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ホントに凄いんだよ。何かね、女性に人気の~みたいな感じでさ。
「男子高校生は、嫌いなタイプですか? お兄ちゃん」
俺の言葉を聞いてか、夏海がそんな返しをしてきた。てかそれよりも、夏海の表情ね。作ってる感溢れてて、わざとぶりっ子ぶってるようなのね。
それにいつもは『兄』的なふつうのお兄ちゃんだけど、さっきのお兄ちゃんはちょっと違う気がするんだ。何かのキャラにいない? お兄ちゃんとか呼び出しちゃう幼女。
「そうゆう訳じゃないよ、俺の言い方が悪かったかな」
別に気にしていなそうだけど、一応俺は夏海に返しておく。
「はい、お兄ちゃんの言い方が悪かったですよ? いただきます」
すると少し、予想外の答えが返って来たのだった。まあいいや、俺も食べ始めるかね。
「そっかゴメンね、いただきます」
俺が悪いんだと夏海が言って来るので、取り敢えず謝っておいて俺は食べ始めた。しかし夏海がそんなことを言ってきた理由は、その後一瞬で分かるのであった。
「お兄ちゃん、謝らなくて大丈夫ですよ。夏海、気にしてませんよ? 可哀想に、夏海が良い子良い子してあげましょうか? あうぅ」
席を立ち夏海は、フォークをいったん置き俺のところまで来る。なぜか猫撫で声で気持ち悪く言って来るので、俺は反射的に夏海を手で制止させようとしていた。
「夏海、お座り? 食事中だ」
これで言うことを聞かなければ、ハエ叩きさんの出番となってしまうのだが……。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん。お兄ちゃ~ん♡」
パコーン
壊れた機械みたいにそう言って突然飛び付いてきたので、俺はもう避けられなくてハエ叩きさんを起動させる。
夏海が騒いでいるので、周りの人がこっちをチラチラ見ている。
「大人しく食べなさい。いいね? ほら座って」
頭を押さえながらも、そこでちゃんと自分の席に戻るのが夏海なんだ。あまりしつこくなったりはしない、だからハエ叩きを使うんだ。ハエ叩きで叩くと、夏海はちゃんと通常モードに戻るからね。
「お兄ちゃんの意地悪ぅ、まだ持ってたんですか? 銃刀法違反ですよ」
ぶつぶつ言いながらも、夏海は大人しく食べていてくれる。だから俺も、安心して食べることが出来る。
にしてもこれ、値段に納得してしまいそうなほど美味い。いやホントに、見た目も凄かったんだけど……。味は凄いよ、見た目以上に凄いよ。甘いのが苦手な人にはお勧め出来ないかもだけど、これマジで美味しいから。
「ごちそうさまでした」
もう食べ終わるまで、心の中で延々大絶賛だった。オシャレな雰囲気さえなければ、皿を舐めて綺麗に食べたいくらいだった。ここでそんなことするほど、俺は勇者じゃないけどね。




