ⅤーⅩ
『可愛いだにゃんてぇ、そんなことありませんよ。取材って、何をしゅるんですか? えへへ』 夏海
可愛らしくそういう夏海なのだが、台詞の途中ではクスクス笑い声が入ってしまっている。
まあそんなとこが可愛いんだよね、きっと。
『それじゃあ、好きな食べ物とかは何ですか?』 唯織
唯織さんもクスクス笑ってはいるのだが、しっかりイケボのままで質問する。
『ショコラティエールでしゅよ? 決まってるじゃありませんか。チョコレートで~す。…………ふん』 夏海
そりゃまあショコラティエになるくらいだから、チョコレート好きに決まってるよな。
低い小さい声で、最後鼻で笑ったけどね。まあそこは多分、ちょっと怖い一面ってのを出したってことだろう。
『あっそうだね、ゴメン。それじゃあ、えっと……。彼氏とかはいるんですか? はい』 唯織
笑いながらも、イケボ唯織さんはそう問い掛ける。
『え~、いましぇんよぉ。あたしに彼氏だなんて、えへへっ』 夏海
あ、何か分かる。何か何と言うか、女子に嫌われるタイプの子ね。
でも怖い一面ってのは、何か違うんじゃないかな……。まあそうやって、俺は思うよ? 俺はね。
『またまた~、いないわけないじゃないのぉ。こんな可愛い子に』 唯織
ちょっと可笑しくない? 唯織さんが何だか、イケボく無くなってるし。あの……何かさ、おばちゃん声って言うのかな? 近所のおばちゃんみたいなさ。
『あっちょっと待ってて下しゃい、電話が掛かって来ちゃいました。こんな時間に掛かって来るなんて……。御免なさいね』 夏海
幼くて滅茶苦茶可愛らしい夏海が、いきなりそうやって言い出した。どうするつもりなんだろう。
『あ? こんな時間に何よ。あんたとはもう終わったっつの、いい加減しつこいわ。しつこい男ってさ、ホントに最悪なんだけど! キモいのよ。ちっ』 夏海
うわっ! 夏海だ。喋り方に怖くてウザい感じあるけど、声は物凄く夏海だ。ザ・夏海って感じだ。
どうしよう、普通に怖いね……確かに。こういう女性、本当にいんのかな? ああ怖い。
『御免なさ~い、もう電話終わりましたよ。それで、何の話してましたっけ? えへへ』 夏海
ちょっと怖い一面? でもこれって本当に、女子に嫌われる女子って感じの性格だよね。
『……怖いよ、怖いよなーちゃん』 唯織
地声だね、普通の会話での声だ。これだったらもう、唯織さんそのものみたいな感じじゃん。
イケメンはどこに行っちゃったの? あのヤバいイケボ、どっから出てるんだろうか。




