Ⅲ
夏海にはちょっと違う意味で伝わってしまったみたいなので、俺は優しくそう説明してあげる。
「まあこれは、全員一致ですね。この店のおススメ商品、冬樹さんどうぞ」
ぷぅっと頬を膨らませつつも、夏海はちゃんとそう言って俺にふってくる。まあゲストなんだから、俺が答えるんだよね。台本にも書いてあるし……。
「絶対おススメ、『異次元メモリー』! 皆もどうぞ」
でもこのラジオは、いつから宣伝番組になったんだって話だよな。宣伝番組ってか、本当に商品の紹介を目的とする番組もあるでしょ? ランキングとか……。
「続いての質問は、普通の主婦さんからです。ありがとうございま~す! 僕はなーちゃんと同い年なんですけど、親が受験のことを言うようになってきました。しかし僕はいい高校にも大学にも特に興味がありません、少なくとも問題集を何個もやるほどには……。親が勉強勉強言って来る時に使える、おススメの逃げ方はありませんか? お願いします」
唯織さんとは違って、夏海は書いてあった文全てをしっかり読んだ。夏海と同い年? へえ、何で主婦なんだろう。
「園田家は別に、受験とか成績とか言われないんですよね」
父さんが基本、やりたいことをやれという考えなもんで。俺も夏海も、案外フリーだったというか……。
「ワタシもですね、テストの点数でとやかく言われたことありません。むしろお母さんとか、演技についての方がいろいろ言って来ますよ? ここ、もっとちゃんと読め! ……とか」
何それ、凄い家だな……。
「それだったら、いおはそう言われてるときどうするんですか? それが使える方法なら決定ですよね」
あぁあ、夏海頭良い。俺達は親が言ってこないから、逃げ方とか何も考えたことない。その時点で、おススメの方法も何もないだろ? でも勉強のことじゃないにしろ、唯織さんは言われるんだもんね。同じかも……。
「お母さんのアドバイスはありがたいと思ってますので、ワタシは逃げ方なんて考えたことありませんよ。だって、折角注意してくれてるんですよ? 聞けばいいじゃないですか」
あ……。それじゃ、誰もこのメッセージを送ってくれた人の気持ちは分からない。結論は、それでいいかな……? おススメ、答えなきゃダメ? 分かんないのに……。
「それじゃおススメの逃げ方って、どうするんですか? さっきと違って、結構難問ですけど」
話が纏まらない、と言うよりも意見が出ない。それでも諦めまいと、俺は二人に再び問い掛けてみた。




