。
「お兄ちゃんお帰りっ☆ …………誰ですか」
先に帰ってたらしく夏海が出迎えてくれ、横島さんの姿を見つけた瞬間睨み付けた。
「夏海さんですねっ! 大っファンです! 初めまして、横島奏といいます」
しかし横島さんのキラキラとした瞳に、異様なほどのハイテンションに夏海も押されていた。
「夏海のファンなんですか? そうならそうと早く言って下さいよ」
それにファンだと聞いて、夏海は納得してくれたようだ。しかし早く言えも何も、お前が何も言う前に睨みつけてたんじゃないか。
「ほら、これ見て下さい」
横島さんがバッグから取り出したもの。それは、本のようなものだった。表紙を見るとそこには、『夏海教 聖書♡』と書かれていた。そのまんま、夏海教の聖書なんだろうなきっと。
「夏海教の聖書、それを持ってるんじゃかなりの信者さんですね! ありがとうございます」
相当なレア品なのだろうか。それを見た夏海は、いきなり満っ面の笑みとなり飛んで喜んだ。
「まあまあ、家に入って下さい。お話は中でしましょう」
ニッコニコの笑顔で、横島さんを招き入れる夏海。
「ありがとうござます、中に入れて貰えるんですね? お邪魔します」
夏海に負けないくらいのニッコニコな笑顔で、横島さんも家に上がる。
「その辺に座って下さい、遠慮とかは大丈夫ですので」
リビングに案内して夏海は、俺達二人を座らせてお茶を用意してくれると自分も座る。
「常に夏海教の信者としていられるように、聖書はいつでも持ち歩いています!」
だから学校のバッグから出て来たんだろうね。いつでも持ち歩いてるって、ここまで来ると本当に宗教みたいになってるじゃん。
「ありがとうございます! 夏海……、ここまでの信者に出会ったのは初めてかもしれません。横島奏さん、これからも夏海の家に遊びに来て下さい。多少ズルいかもしれませんが、夏海の新曲とか出演作品とかの情報全部教えちゃいますよ。もう、ありがとうございます」
あまりに熱狂的な横島さんに、夏海もハイテンションで返す。




