ⅡーⅣ
「そっか、横島奏ね……。ゴメンねホント、名前も知らなくって。んじゃ、これからも宜しく。…………何か横島さんのお蔭で、ファンがいるんだって思えて嬉しかった」
最初奏ちゃんとでも呼ぼうかと迷ったけど、そんな雰囲気でもなさそうだったので横島さんと呼んでしまった。でも彼女は、嬉しそうに笑ってくれている。
でも夏海とかみたいにライブなんかやってるんならともかく、ホント普通にアフレコじゃあんま感じないんだよね。俺の声聞いてくれる人が大勢いるだろうのは確かだけど、夏海や唯織さんみたいにメイン級だったりしないから聞き流しもんだと思っちゃうな。
「あたしの他にも、冬樹さんのファンは沢山いると思いますよ? だってメッチャカッコいいし、大人気声優だと思いますよ? 少なくともあたしは」
何かそこまで言われちゃうと、物凄く恥ずかしくなってくるな……。
夏海に言われるのとは何か違うよね。あんま話さない隣のクラスの女子生徒に、その……そんなに褒められるってのは。
「メッチャカッコい……、ちょっと待て。大人気声優? 冬樹が? 何の話だ」
邦朗は気付いていなかったようだから、横島さんの”声優”という言葉に首を傾げたのだろう。最初の時点では失礼にもメッチャカッコいいにツッコミを入れようとしていたようだが、その後の言葉に迷惑にも気付いてしまったらしいな。
「どうゆうことですかっ!? 一緒にいたからファンなのかと思えば、冬樹さんのことを知らないような方だったのですかっ!? 様子が可笑しいとは思いましたが、信じられませんね……」
ビックリしたぁ。まさか、横島さんが叫ぶとは思っていなかった。
「え、冬樹? どうゆうことだよ」
説明を求めるような顔で、邦朗が俺のことを見つめてくる。気持ち悪い。
でもまあ、ここまで来たら説明せざるを得ないかな。別に邦朗くらいになら、ばれたところで問題ないだろうし。
「土日祝日とかくらいだけどさ、俺さ……声優として働かせて貰ってるんだ。たま~ぁに学校休んだりするだろ? それも基本、仕事……かな? うん、そんな感じ」
何と無くまあ、こんな感じの説明しておけば大丈夫かな? ……頼む。
「せ、声優だとっ! それってもしかして、双葉唯織ちゃんに会えちゃったりするのかな」
えっ? 邦朗って、唯織さんのファンなの? でもだとしたら、俺のことを知ってても可笑しくないと思うんだけどな……。唯織さんのファンが皆俺のことを知ってるとは言わないけども、元々邦朗は俺のことを知っているんだし。
だってラジオに出演したし……、ん? あっ、まだ放送されていないのか。
でもミニアルバム『学園生活』は俺まで入って販売されている訳で、つまり唯織さんの大ファンだったら知ら無い筈がないわけで。ってことは、そこまでのファンでもないのかな。




